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PDCAという自転車

体当たりNPO運営記(30) 2018年3月記
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今日は桜が満開、青葉区では桜台の桜並木や、恩田川沿いの桜の便りが聞かれています。そんな中、理事長北原、事務局長梅原は、花を愛でる余裕もなく、目を瞬かせながら、パソコンと電卓を手に必死の形相です。
森ノオトの事業規模が拡大した2016年の今時分から、事務局の春先はまったく余裕がなくなってしまいました。森ノオトは行政の事業や助成金をそれなりに獲得しているので(経常収益の41%が助成金です)、世間様の年度末、3月末には事業報告書に収支報告書に、来年度予算の見積もりに契約書など、多くの書類が行き交います。
昨年の今頃はまさに修羅場でした。休日も子どもを車に乗せてドライブして寝た隙に田んぼの脇に車を停めてパソコンを開いて報告書作成を進めたり……さすがに今年はそれは避けたい! と、1月から計画を立てて、タスクリストを作成して、少しずつ前に進めていきました。事務局長が領収書の整理と収支決算書のチェックを進めてくれたので、気分的にもだいぶラクになりました。今現在で残りひと山。最後の大きな山ですが、6合目くらいまできたので、来週かけて事務局でその事業の展望も語りつつ、「いい報告書」をつくっていきます。いい報告書ってなんやねん! ってツッコミがきそうですが(笑)、報告書は未来予想図のようなもので、「こうありたい」という団体の姿に立ち戻らせてくれる大切な「情報」なんですよね。

思えば、何事も行き当たりばったりで進んできたわたくし。「やってみたい!」と思ったら小さくでも「やってみる」。そして失敗して、検証して、またチャレンジして……を繰り返してきました。もちろん失敗もありましたが、失敗したからこそ次はそれを生かして成功させることで、仕組みが整い、フローができて、次やる時にはラクになっている、というものです。例えば、映画上映会で事前予約で当日支払いOKにした時には、当日に大雪が降って予約していた人たちが軒並み「インフルエンザになって」キャンセルし大きな赤字が出ました。二度とやりたくないくらいに落ち込みましたが、それから事前決済制にして、同じような時期の映画上映会でも当日キャンセルに泣かされることはなくなりました。ほかにも料理講座、交流イベント、商品の仕入れと販売……いろいろやってみて、その都度勉強して、広報と集客の「必勝パターン」がある程度確立されつつあるように思います。

平成29年度におこなった「発信力UP講座」「デザイン力UP講座」「伝わる写真力講座」は、森ノオトが「中間支援的」な仕事に踏み出すうえで、大きな契機になりました。この事業は神奈川県のボランタリー活動補助金で経費の2分の1の助成を受けて実施しています。森ノオトはローカルメディアではあるものの広報の専門家ではないので、「ほかの民間事業者のPR講座との差異を明確にすべし」と審査会から厳しい注文を受けました。だけど弱みは強みでもある! 私たちは、ほかよりもきっと多くの広報の仕掛けをしてきた当事者でもあるんですね。事業の幅も広く、エコロジーの講座、料理講座、物販、マルシェ、映画上映会、DIYに田んぼに畑に遠足……いろいろやってきたので、ある意味で「ローカル広報」のノウハウはストックできています。その予算と結果を丸ごと見せちゃいます、という講座をわたしが講師になっておこないました。概念よりも「お金」の現実を見せる方が、リアリティをもって受講者にせまります。森ノオトでは、発信=事業そのものと考え、何かをやる時はいかにその成果を見える化するかを考えています。

森ノオトの理事で事務局のブレーン役、ローカルメディア事業の担当でもある島原愛子さんは、以前マーケティングの会社で営業マネージャーをしていた経験を生かし、森ノオトの発信力UP講座で様々な「打ち手」を考えてくれました。受講団体への個別ヒアリングシート、発信力を高めるための10のリスト、ネクストアクションの設定など、受講した方が「講座で学んで勉強になってよかったね」では終わらない、次に何するのかまでを自分たちで考えるのを後押しする、そんな仕組みをつくって、この3月には「半年後アンケート」をおこないました。プレスリリースを出すようになった、広報に予算をつけてプロにデザインを依頼するようになった、チームで団体運営に取り組むようになった、メディアに取り上げてもらった、企画を提案して通ったなど、具体的な成果を上げたという声を聞いて、講座が受講団体の役に立ったことにホッと胸をなでおろしました。講座の満足度は5段階評価で「大変満足/満足」で100%。全団体に発信力の向上が見受けられたとのことでした。

森ノオトは発信=事業そのものと書きましたが、もう一つはあらゆるイベントで、なんらかの形で必ずアンケートをとるようにしています。参加者の声を聞いて、良きも悪きも受け止め、次の事業に生かすようにしています。事業成果をはかる=アンケートをとる、といってもいいほど、徹底しています。これらもすでに「仕組み」の一つとしてルーティン化されています。これらの膨大なデータを生かし切れているとは言えませんが、常にP(Plan)→D(Do)→C(Check)→A(Action)のサイクルを回していくためには欠かせないピースの一つです。

地域団体の発信力を高めていくことには、様々な副次的な効果があると思うのですが、それは「団体のPR力が高まってイベント来場者が増えた!」という短期的なものではなく、本質的にはその団体が立ち上がった経緯でもある社会課題を再認識して、それを必要としている受益者(苦しんでいる当事者)に届けていくためなのです。実は発信力を高めることは、受信力(取材能力)を高めることとコインの裏表です。当事者の声を聞くこと、ニーズを知ること、その場で起こっている現実をすくい上げて解決のための事業を生み出していくこと、それには取材力が欠かせません。宅配便は集荷と配達がワンセットになっているように、発信力と取材力はセットなのです。

最近森ノオトは、全面的にエコをうたわなくなり、また「青葉台」というローカル性も少しずつ薄れてきています。タグラインは「青葉台発・地元のエコ発見メディア」から「未来をはぐくむ人の生活マガジン」に変わり、「青葉台もエコもない!」と愕然とした人もいるのでは……。私も指摘されて「あわわ!」と思いましたが、これも団体の変化と成長の一つと言えるかもしれません。もしかしたらあと5年後くらいにはまた「地元のエコ」に戻っているかもしれません。アンケートの集積から、今の森ノオトらしさをつくってきて、気づいたら「イマココ」なんだろうな、という認識です。

いよいよ4月。春からお子さんが進級・進学したり、ご自身も働きに出たり、新しいことを始めたりと、変化の多い季節ですね。森ノオトの会員限定メルマガもリニューアルします。もしかしたらこの号が最後の方もいるかもしれませんね。これまでご支援をありがとうございました。この先の森ノオトも応援したい! と思ってくださる方は、引き続きのご支援を宜しくお願いします。キタハラも「森のなかま」限定で、NPOの裏側あれこれお話ししちゃいます。



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