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真昼に落ちた流れ星

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石川葉の詩集です。 すべて、公募に落選した詩が収録されています。 「あるいは、君の目にとまらずに、よぎった」
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記事一覧

汲汲

起き抜けの影を掬い、瓶に詰める 波紋するそれは、夜の色を纏っている 小夜色と呼ぶ 汲んだ…

石川 葉
4年前
14

翆印帳スタンプラリー

二尾持つ人魚 のタンブラーを持ち 上下弦の月の交差 御者 馬 馬車 ブリリアントカットの白鳥…

石川 葉
5年前
7

シャム猫の作り方

サモワールの湯気の音 お茶の時間に猫は生まれる ジャムティーから湯気が逃げる ミルクのジャ…

石川 葉
5年前
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スターイーター

君は大きな口をあけている なにをしている 「星が降るのを」 私は、その口を口で塞ぐ 「せめて…

石川 葉
5年前
5

シュレーディンガーの猫ちゃんたち

言祝ぐわたし よくぞ、狭くも広くもない門をくぐり抜け生き延びた、猫よ、君に名前をつけよう …

石川 葉
5年前
8

乙女たち

君の声はマッチを擦るよう 吸い込まれるように燃え上がる 掠れたまま、世界の秘密をひとつ語る…

石川 葉
5年前
6

仔鹿のすみか

仔鹿のすみか カムチャツカ キリンのあしもとで バトンにじゃれついている 幼な子は寝返りをうった 仔鹿のすみか ペトラルカ 時折こぼれるラウレア ラウレア という言葉を拾い ゆっくり食んでいる 幼な子はいくらかうなされている 仔鹿のすみか 聖書の雅歌 愛の目覚めを説かれるけれど その斑点は星のように清か 幼な子の寝顔は山の天気のようにくるくると変わる 仔鹿のすみか 幼な子のあしもと いつも寝添べっていたけれど 首をもたげて幼な子のひたいをのぞき込む そのままお辞儀

星を聴く

 昼の星の声 【カチカチ】  聞こえなくて ワーワーと走る  ブランコの見えない あさって…

石川 葉
5年前
5

ペンネレッサちゃん

刷くような、おおきな流れ星は 彼女のしわざだって (願いごと?  知らないけれど祈ってみた…

石川 葉
5年前
5

星を見る

病棟の個室で 星を見るように見た 身内が皆、呼ばれているのに 父は、あっけらかんと言う 手…

石川 葉
5年前
9

だれがさんびか うたうのか

わたしはね、キャロリングするの、ひとり アドベントの頃、口元をマフラーで隠して 「荒野の果…

石川 葉
5年前
8

リコリスガール

わたしの影。わたしは彼女のことをリコリスガールと呼ぶ。正確にはリコリスキャンディガール。…

石川 葉
5年前
9

わたしの嘘は年を取る

こどもじみたわたしの嘘は、やがて創意工夫を通り越し、いささか横柄になってパーソナルスペー…

石川 葉
5年前
8

ファンファーレ

夜の深みに身を浸す 透明度の高い夜なら 星の瞬きは たちまち、星の預言よ (ほら、よく耳を澄まして) ラナンキュラスから人の生まれる 言葉のひとつひとつ消える 壁のもうひとつ消える 同じ瞬きを (ほら、よく耳を澄まして) カエルの足の八つになる 塔の建立 血と涙の損傷 近くで赤子の泣く ああ、鳴らせよファンファーレ 夜を裂いて 星を降らせよ ***** 収録:真昼に落ちた流れ星