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新しく夢が生まれた長野県

私はIT会社でSEをやっている。

うちの会社の方針として、会社から2時間圏内のお客さんしか注文を取らないようにしている。
自社パッケージのシステムを扱っており、すべて自社でサポートしているので、遠方だと迅速な対応ができない可能性があるからだ。
もちろん遠隔操作なども駆使しているものの、有事の際に、手の届く範囲のお客さんに絞っている。

本社が東京にあっても、営業所や倉庫が別の県にあることもある。
それでも私たちが全国を回ることはせずに、お客さんの社内で対応してもらうことの方が多い。

なので、出張自体、頻度としてはものすごく少ないのだが、昨日は珍しく出張の機会があった。

ということで、本日の一日一恥、長野県は諏訪市に訪問してきたさりーがお送りいたします!

「上諏訪」ってどこ?

降り立った駅の名前は上諏訪駅。
家から八王子へ向かい、そこから特急あずさに乗って1時間ほどで着く。
家から上諏訪駅までの所要時間はおよそ3時間。なかなかの長旅である。

▼1日のタイムスケジュール 

 8:00 移動
11:30 昼食
13:00 打合せ
18:00 移動
21:00 帰宅

上諏訪駅からお客さんの事務所が遠く、バスやタクシーも多くないとのことで、向こうの担当者2名が車で迎えにきてくれた。

1人はサカミヤさん。
50歳ぐらいの男性で、私の父方の叔父にめちゃそっくりだった。会ってすぐに親近感がわいた。

もう1人はオカジマさん。
以前にも東京本社でお会いしたことのある30後半ぐらいの男性。古田新太に似てる。ゲーム好き。

タイムスケジュールを見ても分かる通り、1日の大半を移動で費やしており、「仕事」として直接お客さんと関われる時間は、およそ5時間程度。

私もタダで長野には行けない。お客さんから出張費をいただいて訪問しているのだ。
お金もかかって、時間も限られているのだから、お客さんの立場なら、さっさと仕事の話に移りたいものだと思う。

だが、昨日の担当者は違った。

会うやいなや、

「信州そば行きましょう!」

と明るく言い放った。
「仕事仕事!」と息巻いていた私は、少し気が抜けた。

そうして私を乗せた車は、長野名物の信州そば屋さんに着いた。
サカミヤさんのおすすめは日替わり定食ランチで、焼き魚定食にそばがついてくるらしい。
なかなかボリューミーだったが、私も同じものを頼み、なんとか平らげた。

お客さんとお昼に行くこと自体は、そんなに珍しいことじゃない。
今までもあったことだ。

そばを堪能し、会話を楽しみ、ひと段落がついた。
さていよいよか。

仕事→観光???

気持ちを仕事モードに切り変えようとしたところ、サカミヤさんは腕時計に目をやり、こう言った。

「まだ時間があるので、少し観光しましょう!」

か、観光だと?!

出張にしろそうでないにしろ、限られた時間を自分の会社のために最大限使おうとするのが普通だ。
遊びのために連れて来たわけでもないIT企業の小娘に、観光のために時間を割いてくれるなんて。
こんなことは初めてだった。

「せっかく長野まで来てくれたんですから、いい思い出にしてくれたらなと思って」とサカミヤさんは微笑んでくれた。

すっかり感動してしまった私。

サカミヤさんの提案に、元気よく「はい!お願いします!」と答えた。

まずは諏訪湖へ

そば屋を出て、少し走ったら、諏訪湖周辺にたどり着く。
台風一過の晴天だった昨日は、湖に陽の光が反射して、キラキラと綺麗だった。

実は長野には、記憶の限りでは行ったことがなく、諏訪という地名も、諏訪湖という湖の名前も、初めて聞いた。

8月には諏訪湖祭湖上花火大会があり、9月にも全国新作花火競技大会が行われるそうだ。
4万発上がる花火見物に、約50万人が訪れるという。
花火で有名なこともぜんぜん知らなかった。

「8月には花火大会の団体が、毎日夜に15分ぐらい花火を上げてくれるんです。だから地元の人は、わざわざ花火大会に行かない人も多いんです。毎日見てるもんで」

サカミヤさんはカラカラと笑う。

御柱祭り

湖を横目に、車は山の方へと登っていった。

「もう一つ、諏訪といえば御柱(おんばしら)祭りってのを覚えておくといいですよ。山中の木を切り落として、人力で運び、それぞれの宮に建てるんです」

7年に一度しかない、諏訪地域においても最大の行事とのこと。どの木を運ぶ担当になるかで、みんな一喜一憂するそうだ。

山を登っていくと『木落坂(きおとしざか)』という看板が見えてくる。

山中から曳いてきた木で急斜面の坂を突き進む、御柱祭りの中でも目玉のイベント場所だ。
実際坂の上に立つと、もはや崖のようだった。木落坂のてっぺんには、擬似御柱が設置してある。

こんなところを、自分の何倍もある木と共に駆け下りる?
想像して、若干青ざめた。

「次は2022年にあるので、よければぜひ」

そうして、30分程度のミニ観光は終わりを迎え、お客さんの会社へ向かう。
13時は少し過ぎていた。

さて、本来の目的であったお仕事も無事済ませ、1時間に1本しかない特急列車に慌てて飛び乗り、上諏訪駅を後にする。

好きになっちゃった

今まで、日本全国、自分が行ったことのないところは、勝手に[都道府県単位]でイメージを持っていた。

秋田県はきりたんぽ!
宮崎県はマンゴー!
長野県はおやき!
(食べものばっかやな)

けれども、今回の『ミニ観光』で、県の中でも地域によってまったく特色が変わるのだと気がついた。
長野県の中でも、諏訪には「諏訪の色」があるのだ。

そして、地元の人から直接聞く情報は、本やネットで得る情報とはぜんぜん違っていたことも驚きだ。

Wikipediaで調べる「御柱祭り」と、サカミヤさんから聞く「御柱祭り」は、イメージが全然違う。
Wikipediaの方が端的で正確な情報かもしれないが、その魅力は熱量としてなかなか伝わってこない。
サカミヤさんが、サカミヤさんの記憶とともに話してくれたから、魅力が溢れんばかりに伝わってきたのだ。

私は割とすぐにヒトやモノに影響されやすいタイプで、今回も例外なく、とたんに長野県の諏訪が好きになった。単純である。

今度はプライベートでまた行こう。
素直にそう思えた。
温泉にも入ろう。
おやきも食べよう。

国内旅行なんて、だいたい行き尽くしたかと思っていた。あるいは、どこへ行ってもおんなじようなもんだろうと、デジタルの世界に影響された無機質人間になっていたことにも、はたと気がついた。

もっと全国を渡り歩いて、地域の人と触れ合って、一つの都道府県の中でも、地域のいいところをたくさん見つけたいと思った。
MY地図帳を手に、パズルのように埋めていけたらいいな。

それ、新しい夢かも!!!

奇跡の出張で、自分の新しい夢が生まれた。
この出会いに感謝。

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