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「大学サッカーの王者」 ~総理大臣杯決勝マッチレポート~

明治大学 vs 法政大学

背景

○明治大学
総理大臣杯5年連続の決勝進出
関東1部リーグを史上最多勝ち点で首位独走中

○法政大学
2年前に総理大臣杯優勝
J1クラブを破り天皇杯ベスト16進出(甲府に敗れベスト16敗退)

現時点で関東最強の2クラブによる決戦がヤンマースタジアム長居で行われた。観客は実に3841人。J2,3リーグ並みである。

スタメン

明治大学
FW:佐藤(亮) 佐藤(凌)
MF:森下 安部 瀬古 中村(健) 中村(帆)
DF:蓮川 常本 小野寺
GK:加藤

法政大学
FW:松澤
MF:長谷川 森 大西 末木 田中
DF:高木 蓑田 森岡 関口
GK:中野

法政大学のキックオフでスタート。

上々の立ち上がりと一瞬の隙

 明治は序盤、シンプルに2トップの裏に蹴り込み相手のエラーを狙う。敵陣でカオスを作り出し、相手ボールになったら2トップを主導に全員が連動したハイプレスをかける。

 法政は2CBのため明治のハイボールによる2FWのロングカウンターに対してSBが絞って数的優位を作り対応した。ハイプレスに対しては大きく蹴るしかなくなった。

 これに対して今度はSBがいなくなった大外のスペースを使いながら徐々に敵陣での支配率を高めていった明治。明治の先制点も時間の問題かと思われたが、先にネットを揺らしたのは法政だった。

法政のビッグタワーと脅威のCK

 この試合、実力や前評判を考えても明治の一方的な試合になるかもしれないという予想を裏切ったのは法政の1トップの松澤選手だった。

法政は明治のハイプレスに苦しみ自陣では思うようにボールを動かせなかったが、それでも相手陣地にボールを運べたのは身長190cm近くの松澤選手が自陣からのハイボールにことごとく競り勝ち、低いボールは確実に収めて味方に渡す。明治も序盤はこの選手の対応に苦しんだ。ただ、途中からはCBのポジショニングを修正して対応できていた。

 もう1つ法政の武器となっていたのはCKだ。得点にはならなかったが試合開始直後のCKでもフリーで叩きつけ、あわやゴールというシーンがあった。先制点も前半21分のCKから。中央にいた選手がファーに流れてフリーでヘディング。豪快にネットを揺らした。CKは相当準備してきたように思う。気になるのはどちらも法政の選手がフリーになっていたこと。明治の対応はどうだったんだろうか。

圧巻の右WB。有効だったサイド攻撃

 先制された2分後、明治は追いつく。あっという間だった。中村コンビで右サイドを突破。クロスから最後は佐藤選手が合わせてゴール。綺麗な崩しだった。法政も守備のエラーがあったがそこを見逃さない明治もさすがだった。この右サイド、右WBのFC東京内定の中村選手はこの試合法政にとって脅威になり続ける。右の大外で法政の左SBの視野外となるポジションを取る。ボールを受けると良質なクロスやスピードに乗った突破を見せる。嫌がった相手が食いつくとその背後に走り出し裏を取る。瀬古選手からのパスで何度も惜しいシーンがあった。マッチアップした選手との駆け引きで常に先手をとった。守備時は最終ラインまで戻り右サイドに蓋をする。スタミナは底なしであった。

 明治は前半中盤から主に左サイドでゆっくりボールを動かして相手を寄せた上でスペースのある右サイドへ展開した。狭いスペースでも余裕をもってボールを動かせる明治の技術力、認知力、連携には驚嘆した。敵陣での支配を高めた明治であったが前半は同点のまま終了する。


勝負の後半。明暗を分けたのは。。。

 後半に入っても前半と変わらず明治が主導権を握る。立ち上がりに法政が左の3人の関係からサイドを突破するもラストパスがずれる。松澤選手へのボールも明治が厳しく対応し自由にさせなかった。明治は佐藤選手の単独突破や、右サイドのクロスから瀬古選手がPA内で合わせるなど決定機を作るも決めきれない。それでも敵陣でのプレーが続く明治はこの試合初めてのCKを獲得する。明治には高校時代CBながら選手権神奈川県予選で得点王になった小野寺選手がいる。前半は法政のCKが目立っていたが、明治にとってもCKは十分強みである。高いボールが中央に上がる。そのボールに頭一つ抜けた選手が合わせて勝ち越し点を奪う。合わせたのはやはり小野寺選手。トップチームの試合に絡むようになったのは今シーズンになってから。苦労人の一発はぐっとくるものがあった。

切り札の投入

 明治の10番小柏選手。法政8番紺野選手。2人のドリブラーが後半途中に投入された。ハーフタイムのコメントで法政の長山監督は小柏選手を試合に出てくる前から警戒していた。紺野選手はFC東京内定の大学屈指のドリブラー。小柏選手は前線に残り、相手DFの脅威となった。対する紺野選手は右サイドで質的優位を作り、エリア内に良質なボールを配給する。2人の投入でピッチ上は再び変化が生まれた。終盤は法政側の右サイドの突破やクロスからチャンスを作り出すが得点は生まれず。そのまま試合終了の笛がなった。ピッチに明治大学の歓喜の輪ができた。

最強明治。目指すは3冠。

 明治大学の優勝で幕を閉じた総理大臣杯。まずは夏の日本一となった。ただ明治はここで止まらない。今期の目標は大学3冠である。残りは関東大学サッカー1部リーグと全日本大学サッカー選手権(通称インカレ)だ。決して簡単な道のりではないが、今の明治なら達成できると感じた。

結果

   明治 ー 法政
前半: 1 − 1
後半: 1 − 0
----------------------
合計: 2 − 1

 明治と法政による濃密な90分間。何度見ても新しい発見がある。決勝にふさわしいゲームだった。この大学最強明治がどこまで突き進んでいくのか、これからどんなサッカーを展開していくのか。目が離せない。


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