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今回のDJは「ロン・アシュトン再発見の旅」でした(2019.7.21 DJ雑感)

ありがたいことに、今月もまたDJをやる機会を得ました。主催のひろみさん他みなさん、本当にありがとうございます。2019年7月21日(日)18時~ 渋谷DJ BAR EdgeEndネクロ盤魔殿 Disque Daemonium d'NECRONOMIDOL vol.3」。持ち時間はVol.1が30分、前回vol.2が20分、そして今回vol.3はまた30分に戻りました。テーマは7月17日が71回目の誕生日だったロン・アシュトンをお祝いする意味で、30分間ロン・アシュトン縛りで選曲、廻しました。

音楽知識がディープな魔ヲタたちと話していても、ロン・アシュトンのことは何となくしか知らない、という人が殆どだった。自分も映画「Gimme Danger」で理解を深めるまではそれほど詳しくなかったし。ならば、生誕71周年という名を借りて30分間DJすることで、ロン・アシュトンという稀代のミュージシャンを再発見できないか、と考えてとにかく自分が「イイ」と思える曲探しに時間を費やした。

やはりThe Stooges(ザ・ストゥージズ)の名盤1stアルバム「The Stooges」と2nd「Fun House」この2枚に収録されているプロト・パンクの名曲群は外せない。というかこれらこそがロン・アシュトンの特に作曲能力の高さを物語るアーカイブだ。これだけで30分終わっちゃうんじゃないか、と。いや、それではロンの人生のほんの3年ほどしかカバーできていないし、面白くないじゃない?ってことでThe Stooges以降の仕事からも積極的に曲探しの旅に出ました。

前置きが長くなったので、当日のプレイリストと各曲の薀蓄、それとDJプレイをエア録音した音源をUPしましょう。

【当日の音源】
Soundcloudに私がDJした30分の音源をUP。暇な方は聴きながら、以下をお読みください。
https://soundcloud.com/tgxebiflhjkj/baredgeend-20190721

DJせまし プレイリスト(2019.7.21)
<アーティスト名|曲名|アルバム/Single名> *非公式音源

1. The Stooges|I Wanna Be Your Dog(with Ron's naration)|The Stooges
2. Dark Carnival|Cop’s Eyes|The Last Great Ride
3. The Wylde Ratttz|Take LSD*|(unreleased)
4. Iggy & The Stooges|Head On Curve[Take 2] (Morgan Sound Studios, Ypsilanti, Michigan, March 1973)|Heavy Liquid
5. The Wylde Ratttz|Nut*|(unreleased)
6. The Stooges|Fun House|Fun House
7. Iggy Pop|Little Electric Chair|Skull Ring
8. Ron Asheton |Dead End Street|Wayne Kramer Presents Beyond Cyberpunk
9. The New Order|I Can’t Quit Ya|The New Order
10. Iggy & The Stooges|No Fun|Live in Detroit

【トラック解説うんちく他】
1. The Stooges|I Wanna Be Your Dog(with Ron's naration)|The Stooges

めちゃベタな曲から導入。これを頭に持ってきたかったのは、映画「ギミー・デンジャー」のtrailerで使用されたロンの台詞を入れたかったからでした。ちなみに「I Wanna Be Your Dog」は当のストゥージズもしかり、幾多のバンドがカバーした際も、ほぼすべてオリジナルver.よりBPMかなり速めのアレンジになりますが、自分はこのオリジナルver.のねっとりしたリズム感がたまらなく好き。のちのPUNKSたちが会得できなかったグルーヴ感がここにはある。1969年リリース、ジョン・ケイルproduce。


2. Dark Carnival|Cop’s Eyes|The Last Great Ride

ストゥージズ以外で「ロン・アシュトンといえば?」と問えば、かなりの確率でDestroy All Monstersという声がかえってきそう。が、今回DAMの曲は選から漏れました。代わりに、フロントにDAMと同じくデトロイトが生んだ奇跡の女性パフォーマーNiagara(ナイアガラ)を配した(ドラムはロンの弟スコット・アシュトン) Dark Carnivalのスタジオ録音アルバム(ドン・フレミングproduce)「The Last Great Ride」から。このアルバム、Dark Carnivalがライブで見せるRawでRoughなガレージ感は鳴りを潜め、ダークに深く切り込んでくるミディアムテンポ中心の良質アルバム。超オススメ。サブスクでも聴けます。


3. The Wylde Ratttz|Take LSD*|(unreleased)

1998年公開、トッド・ヘインズ監督の映画「ベルベット・ゴールドマイン」は作品自体の評価はややネガティブ優勢だが、2003年のストゥージズ再始動実現にこの映画が果たした役割は非常に大きい。映画のサントラのために組まれたセッションバンドThe Wylde Rattz(ザ・ワイルド・ラッツ)に元ストゥージズのロン・アシュトンが居り(※DrumsはSonic Youthのスティーヴ・シェリー。スコット・アシュトンはこのバンドには不参加)、ストゥージズのカヴァーのみならず、ロンが書き下ろしたオリジナル曲もセッションレコーディングされた。しかし、それらの曲の殆どは日の目を見ることはなかった。今回のDJで流した2トラックは、いずれもロン作曲もしくはロンがギターを弾いていると思われるトラックで未発表曲だ。BPMがほぼ同じなので、前の曲(Cop's Eyes)からの繋ぎが上手い具合に出来た(笑)。
ちなみにこの曲はThe Pretty Things「LSD」のカヴァー曲で、タイトルをビミョーに変えた(頭にTakeを付けた)理由はよくわからない(笑)。

The Pretty Things「LSD」
https://youtu.be/JRMEpw0rRiQ


4. Iggy & The Stooges|Head On Curve [Take 2] (Morgan Sound Studios, Ypsilanti, Michigan, March 1973)|Heavy Liquid

ストゥージズは2ndアルバム「Fun House」が商業的に失敗、そしてロン以外のメンバー全員が重度のヘロイン中毒で特にイギーの薬物乱用はステージをこなせないほどの重症に。みかねたレーベル(エレクトラ)は契約を解除、1971年7月9日The Stoogesは公式に解散してしまう(最初の解散)。ロン・アシュトンの音楽キャリア最大の事件はこの後に起こる。

かの有名なZiggy Stardustで世界に羽ばたく直前のデヴィッド・ボウイはちょうどこの頃イギー・ポップと出会っている。ボウイはイギーの類稀な才能に着目していて、何とか手を差し伸べたい一心で、自身が契約するマネジメント会社メイン・マンとイギーを契約させる。数か月後、CBS/コロンビアとアルバム2枚分の契約を締結することに成功。そして1972年3月イギーとジェームズ・ウィリアムスンは英国に呼ばれ、2人によりイギーの新バンドが始動すべく、リズム隊を現地英国で探すもまったくの期待ハズレでメンバーが調達できず、バンドが組めない。そこで「じゃあ、ストゥージズのアシュトン兄弟を英国に呼びよせよう」という話になり、ここに後の名盤「Raw Power」を作り出すバンドメンバー4人が揃う。Iggy & The Stoogesである。The Stoogesとは全体の75%(4人中3人)のメンバーが重複しているが、似て非なるものと捉えてほしい。スコット・アシュトンがドラムなのはそのままだが、ロン・アシュトンがギターだとジェームズとかぶるし、そもそもベースが居ない。当時主導権を握っていたジェームズ・ウィリアムスン(ロンより1才下)に「ロン先輩さぁ、ストゥージズの前のバンドではベースも弾いてたよね?」と言われたかどうか知らんけどw、ストゥージズのオリジナル・ギタリストRon Ashetonはここでベーシストへのコンバートを強制された(!)。担当楽器の変更だけならいざ知らず、ロンはアルバム「Raw Power」の曲作りから完全に排除されてしまうのだった(主導権はあくまでジェームズ。イギーもジェームズに従うほど)。後年ロンが述懐したところによると、この時のジェームズへの恨みは相当なもののようで、恐らく墓場までこの恨みは持っていったのではないか、と。

これに関するエピソードが1つ。前述のThe Wylde Ratttzのセッションでストゥージズの曲を幾つかカヴァーしレコーディングした(映画でもユアン・マクレガーvo.のT.V. EYEが使用されている)のだが、アルバム「Raw Power」収録のバラード曲「ギミー・デンジャー」のレコーディングは断固拒否したという。理由は上記の通り「Raw Power」のIggy & The Stoogesで受けた屈辱と伝わってきている。故に今回、私はアルバム「Raw Power」収録曲は1つも採用しなかった。ロンが生きていたら、絶対選ばないだろうから。

さて、そんなロン・アシュトンにとっての黒歴史でもあるベースへのコンバート&作曲から締め出されるという「Raw Power」期のIggy & The Stoogesはアルバムがリリースされた1973年2月からライブツアーをスタートさせつつ、前後して更なるレコーディングを行っており、その時の音源は「デトロイト・リハーサル・テープ」と呼ばれている。もしCBS/コロンビアとの契約を途中解除されていなくて、1974年2月のライブを最後に解散していなければ、これらの曲は「Raw Power」の次のアルバムとしてリリースされていた可能性が高い。その幻の4thアルバム候補曲の中で、ロンのベースを大々的にフィーチャーした曲が1つある。「Head On Curve」だ。ロンの単弦弾きベースが延々と続くイントロが印象的であり、曲に入ってからはピアノも絡むIggy & The Stoogesの未来を垣間見ることができるナンバー。今回のDJ選曲の中で核になった1曲だ。爆音で聴く「Head On Curve」はさすがにエモくてDJブースで一人鳥肌立ててました(苦笑)。前述の「ロン黒歴史」期の曲だから選んじゃダメなんじゃね?という疑問もあるけど、ロンのベースがカッコイイので良しとする(笑)。当時のスタジオレコーディングセッション「Detroit Rehearsal Tapes」を中心にコンパイルした6枚組CDボックス「HEAVY LIQUID」のdisc-2に収録されている1973年3月Morgan Sound Studiosで録音されたヴァージョンが一番かっこいい(音質イマイチだけど)。


5. The Wylde Ratttz|Nut*|(unreleased)

トラック#3 同様、The Wylde Ratttzのセッションから。インスト・ナンバーで、ワウワウペダルを効かせたギターソロはロン・アシュトンと思われる。

6. The Stooges|Fun House|Fun House

名盤の1stと、サーチ&デストロイ、ロウ・パワーなどのハイパーな曲やジャケットが強烈な印象を与える「Raw Power」に挟まれて、日本では正当な評価を得ているとは言いがたい2ndアルバム「Fun House」のタイトル曲。個人的には音楽的な豊潤さはこの2ndアルバムが頭一つ抜きん出ていると思う。Fun House期のストゥージズはフリージャズの要素を取り込んでおり、スティーヴ・マッケイのSAXが印象的なジャム・セッション・スタイル。2ndアルバムのレコーディングは短期集中、非常に濃密なセッションが繰り広げられ、曲によってはTAKE数十というものも。そんな中から選りすぐりのトラックだけを収録した2ndアルバム、クオリティは高いし録音状態も良い。今回BAR店内のテーブルにiPhoneを無造作に置いてPCM録音しただけなのだが、オープニングのI Wanna Be Your DogとこのFun Houseの「音の良さ」に驚いた。どちらもリマスター音源を使用したアナログ盤だ。


7. Iggy Pop|Little Electric Chair|Skull Ring

Fun Houseからの曲つなぎが下手過ぎて(苦笑)唐突に始まるのが2003年イギー・ポップ名義でリリースされたアルバム「SKULL RING」のオープニングナンバー「Little Electric Chair」。2003年は4月のコーチェラ・フェスでイギー/ロン&スコット・アシュトン兄弟/スティーヴ・マッケイ(Sax)、そしてロンの希望によりベーシストにマイク・ワットを迎えた布陣で1974年2月以来ストゥージズは復活を遂げる。その驚きの再結成劇の直前、同年1~2月にレコーディングを行ったのがアルバム「SKULL RING」。再結成Iggy & The Stooges名義で初リリースとなる2005年「The Weirdness」、2013年「Ready To Die」よりドライヴ感があり、オルタナ色の強い好トラックが並ぶ。


8. Ron Asheton |Dead End Street|Wayne Kramer Presents Beyond Cyberpunk

作詞作曲ロン・アシュトン、リードヴォーカルもギターもロン・アシュトン、という珍しい完全ソロ完結トラック(唯一?)。2001年にリリースされたウェイン・クレイマー監修「BEYOND CYBERPUNK」というコンピ盤にて初お目見えした。こういう感じでソロ名義のアルバムも作って欲しかったものだ。現在この1トラックだけシングル扱いでサブスクでも聴ける。


9. The New Order|I Can’t Quit Ya|The New Order

Joy Divisionの後継バンドNew Orderとはまったく別モノ、ロン・アシュトンがリードギターを務める1970年代のバンド。作品は唯一アルバムが残されているのみだが、デモテープ並みに音質が悪くガッカリさせられる(苦笑)。B面1トラック目のこの曲はデイヴ・ギルバートがVocalを務めたアルバム中では異色のしっとり曲調。何度も聴いているとクセになる。


10. Iggy & The Stooges|No Fun|Live in Detroit

最後はお祭り気分で名曲「No Fun」。選んだヴァージョンはストゥージズが再結成した2003年にデトロイトで行われたライブDVDから。ストゥージズの風物詩となった「観客何十人、(下手すると)百人超をステージに上げて」のパフォーマンスで、映像で観た方が面白さ10倍。この頃はまだ再結成間もなく新鮮な気持ちで純粋に演奏を楽しんでいたようにみえる。
https://www.youtube.com/watch?v=TOi-loBeDdM

おまけ

今回ロン・アシュトン オマージュでレイバンのティアドロップをかけてみました。薄暗いDJブースには不向きだった(苦笑)


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