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【ネタばれナシ】映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』を観てきた

週末に公開された映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』を観た。待ち望んだ新作だからと、神奈川県川崎市の109シネマズ「IMAX」シアターで3D版を鑑賞した。

ストーリーの起点となる『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』の公開から16年。シリーズとしての1作目『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』の公開からは、なんと38年の時を経ての新作だ。『エピソード4』が公開された1977年の夏は、日本では往年の時代劇スター・嵐寛寿郎(アラカン)が出演した『男はつらいよ 寅次郎と殿様』が公開されているくらいだから、隔世の感がある。

このシリーズは、もともとTVドラマだった。企画時点のタイトルは『愚兄賢妹』だという。しかし、全26話のうち現存するのは、第1話と最終回の分だけだ。当時はビデオテープが高価だったため、何度も上書きして使ったためだといわれている。このドラマ版2話はDVD化されていて今でも観ることができるが、ファンとしてはぜひ他のエピソードの分も含めて、脚本も出版してもらいたい。

そのドラマ版最終回は、奄美大島で蛇のハブを獲ってひと儲けしようと考えた主人公の寅次郎が、逆にハブに噛まれて死ぬというものだった。最終回といえど、あまりの展開に“しんでしまうとはなにごとだ!”とばかりに苦情の電話が相次いだめ、いわば「リブート」として映画化することになったようだ。だから第1作は、寅次郎が「20数年ぶり」に故郷に帰ってきたところから始まる。

主人公・寅次郎を取り巻く環境は、少々ややこしい。自身は、父親と浮気相手の芸者とのあいだに生まれた子どもである。いわゆる不良で、10代の頃に家出する。父親と母親(=正妻)のあいだには「さくら」という娘がいて、寅次郎から見ると異母妹になる。

映画版第1作の開始時点では、寅次郎の両親はすでに亡くなっていて、妹のさくらは葛飾区柴又にある草だんご屋の叔父夫婦の家で暮らしている。叔父は父親の弟で、さくらは「おいちゃん」と呼ぶ。そこに、ふらりと寅次郎が帰ってくるわけだ。なお、冒頭のナレーションでは、亡くなった兄(おそらく正妻との子)もいると語られるが、第2作以降、この兄について触れられることはない。

このように複雑な関係性ではあるが、脚本がよくできていて、劇中で何度も自然なかたちで説明されるので、事前に把握しておかなければならないほどではない。

寅次郎の職業がテキ屋であるということも、若い人には伝わりづらいかも知れない。テキ屋とは、お祭りの時に屋台や出店を出す露天商のことだが、少なくとも第1作が公開された40数年前は、ヤクザと重なる部分があったようで、シリーズの初期作品には、寅次郎が地元を仕切る親分に「この土地で商売をさせてもらいます」と挨拶しにいく場面がある。

そんな寅次郎の生きざまと対比を成すのが、「おいちゃん」の家の裏に隣接する印刷工場の人々だ。第1作の時代はまだ活版印刷で、工員が活字をひとつひとつ拾っていかなければならない。重労働で、工員たちは工場の2階に寝泊りしている。「タコ社長」とあだ名される社長でさえ、いつも金策に悩まされているありさまだ。

草だんご屋を営む商売人と印刷工場の労働者たちは、庶民の代表である。ここに、遊び人の寅次郎が帰ってくることで、騒動が巻き起こるわけだ。それは、決して『アリとキリギリス』のように単純な話ではない。真面目に生きてさえいれば幸せなのか、周りからは気楽そうに見える遊び人はどうなのか、そういう根源的な問いを投げかけてくる。登場人物の誰もが正しいようであり、間違っているようにも見える。

かのチャップリンが言ったように、「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇」なのだ。特に第1作は、監督が「のちにシリーズ化するとわかっていたら、1作目にここまで詰め込まなかった」と後悔したと言われるほど、ストーリーがスピーディかつ濃厚だ。『男はつらいよ』第1作、ぜひ観てもらいたい作品だ。

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