マッチング中だった私へ

2015年8月27日の手帳を読み返した。病院見学のために、いま務めている病院に来ていた。見学が終わった後の週末に就職試験を受けたのだった。

医師の就職活動は特殊で、厚生労働省が管轄する「マッチング」というシステムで決まる。医師免許を取得した後、いわゆる新卒は国が指定した施設で2年間務め、初期研修を修了する必要がある。

マッチングでは、全国の学生と病院がお互いを選び、行きたい(欲しい)順をランク付けして厚生労働省に提出する。1ヶ月後に「この人はこの病院へ行きます」と、単一の病院が指定される。新卒は国家試験に受かって医学部を卒業したら、必ずその国に指定された病院に入職しないといけない。これを他業種に言うとちょっとびっくりされる。

もう4年も前のことだけど、自分のマッチングのことは結構はっきりと思い出せる。

どれぐらい暑かったかとか、見学の後に何を食べたかとか、そういう記憶は一切ないけれど、研修部長の面談で相談したこととか、研修医室にずらっと並ぶ机を見て「私の机ここだな」と思ったことは覚えている(実際入職したらズバリその机をあてられていて割とびびった)。

当時、大学では家庭医について教える授業はなくて、外に出ないと志を同じくする人たちに出会えなかった。この病院に初めて来たときに、何人もの家庭医志望の学生に会うことができて、家庭医療科の見学では私がぼんやりと思い描く5年後、10年後を体現している先生達がいて、どこからか「私ここで家庭医になるんだ」と直感のような確信のような感覚を覚えたのだった。

ほかにも同じような施設は当時から全国にあったけれど、でも様々な出来事が重なって北へ北へとのぼっていったら、ここに行き着いたという感じだった。残りの実習も、国家試験の勉強も、もう「はやくあそこで働きたい」という思いで駆け抜けた。

学生最後の半年間、もうすぐ医師になれることが嬉しかったけど、新専門医制度が始まる〜始まらない〜と言われている中でのぼんやりとした不安もあって、でも「ここにいれば大丈夫」とも思えたのだった。

不安の方が強かったんだろうか。もう思い出せない。そういうことを書き残さないタチだったようだ。

いま、当時と似たような感じで、ある意味直感に導かれて決めた進路が迫ってきていて、やっぱり楽しみだけど不安な気持ちになっている。でも、4年前の私に、「ともかく、大体思ったようになっているし、とにかく毎日楽しいから、大丈夫だよ」と言えるから、なんだかんだ大丈夫だと思う。

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