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「僻地研修」を義務と捉えていた私へ

道南は、紅葉のピークを迎えている。
豊平峡というエリアは札幌からも日帰りで行けるのもあって特に人気で、駐車場に入るまでに3時間も並んだ、なんて話を聞く。
でも、今年の私はそこからもう少し足を伸ばした先の、より贅沢な景色を、毎日見て過ごしている。

道南の山間部へ僻地研修に来て約1ヶ月が経つ。
とにかく山が綺麗なのだ、日毎、時間毎に顔つきが変わるので、出勤の度に似たような写真を連日何枚も撮ってしまう。

総合診療専門研修では、最低半年間の僻地研修を努力目標としている。僻地の定義にも色々あるけれど、大体は島とか山とかになる。
医師になったときから、僻地研修のことは不安で仕方がなかった。離島を経てきた上級医たちの武勇伝がいちいちすごいのだ(船が出れない天気の日に急変があったとか、自分の指を神経までざっくり切ってしまったが医者が自分しかいないので自分で縫った、とか、、、)。
年次を経れば経るほどに、今の自分の実力で僻地に行って戦力になるんだろうかと不安で仕方がなかった。あとは、単純に田舎で暮らしたことがなかったので自信がなかった。でも努力目標、というか義務だし。

そんなことをうっすらと考えながら医師3年目の終わりに差し掛かったある日、上司が専攻医を集めて「急遽、誰か2人、来年度半年ずつ僻地に行ってくれないか」と諸々の事情を加味した上で持ちかけてきた。
もう本当に直感でしかなかったのだけど、後半行きます、と申し出ていた。なんだかその話に乗った方がいいと根拠もなく思ったのだった。

いざ来てみれば、院長(どうでもいいけど医師2人なので私は副院長なのだろうか)に何でも聞けるし、車で30分行けば入院を依頼できる病院もあるし、町民は優しい。景色良い。ご飯おいしい。家賃出る。
僻地研修、良い。札幌の本拠地に自分の家族と、患者さんを残していなければ1年いたい。まさに案ずるより産むがやすしってやつ。

とにかく、ここに来て1ヶ月経ったときの気持ちを忘れないように今こうして書いている。
紅葉のシーズンが終わったらあっという間に冬が来て雪が積もるんだろう。でもなんとなく大丈夫な気がしている。

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