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一月一酒 第22回

初出:月刊ハンガリージャーナル 2006年4月号

Tokaji Aszú Essencia, 1995
醸造所:Royal Tokaji Borászati Kft.
産地名:Tokaji borvidék

 体制変換後のハンガリー最初の私有(民営)ワイン醸造会社であるロイヤル社は、世界的なトカイ・ワインの評価を復活させることを目標に、1989年に設立されました。同社の設立メンバーの中には、ワイン評論家として著名なイギリス人、ヒュー・ジョンソンも含まれます。
同社の貴腐ワインの特徴として真っ先に目に浮かぶのは、その美しい純粋な黄金色と、様々な乾燥果実の香りの融合、そして際立って高く新鮮な酸味によって忘れ得ない豊かな味わいです。
 「当り年」のみ醸造されるアスー・エッセンシアは、ハンガリー人の手による最高の貴腐ワインでしょう。ロイヤル社の使用ボトルは硝子職人による手造りで、18世紀初頭のあるトカイ・ワインのコピーです。市場に衝撃をあたえた同社の最初の作品である1993年のアスーは、ワイン愛好家を魅了しました。
 数々の国際品評会における成功と、国内の専門家、愛好家の鼓舞と大いなる期待を受け、1995年のワインが醸造されました。
大いなる将来が期待されるこのアスー・エッセンシア1995ですが、熟成と複雑に重なり合った各要素により、すでに飲み頃です。豪華さを表すように、透き通った美しい色合いと豊かな香りが、長期熟成の最初の段階でこのワインを素晴らしいものにしています。
 その若さにも関わらず、コーヒーや陶土の思い出させる要素が充満したような快活さは、ラノリン香と黄桃ジャムのように感じられ、リンゴやマルメロの酸味に満たされた凝縮した甘みは、焼きリンゴの美味しさを携えて長く残り口腔を虜にします。その後になって、留めることのできない干した黄桃、花、ミルクキャラメル、上等なバターなどの味わいが、初めて舌の上に姿を表します。糖分はリッターあたり212グラム。その一口一口が、私たちに味覚の愉悦を与えてくれます。
 この特別なワインは、10-12℃の温度で最も心地よく味わえます。少なくともこのワインと同程度に甘いデザートのお供にデザートワインとしても美味しくいただけますが、フォアグラや各種パテの前菜とともに食前酒としてより良く楽しめるでしょう。

訳注:体制変換後に改正されたワイン規定法により、トカイ貴腐ワインの分類は糖分含有量によってなされることになり、トカイ・アスー・エッセンシアは6プットよりも上、つまりより糖分の高い最高の貴腐ワインとして新たに設定された名前(トカイ・エッセンシアは貴腐ブドウの果汁だけを自然発酵させた特殊なもので、糖分は極度に高く、アルコール度数は低い)。

原文:Kindl Róbert
画像・訳文:高久圭二郎

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