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NovelJam参加してきた記の8

1日目の昼食まい泉の洋食弁当を机に置き、NovelJamのタイムテーブルを改めて読んでみた。作業開始は13時30分。まだ1時間以上ある。先に一服してこようと立ち上がると、波野發作さんと目があった。彼も喫煙者だ。「いきますか」的な目線を交わす。波野さんが編集を担当するHチームのテーブル上には今朝見かけた帽子があった。架空鉄道『北急電鉄』制帽だ。SF作家・米田淳一さんと同じチームらしい。そばにいた青年がギターを置いて立ち上がり、無言で着いてくる。ギター小説を書いている作家の澤俊之さんだ。お会いしたことはあったものの、喫煙者だとは知らなかった。

「うちのチームは賞狙いますよ」意欲満々な波野さんに気になっていたことを聞く。「Mさんって見かけました?何か話があるとか運営のひとにいわれたのだけど」「三木さんの編集講座のとき後ろの席にいたじゃないですか」「え?」「いましたよ」「気づかなかった」「面識あるんですか?」「そういえばない」「あー」「知ってるような気になってたけども」「あー」「Mさんってどんな人でしたっけ?」「若い感じの人ですよ」「若い感じ」「ええ、若い感じの人です」「感じが若いんだ」会場に戻ったら誰かに聞くことにしよう。喫煙所の情報交換で、今回のNovelJamでは最優秀賞と優秀賞、審査員4名からの計6つの賞が授与されることを知る。「狙うなら審査員賞でしょう」「どうして?」「審査員が好きそうなジャンルを狙い撃ちできるじゃないですか」「なるほどね」澤さんは終始笑顔で、しかし黙って煙を吹かしていた。彼はこの30時間後に優秀賞を獲得する。

再びビルの7階にいき、受付で「Mさんの件はどうなりました?」と聞いてみる。「その話はなくなりました」「あら。そうですか」ちょうど鷹野さんがやってきた。「聞いたところです。代わりの作家さんは来ないんですね」「ええ」「ではEチームは作家1人編集1人ということで」「いえ、それが」「え?」「まだわからないのですが」「状況次第で何かあるかもしれない?」「ええ」「わかりました。決まったら教えてください」粛々と進んでいるように見えて、運営サイドは結構バタバタしているようだ。テーブルに戻り、Eチームたった1人の作家・坂東太郎さんに状況を伝える。「やってみないとどうなるかわかんない企画ですもんね」という話になる。そりゃそうだ。小説のハッカソンなんて無茶な企画が第一回からスムーズに運営できるわけない。底意地の悪いような、痛快なような変な笑いがこみ上げてくる。ざまあみろ、でもがんばろうね、みたいな。弁当を食べ始めると、ごく自然に今日これから書く小説についての話になった。坂東さんは「私小説を書いてみたい」という。

NovelJam(公式サイト) http://noveljam.strikingly.com/

(つづく カバーイラストふじさいっさ)

注:この連載記事は、古田靖の記憶に基いて書かれています。現実とは異なる部分があるかもしれませんが、古田の脳内現実ということでご容赦ください。

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