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「ダンジョン飯」の、「がんばる」を無闇に礼賛しないところが好き

 ゲームライターマガジンだけど、たまには「ゲーム漫画」の話もしていいですよね?(例によって最後まで無料です)

 今読んでいる漫画の中で、どれが好きかと聞かれたら真っ先にダンジョン飯を推したい。モンスターの細かい描写がリアルとか、マルシルがかわいいとか魅力はいっぱいあるんだけど、何よりこの漫画の「ちゃんと食ってちゃんと寝てるやつが強い」って考え方が大好きなんですよ。

▲6巻79ページ


 この漫画、のっけから妹が炎竜に食われてしまい、消化される前に助けないと蘇生できなくなってしまう――っていうめちゃくちゃハードな時間制限が設けられてるんですよね。そのわりにライオス(主人公)一行、急ぐどころか結構ちゃんとメシとか食っていて、最初のころは「妹食われてるのに大丈夫か!?」とちょっと心配になったりもした。

▲1巻17ページ


 でも、話が進むにつれて、これはちょっと急いだ程度でどうこうなるプロジェクトじゃねえな、ってことが見えてくる。そうなると結局、ちゃんと寝て、ちゃんと食事をとりながら一歩一歩進んでいくのが実は一番の近道だったんだな、というのが分かってくるんですよね。これは現実でも実際そうで、小さいプロジェクトだと瞬間的な「がんばる」でどうにかなるけど、長続きさせようと思ったら、まず「がんばらなくていい」体制を作ることが大切だったりする。でも放っておくとすぐみんな「がんばりたがる」んだよな~、不思議だな~。

 冒頭のコマは、元仲間のシュローとダンジョン内で再会し、ふとしたことから殴り合いになった時のライオスのセリフ。攻略を急ぐあまり、食事も睡眠も満足にとらず闇雲にダンジョン深部を目指していたシュローは、しっかり食事も睡眠もとりながらダンジョンを進んでいたライオスに殴り負けてしまう。「1日3食しっかり食べて、睡眠をとってる俺たちのほうがずっと本気だった!!」――パーティのリーダーらしい、いいセリフだ。

▲6巻11ページ


 最新刊(7巻)ではさらに話が進んで、いよいよ「ダンジョン攻略」という最終目標が見えてきた。パーティの戦力で言うとライオスたちは全然大したことないんだけど、なんだかんだでちゃんと堅実に(いやけっこう無茶もしてるけど)歩を進めてきたことで、結果的に最も攻略に近いポジションにいる、というのも面白い。「ダンジョン飯」ってホワイト企業礼賛漫画なんですよ。

▲7巻73ページ


 あとダンジョン飯、組織論として見ても興味深くて、(このエントリだけ見るとライオスめっちゃいいリーダーに見えるけど)あのパーティ、実際はライオスの暴走を他のメンバーが絶妙にサポートしあうことでうまく回ってるんですよね。現実の組織に置き換えたらこんな感じだと思う。

ライオス:暴走気味だけど要所でしっかり針路を示せるリーダー役
センシ:実務担当・裏のリーダー。実際に組織を回してるのはコイツ
チルチャック:メンバー間の関係調整役、ムードメーカー
マルシル:リーダーにもズバズバ意見できるブレーキ役

――どうですかね、自分の周りにもこういう組織ありませんか。っていうかうちの編集部もまあ90%こんな感じでできてるな……。

 そんなわけで「ダンジョン飯」が面白いという話でした。まだ7冊しか出てないし、これからぐいぐい盛り上がっていきそうなので今からでも全然追いつけますよ。あと1話試し読みもあるのでぜひどうぞ。




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