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ボンクラ青年を怪物に変えるネットのいびつさ はちま起稿インタビューへの補足

 最初はねとらぼに載せようと思ったんですが、「よけい火に油を注ぎそうだからやめれ」と止められたのでこっちで。

 まだの人は、こちらのインタビュー記事を先にどうぞ。

「辛くない時期はなかった」 月間1億2000万PVで得たもの/失ったもの 清水鉄平「はちま起稿」に狂わされた人生


 ――ということで、以下、ねとらぼ用に書いてたやつをちょっとだけ再編集したものです。


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 はちま起稿インタビュー、ようやく掲載できました。正直おっそろしくバランスに苦慮した記事で、編集中もこれのせいで体調を崩しかけたほどでした。記事も何度かゼロから書き直していて、2月18日のインタビューなのに公開まで2カ月以上かかってしまったのもそのためです。

 記事内でも書きましたが、はちま起稿やまとめサイトが憎くて憎くてしょうがない人にはスッキリしないインタビューだったと思います。Twitterのコメントでも、「はちまの言い訳に荷担しただけ」やら「ねとらぼ日和った」やら散々な言われようです。これについてちょっとだけ説明しておきます。


 多分、大多数の人たちがあの記事に望んでいたのは、インタビューという公の場で、はちまの悪行をすべて洗い出し、それについて徹底的に説明・謝罪させることだったのでしょう。ただ、僕が書きたかったのはそれとはちょっと違っていました。はちまは所詮、数あるまとめサイトの1つにすぎないし、はちまを潰したところでまとめサイトがなくなるわけでもない。またネットで騒がれているような陰謀論を本人にぶつけるのも無意味です(動かぬ証拠でもあれば別ですが)。

 それより僕が書きたかったのは、「なぜはちまのようなメディアが生まれるのか」というネットの構造についてでした。はちま起稿は初期から見ていますが、最初は普通の個人ブログだったのが、やがて2ちゃんねるまとめサイトになり、ものすごい勢いで「まとめサイト色」にどす黒く染まっていった。当初ははちま起稿を「自分の考えを発信する基地」と表現していたのに、今ではコンテンツの大半は他所からの転載で成り立っています。もちろんその道を選んだのは清水氏本人ですが、僕にはこれが、はちまだけの問題とは思えませんでした。


 その思いが強まったのは、やはり清水氏本人に直接会ってからです。最初はどんな切れ者が出てくるのかと身構えていたのですが、実際の清水氏は、こちらが拍子抜けするほど、良くも悪くも普通の青年でした。

 インタビューを読んで、清水氏の発言に「何をいけしゃあしゃあと!」と憤った人も多いと思います(僕も思った、が、あえてそのまま載せた)。本当に切れ者ならもっと発言には気を遣うし、そもそもあんな何一つ本人にとってメリットのないインタビュー、最初から受けたりはしないでしょう。サイトの運営についても、その都度「読者に受ける」方へかじを切ってきただけで、本人に明確なビジョンがあったわけではない。だから何を言っても後付けの言い訳に聞こえてしまう。

 まあ、とにかく会ってみたら「普通のボンクラ青年」だったわけです。おまけに口ベタで、少し突っ込んだ質問をするとそのまま口ごもっちゃう。もっと弁の立つ人なら真剣にサイトのあり方などについて語ってもらえたと思いますが、清水氏はそういうタイプではなかった。まとめサイトなんてやってるヤツは全員生きている価値のないクズ人間に違いない――。そうであったならどんなに楽かと思いますが、残念なことに世の中そう単純にはできていない。


 問題は、なぜそんな「普通のボンクラ青年」が、知らず知らずのうちに「怪物」に変わってしまったのか。なぜあれだけ叩かれ、批判されても、いけしゃあしゃあとサイト更新を続けていられるのか(しかも一度引退したのを撤回してまで)。それが金のためでないのなら、なにが清水氏を突き動かしているのか。結局、そこを叩かないかぎり、はちまを潰しても第2、第3のはちまが出てくるだけです。

 もちろん、日々PVを横取りされている身として、僕自身はちまに言いたいことは山ほどあります。が、今回の記事ではそこをぐっとこらえました。インタビューという場を借りてはちまを叩いても、それはただの私刑です。それで一時的なカタルシスは得られても、まとめサイトの問題が解決するわけではない。

 まとめサイトを求める読者がいて、まとめサイトが生まれる構造がある。だからはちまのようなサイトがもてはやされ、清水氏のような「いびつな怪物」が生まれてしまう。

 僕が記事で書きたかったのはそこで、ただのはちま叩きで終わらせるのではなく、もっと大きな、まとめサイトという構造、ひいてはインターネットの構造そのものへの問題提起を込めたかった。だからこそああいうトーンになったわけですが、十分には伝わらなかったというか、中には「ねとらぼははちまを擁護している!」みたいな声も多くて……いやあ、ホント文章を書くのって難しいですね。僕の書き方が足りなかった、というご指摘についてはまったく否定できません。

 ただ僕にとって、「はちまを叩く」のは別にインタビューなんかしなくてもいつでも書けることだし、実物の「清水鉄平」を見て、今伝えるべきはそれじゃないと思った、ただそれだけのことでした。はちまは叩かれるに足ることをしてきたと思うし、機会があればいつでもまた記事は書きます。っていうか過去にもさんざん書いた。


 最後に、Twitterで質問募集してたのに一言触れただけじゃないか! というご意見もいただきましたが、記事内での問いは基本的に募集した質問に基づいています。本当は一問一答のような形式にしたかったのですが、スペースの関係上ああいった形になってしまい、確かにそこは伝わりにくかったと思います。質問を寄せていただいた皆さんには、あらためてお礼申し上げます。


 これからもねとらぼをよろしくおねがいいたします。


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赤ちゃんのおむつ代にします。