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【京都エッセイ】京都タワー

京のなんなん①:京都タワーの形

京都駅に着いた。
烏丸口を出てすぐのところに、立ち止まっている人が数名。見ると、皆同じ方向にカメラを向けていた。その先には京都タワー。わたしも彼らにつられて、目前の白亜の塔ににカメラを向けた。

京都タワーって古都っぽくないなぁ。
古都、で思い浮かべるのはお寺とか神社とか、史跡とか町家が並ぶ街並みとか。我ながらひねりのないイメージだな、と可笑しくなるけれど、「古都」にはどうしても古さや歴史を求めてしまう。
だから、京都タワーには古都を感じない。鉄筋製だし高層だし、その姿形は京都どころか横浜のマリンタワーを連想させる。

「京都タワー 形 由来」
京都駅前で市バスを待ちながら、スマホで検索をする。スマホって本当に便利だ。気になったことをその場ですぐに調べられるんだもの。
何が気になったかって、京都タワーのデザイン。古都らしからぬデザインの正体が気になって仕方ない。
検索の結果、京都タワーの形は「灯台」だった。実際のところ、ろうそくをイメージする人も多いらしい(京都にはお寺が多いし、そうなるのも無理はない)。けれども設計者は、灯台をイメージしてこの塔を設計したそうだ。
灯台の役割は、大海原に出た船が航路を見失わないように海を照らすこと。京都に海はないけれど、航路はある。航路は京都が歩んできた過去の歴史と、これから歩む未来の歴史。京都がその航路を見失わないように、京都タワーは灯台として明かりを灯すのだ。

京都は1200年もの間、日本の都だった。それゆえ、京都の街は戦火に何度もさらそれた。それでも、その度に京都はめげずに復興し続けたのだ。なんてたくましいのだろう。それくらいたくましくないと、伊達に1200年も都をやっていられないか。
これは一京都好きのわたしの願望ではあるのだけれど、京都はこれからもたくましくあってほしい。1200年間都であったというプライドと歴史に、ずっと貪欲であってほしい。わたしは、京都の歴史や伝統が、地名や地域の祭として生活に根付いている京都が大好きだ。
京都タワーさん。願わくば京都が航路を見失わないよう、灯台として照らし続けてください。よろしくお願いします。

迷子にならず、またここに戻ってこられるな。だって灯台があるから。
安心感がこみ上げてくる。ついさっきまで、やれ古都っぽくないだのやれ横浜のマリンタワーなどと言っていたのが嘘のよう。この潔い手のひら返しっぷりに、ふふっと口元が緩んだ。

市バスが来た。
さて、今日はどこを散策しよう。ホテルに荷物を預けたら、応仁の乱跡地でもめぐろうか。履きなれたスニーカーを履いてきて正解だったな。

市バスに乗り込む直前、ちらりと京都タワーの方を見た。今度はファインダー越しではなく自分の目で、直接。

「行ってきます」

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京のなんなん①の答え:灯台

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