思い出は、夏。

私は夏が好きだ。

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子供の頃の夏は、とても忙しかった。
川に行っては岩場から何度も飛び込み、市営プールも毎日のように通った。
飽きるまで泳ぎ、帰りの車中でチョコ味のカロリーメイトを食べ、泥のように眠る。これが私の形式美。

夏と言えばかき氷。かき氷は祖母の家で食べるのが定番だった。祖母の家に行くとシンク上の収納棚から家庭用かき氷機が取り出され、食卓の真ん中にドンと置かれた。真打ち登場だ。
氷の削れ具合は粗め。粗く削れた真っ白な氷に、スーパーで買った安くて真っ赤なシロップをかける。スプーンで氷をザクザクする感触が好きだった。

とにかく毎日忙しかった。
麦藁帽子にジョンジョン(静岡弁。ゴム草履のこと)という出で立ちで、夏の暑さをものともせず走り回った。暑苦しいほど全力で、これでもかというくらい夏を楽しんだ。
当然、真っ黒に日焼けした。でも、当時の私にとって日焼けは「夏にいっぱい遊んだ勲章」。夏を目一杯楽しんだ自分自身が、とても誇らしかった。

そして、8月中旬過ぎ。ツクツクボウシが鳴き始める。その鳴き声は「夏休みがもうすぐ終わるよ」という合図だった。
今でもツクツクボウシの声を聞くと、寂しい気持ちになるのはきっとこのせい。夏ほど「終わり」を体感する季節は無いと思う。

夏が来ると、子供の頃を思い出す。
冷たい川、プールのカルキ臭、日焼けでヒリヒリ痛い肌...音も香り感触も、全てそのまま鮮明に蘇ってくる。それは大人になっても色褪せない。

鼻の奥がツン、となった。
大人になった私は、川に行くかなくなった。麦藁帽子にジョンジョンという格好でせわしく走り回らないし、外出する時は必ず日傘と日焼け止め。
かき氷は家で作るものではなく、外で食べるものになった。小洒落た甘味処で出される氷はふわふわで、シロップは果汁100パーセント。

大人になった私は、子供の頃に過ごした夏を、どこかに置いてきてしまった。

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私は、楽しくて少し切ない夏が好きだ。
子供の頃と今では夏の過ごし方は違うけれど、夏を楽しみたいという気持ちだけは変わらない。それはきっと、子供の頃に過ごした夏がただただ楽しかったから。

梅雨が明けたら夏本番。今年の蝉も、元気いっぱいに鳴きますように。

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ゆかり

日々是好日

今日、ふと思ったこと。
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