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LA POESIE EST DANS LA RUE chapter.9 Mitski『Your Best American Girl』

11月6日にDVDがリリースされるブレット・ヘイリー監督『ハーツ・ビート・ラウド』。小規模ながら気分のいい、NYらしいインテリジェンスな風が心に吹く秀作です。



レコードショップを営む音楽好きな父親フランクと音楽の才能に恵まれながら医者を志して大学進学を控えた1人娘サムの関係を基軸にしたストーリー。

そのサムが恋して付き合い始めるのが駆け出しのアーティスト、ローズ。彼女がサムに「これはわたしの歌」とラヴレター代わりに差し出すのがMitskiの『Your Best American Girl』です。



Mitskiはアメリカと日本のハーフ。両親の仕事で世界中を転々とし、やがてアメリカでアーティストとして活動を開始。2016年、4thアルバム『Puberty 2』でチャート、クリティック両面でブレイク。そのアルバムに収録されていた『Your Best American Girl』は先日Pitchforkが発表した「2010年代のベストソングTOP200」で7位に選ばれました。

轟音で鳴らされるG→A→Bm→F#m→G→A→Dのコードによるコーラス。Mitskiのエモーショナルなヴォーカルで綴られるのは自分を変えて違いを乗り越えようとする葛藤、出来なかった哀しみ。

ローズとサムはカラードのレズビアンですが、そのことが映画ではことさら大袈裟に扱われません。フランクも心から応援し、温かく見守っています。

しかしそのことで、尊厳を傷つけられた経験がなかったわけではないでしょう。同じ葛藤を経てきたからこそ、それをシェアして共に前に進もうとすることが出来る。

終盤、母親に纏わる悲しい過去をローズの助けで乗り越えようとするサムの姿はとても感動的です。そのバックに流れ2人の背中を押すのはフランクの奏でるアルペジオですが、そこにはMitskiが奏でる轟音も聴こえてくるような気がします。

『Your Best American Girl』 Mitski

もしも、私が小さなスプーンだったら
永遠を誓うキスが何度もできるのに
あなたにはフィットしなくて
目の前に誰もいなくなった

あなたは夜を見たことない太陽
朝の小鳥が歌うのを聴いてる
私は月でも星でもないけど
起こしてくれたら小鳥に歌う

もう待たないで
上手く合わせられないから

あなたのママはきっと
私の育ち方を褒めてくれない
けどそれでいいの

あなたはアメリカの男の子
私はそれにお似合いの
アメリカの女の子になりたいだけ

あなたを私のものにしたい
きっと後悔するけれど

あなたのママはきっと
私の育ち方を褒めてくれない
けどそれでいいの

あなたはアメリカの男の子
私はそれにお似合いの
アメリカの女の子にはなれない

あなたのママはきっと
私の育ち方を褒めてくれない
けどそれでいいの

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