ごくごくエッセイ〜自販機モーニング〜

財布の中を見た。小銭がほとんど無い。

僕が立っているのは、自動販売機の前である。家からダッシュで20秒。僕は、2カ月に1度くらいのペースで、この自販機を利用していた。

1000円札を入れる。商品の下のボタンに、赤いランプが点灯した。

迷いはない。
いつも買うダイドーコーヒーの微糖。

ボタンを押すと、商品が落ちてくる音と共に、点滅音が聞こえてきた。
これも、いつものことである。パネルに映された4ケタの数字がチカチカと変わる。揃えばアタリということ。よくあるやつだ。

僕はこの、「4ケタ数字のクジ」に当たったことがない。今日もどうせハズレだろう。
家で作業中だった僕は、急いで部屋に戻ったのだった。

それにしても—

小走りしながら考えた。


自販機って、ちょっと特別だ。


スーパーで買った方が間違いなく安いコーヒーを、敢えて自販機で買う不思議。まあそれは、わざわざスーパーに行くのが面倒だからだ。

でも、自販機には固有の魅力もあると思う。



それは、ストレス無く選択ができる点ではないだろうか。



スーパーやコンビニでは、例えば水だけで多くの種類を取り揃えていたりする。さらに、当然だが飲料以外の商品も並べられている。
仮にコーヒーだけを買いに行ったつもりでも、店内に入った僕は結局色々なことを考えてしまうだろう。疲れる。


一方、自販機では目に入るものが限られている。
だから、比較的一本一本の飲み物をよく検討できるのではないか。

飲み物の検討、選択という作業は、庶民にとってささやかな贅沢だと思う。だって好きな飲み物を楽しむって身体的、精神的な快楽じゃない?

飲み物だけに向き合える場で、そして少ない品数ながら意外とバラエティに富んだラインナップを前に、考えるのだ。
コーラが飲みたかったけど、意外とこっちのカルピスソーダも美味しそうだろうな、とか。あーやっぱお茶かな、とか。
僕は、そういうアタマの使い方が好きだ。

なんていうか、自販機に向き合っているとき、僕たちは良いアタマの使い方をしているのではないだろうか。

うん、自販機はすごい。


そんなことを考えながら部屋でボーっとしていたら、とんでもないことに気がついた。

コーヒーを取り出し口に忘れてしまっていたのだ。

あららら。僕は走って外へ飛び出した。

誰かに取り出されていないか心配だったが、コーヒーは確かにあった。良かった。あれ?


「ピーッ ピーッ ピーッ ピーッ」

パネルを見た。

「7777」

アタリである。

こんな幸運もあるのが自販機?


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