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クライマキナ/CRYMACHINA 発売前考察 人間的な機械

インタビューとOPの両方を見て思い浮かんだ考察です。

なお長くなったので記事を三つに分割しました。
そもそも私は一つの記事をやたら長くする悪癖があるので(自覚はあるがキリのいい分割区切りが思いつかない)。

ちなみに今日この記事をアップロードすることにしたのは前作CRYSTAR主人公零ちゃんの誕生日だから。

【エノア=ブルーフェアリー】

OP映像より
BGM紹介動画より

OPの歌い出しとBGM紹介動画の背景から見るに、エノアのモチーフにピノキオのブルーフェアリーが入っていると考えるのは無理のない解釈だと思います。

「ブルーフェアリーってなんだよ」なので解説リンク貼っておきます。

ディズニー版ピノキオの登場キャラクターで木偶人形のピノキオに命を吹き込んだ存在ですね。

ただ、CRYSTARはゲーテのファウストを下敷きにしていたようであくまでモチーフの一端を借りた程度だったので、CRYMACHINAがピノキオを下敷きにしているとは限らないと思います。

……なおOPの歌い出しの時点で

like blue fairy
void ExecuteTheMisson
(ブルーフェアリーは無為な命令を実行し続ける)
The Meaning of my existence
(それが私の存在意義)

というあたりからしてこのゲームもう既にエグいな?

【人間基盤が揺らぐ!】

エノアの仕事は人類の精神再生のため、仮想世界から人間性が高い人格データの選別とE.V.Eと呼ばれる存在の創造を行っている模様。
確かにこの仕事は木偶人形に命を吹き込むのとよく似ていますね。
しかし

仮想世界の設定

主人公のレーベンたちは「21世紀に生きていた少女本人」ではなく「何度も現実世界の歴史を再現するようシミュレートした仮想世界で生まれた限りなく人間らしい少女の人格データ」というあたりも設定エグいですね。

このゼロから人類創生を目指すという神への冒涜を、人間に命じられた機械がやっているという何重もの冒涜的行為。
そしてそんな機械たちが神機=デウスエクスマシンと名づけられているという皮肉……。
この環境の中で仮に「本当に人間である」と認定された存在が生まれたとしても、凄まじいマッチポンプ感があります。
そもそも
「神が人間を創る→人間が神のような機械を造る→神のような機械が人間を創る」
という創造順のせいで「いやそんな超越存在を製造できた時点で人間は人間以上のものを創造しちゃっているんじゃね?コレもう人間いらなくね?」という矛盾が押し寄せてきます。エグい。

※※※

なお私は別記事で以前書いたことですが

聖なるかな 聖なるかな 聖なるかな
昔いまし、今いまし、後来たりたもう
主たる全能の神

という聖句からキリスト教の神とは「この世界のクリエイターにして観測者であり、時系列を無視して世界に干渉可能な超越存在である」という冒涜的自己解釈をしているのですが、エノアもうこの神そのものじゃないですか。
そのエノアですら神機の末席でしかないという時点でなおさらのことコレもう人類再生する必要あるのかなってなります。エグい。

【矛盾から生じる人間らしさ】

そんな超越的機械が2000年も飽きずに懲りずにへこたれずに、人類再生を目指して稼働し続けているのは実に機械的です。
でもその神機を統括する役目を担う第一神機がロストしたことで、残された神機たちが秩序を保てなくなり争い始めるというストーリーらしいのですが、この「ロストした」という設定がどう転がっても人間的だと思います。

2000年もの間稼働し続けても人類再生が成らず、統括者たる第一神機はその絶望感や徒労に耐えきれず自らロストしたというのなら、非機械的な自殺という選択肢を選んだわけなのでとても人間的です。
あるいは第二~第八神機の誰かが第一神機の統括の下では目的達成ができないと判断し、第一神機をロストさせたというのであれば命令優先順位をガン無視できたということなので、これまた人間的です。

そして統括者がいなくなった途端に「人間とは何か」という定義のために神機同士が争い始める実に不毛な行為がもうとても人間的。
でも最初に命令された「人類再生のために働き続けろ」という人間からの命令からは逸脱できていないという点がまた機械的。
実にエグい。

なお以上のプロローグ設定から、CRYMACHINAは「犯人は誰?」「動機は何?」という若干のミステリーサスペンス要素がありますね。

※※※

こんなにエグい機械を、人間をはるかに超越してしまった超存在を製造できるだけの技術を持っていたのなら、機械たちを「人類の意志を継ぐもの」「人類の子ども」と定義して滅びを受け入れるという選択肢も個人的には人間的だと思います。
でもこの作品の人類は「人類再生」というエゴ丸出しで超機械を造っちゃったってあたりが、とても人間らいしというか生物らしい設定ですね。
「滅びたくない」「死にたくない」という生存欲求のせいで「自分たちが造った機械に創られた人類は本当に人類なのか?」という矛盾から明らかに目を逸らしています。
OPタイトルがNotToNotice〔〕;なあたりも、この矛盾に苦しむエノアの心境が垣間見えます。歌詞の文字化け部分が「それ考えたらアカン」という演出になっていたりエグい命令したもんだ……。

※※※

オマケに

敵対キャラクターのリーダー格と思しきゾーエーですが、彼女は人類をそのまま再生するという目的から逸脱して、再生成功した暁には人類が宇宙環境でも生き抜くことができるような機能を与えるために研究するという特権が与えられているのですね。

獲らぬ狸の皮算用のためにリソース割いてやがる!!
この世界の人類本当に諦めが悪いうえに生存欲求丸出しで最高だな!

なおこのゾーエー、エノアの管理する精神世界から人格データパクって私兵製造しているというめちゃくちゃいい性格してやがります。
後述しますがここらへんでちょっと前作CRYSTARに関わる妄想が湧きましたが、それは別記事で。

【余談】

「そもそも本当に人類滅んでいるの?コールドスリープしたヤツとか混じってない?」とか
「離心病って本当にあったことなの?人類史を改竄したヤツとかいない?」とか
「離心病で死んだのたったの人口二割でしょ?いったい何があったんだよ」
とか根元の設定からして結構疑っているところはありますが、そこはまぁプレイしたらわかることなので……。

いずれにせよ、この足元グラッグラな世界で可憐で情緒不安定な美少女たちが大泣きしながら歯を食いしばって生死に向き合う物語は大好物です。性癖が歪む。

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