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イベントレポート:人工衛星データでWeb地図をつくるワークショップ入門編 ~データ取得から実装まで~

加速し続ける宇宙ビジネスの中でも、特に親しみやすい技術として注目される衛星データ。一見高価で難しく、手を出しにくいと思われがちですが、実は無料かつ簡単に利用できるツールも増えており、衛星データを用いたビジネスは私達の生活に欠かせないものとなりつつあります。

衛星データビジネスの可能性を広く知ってもらうため、株式会社天地人ではさまざまな切り口から衛星データに触れてもらうイベントを企画しています。その一つが、2024年2月16日に開催したエンジニア向けのワークショップ「人工衛星データでWeb地図を作るワークショップ」です。宇宙ビジネス共創の場であるX-NIHONBASHIで行ったワークショップのハンズオンの様子をレポートします。

なお、好評につき同企画の第2回を4月25日19時より開催いたします!参加費無料ですので是非お気軽にお申し込みください。


地球観測衛星による宇宙ビッグデータの可能性

イベントは天地人の衛星画像解析エンジニア・庄による、宇宙産業や衛星データの基礎知識に関するインプットからスタート。米航空宇宙局(NASA)のArtemis(アルテミス)計画や、イーロン・マスク氏の率いるSpaceX、Amazonのジェフ・ベゾス氏が率いるBlue Originをはじめとする、宇宙機開発全般のトレンドを把握すると、それらから取得できるデータを活用するビジネスの兆候も掴みやすいと説明しました。

衛星データの大きな特徴は下記の5つです。

  1. 越境性:国境を超えた地域の情報収集や分析が可能。国際的な課題に対する解決策を追求する上で重要な役割を果たします。

  2. 継続性:過去から現在までに及ぶ変化やパターンの追跡が可能となり、長期的なトレンドの把握や予測に役立ちます。

  3. 広域性:地球全体を観測できるため、広範囲にわたる地域の情報を網羅的に収集でき、地球規模の現象や変化の把握が容易になります。

  4. 抗堪性:人工衛星は地上の災害や気象条件に影響を受けにくく、安定してデータを提供します。災害監視や緊急時の情報収集において、信頼性の高い情報源として活用されます。

  5. 同報性:衛星は同時に多くの地域を観測できるため、異なる地域の情報を同時に収集することが可能です。異なる地域のデータを比較することで、相関関係の理解に役立ちます。

上記の特性を活かして把握できるものには、四季変化、紅葉、都市の拡大、建築状況、森林伐採、経済状況、地盤変動、災害被害、車両数、地表面温度、海面水温、気象情報など、人間の活動に関する多岐にわたるデータが含まれます。

宝の山のような衛星データの可能性を知ってもらった上で、実際に参加者の皆さんに衛星データを触っていただくハンズオンパートに進みます。

地表面温度と植生レイヤーを重ねたWeb地図をつくる

今回のハンズオンの最終アウトプットは、地表面温度と植生レイヤーのGISデータを重ねたWeb地図。Web地図上で複数のデータを組み合わせる手法は様々な業界で活用されています。例えば、コンビニエンスストアなどの出店計画立案では、既存の店舗地図と人口分布図を重ね合わせた地図が活用されるケースがあります。

ステップ① 衛星データのダウンロードを体験する


実際に参加者の皆さんに手を動かしていただくハンズオンパートは、衛星データのダウンロードからスタートしました。今回使用する地表面温度データ(LST)と植生データ(NDVI)のうち、特にNDVIは欧州宇宙機関のプラットフォームからダウンロードを体験していただきました。

NDVIは、赤色および近赤外線バンドの反射率を比較して算出されるデータで、植生の生育状態や密度を示し、緑の植生の量や健康状態を推定するのに使用されます。

今回使用したプラットフォームは、Copernicusプログラムの一環として欧州宇宙機関が運用するSentinel衛星からのデータを利用できる、Sentinel Hub EO Browserです。衛星からの高解像度の画像を閲覧し、異なる波長バンドでの表示や画像の処理、地表面の変化の追跡などの機能を使用することができます。

ステップ② 衛星データを加工する

次のステップでは、下記の手順でダウンロードした衛星データを衛星データを、Webで表示できるように加工していきます。

① NDVIデータをアップロードし、GeoTIFFを準備
② gdaldemで着色されたGeoTIFFを生成
③ gdal2tile.pyでタイル化
④ タイル化済みデータダウンロード

ステップ③衛星データをWebに実装する

最後のパートでは、タイルセットに変換されたラスターデータを、実際にWeb上に表示する作業を行います。

ラスターデータは、Google Mapsや国土地理院をはじめとする様々な企業によって開発・提供がなされています。このパートでは、Web地図業界の代表的なプラットフォームの特徴の解説や、近年のトレンドの解説も盛り込まれました。

Google Colab上でデータ処理を共有しながら、参加者の皆さんそれぞれのPCで作成したWeb地図を表示するところまでハンズオンすることができました。

ケーススタディ - 天地人コンパス

このハンズオンで作成したWeb地図システムをベースに開発されたのが、天地人のコア事業である「天地人コンパス」です。地球観測衛星のビッグデータを始めとする様々なデータ(宇宙ビッグデータ)を基に、解析、可視化、データ提供を行うWebGISサービスです。 農業から都市開発まで、様々な目的に合わせてカスタマイズが可能です。

天地人コンパスの事業急拡大に伴い、天地人ではエンジニアを積極採用中です!このレポートで扱ったようなWebGISや、宇宙産業にご関心のある方、是非気軽にお話を聞かせてください。

募集中の求人詳細はこちらから
https://www.wantedly.com/companies/company_5025838/projects

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