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冬の味モスタルダ・ヴィチェンツィーナ

12月になりました。イタリアの人たちにとっての一大行事
クリスマス、つまりナターレの季節です。
久しぶりに帰郷する家族のために、とっておきの郷土料理を
用意するのもこの時季ならでは。
ヴェネトには、Mostarda Vicentina モスタルダ・ヴィチェンツィーナ
というナターレ限定の味があります。
私もヴェネツィアのナターレが恋しくなって、
必ず作る素敵においしい冬の味です。

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画像2ボリートの茹で肉に添えたり、フォルマッジオと一緒に食べたり、冬の食卓には欠かせない一品。

画像3パンにマスカルポーネ、その上にモスタルダを盛りつけて。

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ナターレの食卓にモスタルダ

久しぶりに帰郷する家族のために、とっておきの郷土の味を
用意するナターレ。ヴェネトでは、モスタルダ・ヴィチェンツィーナ
(ヴィチェンツァのマスタードの意)というナターレの味があります。
マルメロや梨、りんごをうす甘く煮たジャムのようなものですが、
モスタルダという名前通り、なんと辛子が入っているのです。
甘いのにぴりっとくる不思議な風味は、病みつきになること間違いなし。
特にマスカルポーネとの相性が最高で、パンにマスカルポーネ、
そしてその上にこのモスタルダをたっぷり盛りつけて
食べるのがヴェネツィア流。
年一度ナターレに故郷に戻り、懐かしさと辛子の刺激とで
涙にむせぶということになるわけです。

北イタリアの冬のご馳走の代表はBollito=ボリート
大きな鍋に丸鶏や牛スネ肉、豚肉などを煮て、そのブロードと
茹で肉とつけあわせの野菜を食べるボリートは、家族や友人大勢が
集まる時にぴったり。北イタリアの家庭ではナターレから年末にかけて、
最もよく作られる料理です。
そのボリートのある食卓に登場するのが、このモスタルダ・ヴィチェンツィーナです。ボリートの茹で肉に添えたり、フォルマッジオと一緒に
食べたり、冬の食卓には欠かせない一品なのです。

冬が近づいてくると町の食料品店の店先には、贈答用にドライフルーツで
美しくデコレーションされた大きさも様々なモスタルダの樽が並びます。
中にはひと抱えもある大きな樽も。自宅用には量り売りもあります。
日本で年末になるとお節の食材が並ぶようなものでしょうか。
私は12月になるとヴェネツィアを懐かしみ、モスタルダを仕込むこと
にしています。暮れの年中行事という感じ。
本格的にはmela cotogna(マルメロ)を使うのですが、
おいしいリンゴが出回る季節ですから、手軽にリンゴで作っています。
酸味の少ない柔らかい味わいの黄色いリンゴ、しなのゴールドや王林
適しています。作り方はとっても簡単。

モスタルダ・ヴィチェンツィーナのレシピ


材料/黄色いリンゴ4〜5個、白ワインと水カップ2杯ずつ、
グラニュー糖大さじ4〜5杯(甘さは好みで)、レモン汁半個分、塩少々、溶きからし大さじ2杯(辛さは好みで)


①リンゴは皮をむき、ザクザクと切って鍋に入れます。
白ワインと水半々、レモン汁を加え、柔らかくなるまで蒸し煮にします。
水気が足りなくなったら適宜足して焦がさないように
②ムーランでリンゴを裏ごしし、砂糖を加えて煮ます。
好みですが、ふつうのジャムよりぐっと甘さ控えめに。
あまり煮詰めず、さらっと仕上げます。塩をひとつまみ、隠し味に。
③あら熱をとってから、洋からしをゆるく溶いたものを入れて
混ぜ込みます。
イタリアには辛子のエッセンスなるもの(液状)があるらしいのですが、
日本では手に入らないので、粉の辛子を使います。
辛子の量も好みですが、ぴりっと来るくらいけっこう入れます。
でも、最初は味を見ながら少しずつ加えましょう。
④ビンに小分けにして冷蔵庫で保存。
タッパーやジップロックで冷凍保存もできます。

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デザイナー、美術家、料理家。イタリアはヴェネツィアに通い、東京においても小さなエネルギーで豊かに暮らす都市型スローライフ「ヴェネツィア的生活」を実践しています。ヴェネツィアのマンマから学んだ家庭料理と暮らしの極意を伝えます。