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おいしいごはんは世界を救う〜緊急追記

私たちの人生の大半は日常でできています。
新型コロナウィルスのために様々な制限や不自由を強いられていますが、
その日常を見つめ直す機会を与えられている気がしています。
料理は栄養や食べておいしいだけでなく、自分や誰かのために
作ること自体が心を温め、暮らしのベースをかたち作ります。
3.11の日々から10年目、コロナパンデミックから1年目、
改めてたくさんの大事なことに気づかされています。

新型コロナウィルスを防ぐ #STAYHOMELIFEHACKS

「おいしいごはんは世界を救う」を生活信条に、
2020年は料理という表現方法でできることを始めようと思っていました。
メンバー制の料理相談室的なコミュニティサイトを立ち上げようと
計画していたその矢先、瞬く間に新型コロナウィルスの感染が拡大し、
すっかり世界の状況が変わりました。
今できることは何か?と考え、料理のレシピや家事を中心にこの状況を
サバイバルするためのフェイスブックの情報交換ページ #STAYHOMELIFEHACKS に切り替えました。

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自分らしくいるために


私にとって「自分らしくいること」のためにはいくつか守るべきことがありますが、その筆頭が毎日の食事です。日々自分と誰かのためにごはんを
作り、食卓を囲むことの大切さはヴェネツィアのマンマに出会って、さらに確信することになりました。

以前、テレビ番組の取材に応じた日本最高齢の現役女性カメラマンの方が、「お元気でいる秘訣は?」という問いに
「いつ誰に見られても恥ずかしくない食事」

とお答えになっているのを見て、激しく共感。
健康維持のための食事の内容はもちろん、食べることへの真摯な態度こそが、自分らしく生き、創造的な生活をかたちづくるのだと思っています。
フェイスブックでも、せっせと日記のように日々の料理をアップして自分の生活を客観的に俯瞰しています。
まさしく「いつ誰に見られても恥ずかしくない食事」をこころがけるための有効活用法です。様々な方が、わたしの料理に何かを感じてメッセージを下さることも増えてきました。

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3.11の震災以来、私たちの日常は位相を変えたものになってしまいました。
自分にとって大切なものは何か、人生の優先順位もはっきり意識するようになり、生活時間の配分も変わりました。家族や大切な人と過ごす時間はより濃密なものになり、一日を大切に生きようという気持ちをたしかめるように食事作りに向かっています。
私のいう「おいしいごはん」は美食とは違います。何を食べるかも重要ですが、むしろ誰とどのように食べるかが大事です。そして一緒に食卓を囲む
ことが、どんなに人と人を近づけるかという「食卓力」も信じています。

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おいしいごはんという表現方法

2014年から足かけ2年は仕事を中断し、実家の母の在宅介護で過ごすことになりましたが、その間もできる限り、母や家族のためにおいしいごはん作りをこころがけました。「自分らしく生きるためによりよく食べる」という
究極の食生活でした。
母を看取った後、残された時間で何がしたいのかできるかと模索していま
したが、まずは長年描きためていた作品を1年がかりで手を入れまとめ上げ、
展覧会を開き発表しました。今後作家としての活動も続けていきますが、
もうひとつのライフワークである「料理でできる表現」を始めたいと
思っています。

おいしいごはんは世界を救う

自分にできることと、人生の時間をはかりにかけると、もうあまり猶予は
ないのかもしれません。
あらためて食べることについて向き合い、日々の食卓、家庭料理の大切さ、「よりよく生きるためのメソッド」としてのごはんをひとりでも多くの人と共有したいと思っています。
私がヴェネツィアのマンマの料理と生き方に触発されたように、誰かが
私の「おいしいごはん」に共感を持って暮らしを見直すきっかけになれば
と願っています。
やや大げさにいえば、それが私が自分のスキルを生かしてできる社会的貢献なのではと感じています。
たしかに「おいしいごはんは世界を救う」のだから。



以下は、こころに響いた
内田樹さんのブログ「ご飯を作り、お掃除をすることの英雄性」
より抜粋です。

「ご飯を作り、お掃除をする」というこの二つの類的営みを愉悦的経験として奪還するという点に、おそらく村上春樹の文学の世界性の秘密は存する。
世界中に、国境を越え、人種を越え、宗教を越えて、どこにでも「ご飯を作る人、お掃除をする人」はいるからである。
彼らはその日々の営みに十分な敬意を示されないことにいささかの苛立ちと悲しみを覚えている。
村上春樹はその人々の欠落感をいっとき癒してくれる。
「日常生活」と貶下的に呼ばれるものの冒険的本質を一瞬垣間見せてくれる。だから、「ご飯も作らないし、お掃除もしたことがない」タイプの
知識人たちが村上春樹をうまく理解できない消息が私にはよく理解できるのである。





デザイナー、美術家、料理家。イタリアはヴェネツィアに通い、東京においても小さなエネルギーで豊かに暮らす都市型スローライフ「ヴェネツィア的生活」を実践しています。ヴェネツィアのマンマから学んだ家庭料理と暮らしの極意を伝えます。