第30回『ニューハーフの遺言! 素の自分で勝負できるようになった話』

うぃす! 大阪男塾の塾長です。

ホストクラブにやって来るお客さんは、かなりバラエティに富んでるっす。

色んな職業、性別の人が来店するんすね。

今回書くのは、僕のお客さんだったニューハーフのなっちゃんについて。

当時、なっちゃんといえば「ベティのマヨネーズ」というミナミのお店で6年連続No.1だったという有名人。かなり稼いでた人だと思います。

僕にホストの仕事のいろはを教えてくれた、たっつん。彼が行きつけにしていた「パカパカ」というBARによく連れてってもらったんすけど、なっちゃんとは、そこで知り合いました。

ニューハーフの人ってキャラが立ってる人が多いんすけど、彼というか彼女は目力の強さが異常でしたね。

初対面でいきなり睨まれたんすけど「なんや、こいつ」と思って「お前なんぞに負けるかい!」とメンチを切ってたら、顔がどんどん近づいてきました。至近距離で「殴られるんかな?」と思った瞬間、最後にチュッってキスされ「ええやん。あんた、根性あるやん」てほめられました。

ようわからんすけど、こっちも目力を発揮したことで、なっちゃんのお眼鏡にはかなったようだったっすね。

そのあと2ヶ月に1度くらいのペースで、ホストクラブに来店してくれるようになったんすけど、ニューハーフのお客さんの相手はなっちゃんが初めて。

正直「どう付き合ってええか、わからんわ」って状態だったんすね。

で井上敬一さんに「今、ニューハーフのお客さんがいるんすけど、どうコミュニケーションをとったらいいですか?」ってストレートに聞いたんすよ。

井上さんは「中身は男や。せやから男として接するのが正解!」と、ぴしゃり。確かにそれは当たってて、男として対応するようになった途端、スムーズに付き合えるようになった記憶がありました。

一度こんなことがあったんす。

なっちゃんがお店に遊びに来てくれたときに、みんなで酒を飲んでワイワイ盛り上がったんすけど、ブランデーをロックで飲めと意地悪な飲ませ方するなっちゃんに怒りのスイッチが入った僕は、自分のディースクエアードのバカでかいベルトを外して「こらお前、調子乗んなよ!」って思いっきりなっちゃんをしばいたったんすね。

普通はこんなことしたら、みんなぶちぎれるんすけど、そこはさすがなっちゃん。

「いやぁやめてー」と、ニューハーフ特有の声色で、やたら楽しそうなんすよ。

後日「拓真ちゃ〜ん、気持ちよかったわよ〜 」と、僕のことをさらに気に入ってくれました。

出会ってから4年後、訃報が飛び込んできました。

なんとなっちゃんが、自ら命を絶ったというんです。

寝耳に水だったので絶句しましたね。

なっちゃんが独立出店した天国のドアという店で一緒に働いていた親友のプラムさんが詳しい話をあとで教えてくれました。
亡くなる直前に家が近所だったプラムさんに連絡が入り、急いでなっちゃん宅へ向かったものの間に合わず。

プラムさんはその当時すでに完全なる中年だったため、少しの全力疾走で息切れして、二日酔いだったため、
「給水せな無理やわ…」と自販機でポカリスエットを買って飲み、ほっと一息ついたせいかタバコを一服したあと、なっちゃんの家に到着したものの、間一髪間に合わず。

その時のことを僕や幸太郎と飲みながらプラムさんは「もう私、一生ポカリスエットは飲まないわ!何が天国のドアやねん」と泣きながら、アクエリアスをがぶ飲みしてたのを覚えてるっす。

そしてそれを見た幸太郎は「お前らのあかんとこはそういうとこやで」と冷静にくさしてました。

湿っぽいのは僕らしくないので、ちょっとちょけた書き方になってしまいましたが、なっちゃんには大事なものを教えてもらいました。

ニューハーフの人って「全てさらけ出してなんぼ」というマインドで生きている人が多いんすよ。

なっちゃんもまさにそのタイプ。

ホストとしてデビュー直後の僕は、まだどっか格好つけてるところがありました。でもなっちゃんとの出会いで「格好つけてる場合やない。恥もなんもかもさらそう!」と覚悟が決まりましたね。

6年間NO、1として君臨し続けたなっちゃんはきっと孤独で普通に頑張ってる人の何倍も沢山のことを独りで抱え込んでたんだなぁと。

今でこそLGBTという言葉で世間から認知されてるけど、当時はやっぱり生きにくい部分も沢山あったと思うし、フラフラな日もあったし常にどこか情緒不安定で危なっかしいところはあったけど、この人は死ぬ気で自分の人生を全力疾走したんだろうなと思うっす。

なっちゃんとの出会いによって、ホストとして成長できたのは間違いないっす。

僕が天国へ行ったら、またディースクエアードのベルトで、「元気しとるんか⁉ 来たったで!」と、目いっぱいしばいてやりたいと思います。

最後まで読んでもらって、あざしたぁ!!

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