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共和党による黒人投票妨害と白人至上主義の維持

 2024年11月の米大統領選は今からドキドキだ。
 バイデン大統領に継続して欲しい!というよりも、共和党に政権を握られたくない!というレベルだ。
 現在、トランプが共和党候補者の中でぶっちぎりで首位を守っている。
 これは怖い。
 2021年1月6日、トランプ支持者、白人至上主義者による議事堂襲撃事件は記憶に新しい。

 2016年にトランプが政権を握った時と比べると、アメリカ社会は随分変わった。
 多くの若者が、BLMをサポートして、抗議運動を行っている。
 黒人を射殺した警察官が逮捕された。
 黒人をリンチにかけた白人が有罪になった。
 これまで決して起こらなかったことだ。
 とはいえ、このような社会を憎み、恐れる人たちがいる。
 白人至上主義者、トランプサポーターだ。
 白人パワーの奪回を目指す、議事堂を襲撃した彼らなら、いかなる手段も厭わない気がするのは、私だけだろうか?

 古い記事ですが、2016年の大統領選について書いたものを少し書き直してみました。
 2020年の大統領選第一回討論会の記事も、添付しています。
 あくまでも黒人側の視点ですが、選挙妨害や、選挙とこの国のシステムを理解して頂けると嬉しいです。

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 2016年、選挙を終えた時、トランプが勝利したウィスコンシン、ミシガン、ペンシルベニア州の集計に不正が疑われた。
 とはいえ、黒人の民主党投票を妨害する行為は、これまでずっと行われてきた。
 2000年以降の例を挙げてみる。

 黒人学生の多いテキサス州の大学では、共和党検事が民主党への票の集中を妨害するために、
「大学付近ではなく、実家付近の投票場に行かなければならない」
 と偽の情報を流し、違反者は逮捕すると脅した。
 実家に帰るお金がなく、投票を諦めた学生もいた。
 
 犯罪歴があると選挙権がはく奪されるフロリダ州では、元犯罪者のリストに、犯罪歴のない黒人の名前が8千人も追加されていた。
 結果、数千人が投票できなかった。
 未だに名前が消されていない人もいる。
 リストを提供した会社は共産党とつながっていた。

 ミシガン州では、
 「投票には写真付き身分証明書の提示が必要となります」
 という情報が流れた。
 この要求は、定職がなく、家を転々として暮らす貧しい黒人にとっては、簡単なことではない。
 運転免許証の取得や更新にはお金が必要だ。
 免許取得のためには、ガスや電気などの公共料金の請求書を持参し、住所を証明しなければならない。
 実際には、これは偽情報だった。
 SNSの普及により、偽の情報も流れる代わりに、正しい情報もただちに得られる。
 ”写真付き身分証明書がなくても投票できる”ということがわかった。
 とはいえ、携帯電話やコンピューターを持たない黒人の中には、投票を諦めた人もいたはずだ。
 黒人投票数を妨害する意図があったとしか考えられない。

 犯罪歴の話に戻る。
 メイン州とバーモント州以外の州では、重犯罪の判決を受けた人は投票ができない。
 犯罪内容や個人の罪歴によって、投票権をはく奪される期間が異なる州もある。
 ほとんどの州では仮出所期間が終了すると同時に投票権も復活する。
 ところが、フロリダ、アイオワ、ケンタッキー、ネバダ、アリゾナ、ワイオミング、ミシシッピ、アラバマ、バージニアの9州では、投票権ははく奪されたまま二度と戻ってこない。
 つまり一度重犯罪を冒すと、一生投票できないシステムだ。

 2016年の選挙では、重犯罪により、投票権をはく奪された人の数は約610万人で過去最高だった。
 重犯罪というと、殺人や強姦を想像する。
 けれども、そのほとんどがドラッグ関連で、1976年の117万人と比較すると5倍以上に膨れ上がっている。

 重犯罪以外で投票権を奪われていた黒人は約220万人だ。
 この年、選挙権を持つ黒人の13人に1人が投票できなかった。
 その確率は、黒人以外の人種の4倍以上、フロリダ、ケンタッキー、テネシー、そしてバージニア州に至っては、5人に1人で、その確率はさらに高くなる。

 主な犯罪は、コケインやヘロインなどのドラッグ保持だ。
 マリファナは、保持量が1キロを超えたり、マリファナ栽培をしていた場合、他のドラッグ同様重罪として逮捕される。
 ところがフロリダ州に限っては、マリファナ20g以上の所持で逮捕される。
 
 そうはいっても、ドラッグ使用者は黒人ばかりではない。
 ドラッグを常用する白人も山ほどいる。
 ここアメリカでドラッグを手に入れることはびっくりするほど簡単だ。
 ポイントは、「警察官のターゲットが黒人である」ということだ。
 しかも、その多くが軽度の中毒者だ。
 
 ダンナは車を運転している時、常にポリスカーが周囲にいないか注意を払う。
 ほんの一瞬スピードがオーバーした、一時停止を守っていない、テールライトが壊れてる、ウィンカーが壊れてる、といった小さなことでも停車を求められる。
 何もしていなくても、停車を求められることもある。
 彼らの目的はチケットを切ることではない。
 ドライバーが保持しているドラッグを見つけ、重犯罪者にすることだ。
 身体検査をして何も出てこない場合、警察官はドラッグをシートに隠して、犯罪者にしてしまうこともある。
 黒人の場合、ほんの少量のコケインやヘロイン、ちょっと多めのマリファナ所持で、牢屋にぶちこまれ、長期に渡る懲役刑や無期懲役を言い渡される。
 警察官に停車を求められた黒人は、何も悪いことをしていなくても心拍数が急激に上がる理由だ。
 一方、白人に対しては、罰金で済まされる場合が多い。
 彼らの目的は、黒人を逮捕、有罪判決を与え、選挙権を奪うことだ。
 黒人逮捕は投票妨害につながる。

 黒人がこの国でパワーを持てない、持たせないシステムだ。

 とはいえ、投票権があっても、選挙へ行かない人も意外と多い。
 「オバマ政権の8年間で、自分たちの生活は変わらなかった。
 黒人の大統領誕生は意味深いことだけど、俺らの周囲で、生活やビジネスが楽になった人なんかいない」
 と話す人がいた。
 
 確かに、オバマ大統領就任により、劇的な変化はなかっただろう。
 けれども、400年以上続く人種差別を、たった8年間で変えられるはずはない。
 オバマ大統領は任期終了直前に、長期刑の判決を受けていた72人のドラッグ犯罪者の減刑を保証した。
 任期中の8年間で、オバマ大統領が減刑を保証した囚人の数はおよそ1500人。その中の324人が無期懲役だった。
 黒人の投票数を増やし、黒人議員数を増やすこと、それがこの国のシステムを変える、唯一の方法だ。

 そして大統領選投票率は毎回上がっている。
 2012年は58.6%、2016年60.1%、2020年は66.7%だ。
 黒人だけの投票率はわからないけれど、黒人セレブリティ、スポーツ選手が投票の重要性を訴えたことで、多くの黒人が投票へ向かったことも事実だ。

 2024年、トランプが大統領選に当選すれば、ヘイトクライムも増えるだろう。
 前回、トランプ当選後の1か月間に、移民、同性愛者、イスラム教徒に対するヘイトクライムが激増した。
 860件以上、報告されていない数をいれたら、ものすごい数になるに違いない。

 ルイジアナ州では、
 「コットンファームに帰れ!」
 と虐められていた妹をかばった8歳の男の子が、白人の子供たちに殴られて骨折と脳震盪で入院した。
 ウェストヴァージニア州では、62歳の白人男性が、15歳の黒人の男の子を射殺した。
 原因は、肩がぶつかり、男性が男の子を「くず」と呼び、少し言い合いになったからだ。
 命の危険を感じたというお決まりの理由だが、男の子は武器を持っていなかった。
 ノースダコタ州では、道に落ちていた花を拾おうとした黒人男性を、警官たちがボコボコに殴った。
 頭にはスーパーのプラスチックバッグがかぶされていた。
 バルチモア州では、小学校の女性経論が授業中に、黒人の生徒を「ニガー」と呼び、「お前なんか撃ち殺したる!」と言ってクビになった。
 大学でイスラム教徒の学生が、白人の生徒たちに殴られて亡くなった。
 その他、黒人の集会、学校、チャーチ、個人の車に、「KKK(クー・クラックス・クラン):白人至上主義」の落書きがされていたり、道を歩いていて、「ニガー!」と呼ばれる事件は多発した。
 大きく報道されていないけれど、黒人が殺される事件もあった。

 冒頭にも述べたように、アメリカ社会は7年前と変わっている。
 これらの事件を起こせば、有罪になる可能性もある。
 とはいえ、次回選挙でトランプが当選した場合、その状況は逆行する。
 日本にもトランプ支持者がいると聞いた。
 トランプの政策すべてが間違っているとは思っていない。
 けれどもトランプ支持は、人種差別を肯定することを理解して欲しい。
 そしてトランプを支持したとしても、我々日本人は、差別する側ではなく、差別される側にいることも覚えておきたい。
 
 アメリカは広く、様々な人種で構成されている。
 この国でどんなに長く暮らしても、この国で生まれても、自分が見ている世界はそれほど広くない。
 白人、黒人、アジア人、互いの生活、環境、文化の違いを理解することは難しいけれど、皆、同じ人間だ。
 それぞれの自由、平等、正義を尊重できる、当たり前の社会に向かうことを心から願っている。

こちらは2020年大統領選第一回討論会について書いた記事です。
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