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Rosa Parks #3

バス・ボイコットの実行

 バス内での人種差別を失くすために、行動を起こさなければならない!
 訴訟を起こさずして、法律は変えられない。

 訴訟だ!
 ボイコットだ!

 とはいえ、通勤や通学のためにバスは必要不可欠だ。
 サポートを得ることは難しい。
 その夜、彼らはボイコットによって起こり得る、すべての問題を想定し、討議した。
 そしてボイコットの実行も、ローザを原告として訴訟を起こすことも可能だという結論に達した。

 「ローザ・パークスは自立した女性で、正直者で、罪歴もない。
 報道機関が彼女の過去を掘り返しても、なにも出てこない。
 このケースは俺らのもんや!」

 ニクソンは確信した。
 事実、白人がローザに文句を言えるとすれば、彼女が黒人として生まれてきたことしかない。

 彼らの行動は迅速だった。
 12月1日にローザ・パークスが逮捕され、その夜にはボイコットを決定した。
 ボイコットのスタートは、公判日の12月5日だ。
 その計画は、直ちにジョーアンに伝えられた。
 ジョーアンは翌朝までに、3万5千通のビラを作った。

 「1955年12月5日月曜日について。
 また別の黒人女性が、白人にバスの座席を譲らなかったために、逮捕されました。
 黒人には権利があります。
 乗客の4分の3を占める我々黒人がバスを利用しなければ、バス会社は機能しません。
 それにも関わらず、空席を確保するために我々は席を譲り、譲らなければ逮捕されます。
 このようなことが二度と起こらないよう、我々は行動を起こさなければなりません。
 次はあなたが、あなたの娘や母親が逮捕されるかもしれない。
 女性の裁判が行われる月曜日、黒人はバスを利用しないでください。
 これは、逮捕と審理に対する抗議運動です。
 仕事、学校、ダウンタウン、いかなる場合もバスに乗らず、タクシーを利用するか、歩いてください」

 このビラは、金曜日の朝、生徒に手伝ってもらって黒人小学校、中学校、高等学校に配布された。
 ニクソンは、金曜日の午前中に、19人の牧師と連絡を取った。
 黒人牧師たちには人々を動員する力がある。
 彼らは日曜日の説教で、抗議デモについて説明することに同意した。
 教会でもチラシを作り、訪れる人々に配布した。
 教会に行けない人のために、ビラのコピーが、日曜日の新聞広告の一面で掲載された。
 
 NAACPは、黒人が経営する18のタクシー会社に協力を求めた。
 タクシー会社は、すべてのバスの停留所で停車すること、乗車料金をバスの運賃と同じ10セントにすることに同意した。
 問題は、タクシーの乗車人数に限りがあることだ。
 運の悪いことに、月曜日の天気予報は雨だ。

 ボイコット決行当日、朝から空は真っ暗だ。
 果たして、通り過ぎるモンゴメリーの市営バスは・・・

 ほぼ空っぽだった!!!
 ボイコットは成功した!!!

 乗車した数人は、抗議を知らなかった人たちだ。
 それ以外の人は皆、ダウンタウンまで歩くか、停留所で黒人経営のタクシーを利用した。
 抗議を知らなかったにも関わらず、バスの乗車をやめた人もいた。
 警察が、2台のバイクで各バスをエスコートしていたからだ。
 抗議に参加する人を守るためのエスコートだったけれど、黒人は、彼らを逮捕するためだと勘違いした。
 空っぽのバスは、市営バスの経営が、黒人によって成り立っていることを証明した!

 モンゴメリーの黒人は、この抗議のために一致団結した!

裁判

 一方、ローザはこの日の朝、裁判所にいた。
 彼女をサポートするために、数多くの黒人が裁判所に集まった。
 ドライヴァーのジェームズ P.ブレイクも証人として出廷した。
 バス会社は、ひとりの白人女性を目撃者として準備していた。
 
 「後部座席は空いていたけれど、彼女は、その席へ移ることを拒否しました」

 裁判では必ず、黒人を陥れるために嘘をつく白人女性が現れる。
 そして判決は・・・

 「人種分離法違反」で有罪!!!

 といっても、判決は有罪で正解だ。
 地方裁判所では、法律を変えることはできない。
 NAACPの目的は、このケースを連邦裁判所まで持ち込み、勝利することだ。

ミーティング

 この日の夜、ホルト・ストリート・バプティスト・チャーチでミーティングが開かれた。
 スピーチは、モンゴメリー改善協会の代表、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師だ。
 デモのために設立されたこの協会の代表に、キング牧師が選ばれた理由はいくつかあった。
 まず、若く、聡明であったこと。
 そして、アトランタからモンゴメリーに引っ越したばかりの彼には、仲間もいなければ、敵もいなかった。
 これまで白人に便宜を図ってもらってきた黒人有力者たちは、白人を攻撃することに対し、非常に用心深く保守的だ。
 モンゴメリー聖職者として、長く働いてきた牧師の中には、真向から白人に抗議することに躊躇する者もいるだろう。
 その点、キング牧師を知る人は少ない。
 抗議に失敗した場合も、故郷のアトランタへ戻るという選択がある。

 ホルト・ストリート・バプティスト・チャーチは黒人居住地の真ん中にあった。
 白人の襲撃を恐れる必要もなく、人々も集まりやすい。
 この夜、チャーチには、予想以上の人々が集まった。
 そこで、中に入れなかった人々もミーティングに参加できるよう、すぐにスピーカーが準備された。
 
 この日の課題は、ボイコットを継続するかどうかだ。
 多くの人は、この週末で終了すると信じていた
 これ以上続けたら、白人は黙っていない。
 彼らの命に危険がおよぶことは明らかだ。

 ニクソンがマイクを手にした。

 「小心者は帰りなさい!このデモは長期戦になるぞ!
 我々は、これまで何年も耐え忍んできた侮蔑、恥辱を、後の子供たちに経験させたくないがために頑張ってきた。
 けれども私は、子供たちが手にするであろう自由の、ほんの一部でいいから、私自身も味わってみたいと思うようになった!」

 続いて、キング牧師のスピーチだ。

「我々にも限界がきた。
 我々は長い間、虐待、差別を耐え忍び、疲れ果て、そして今夜ここに集結した。
 我々は、過去も現在も、暴力を支持しない!
 我々の唯一の武器は、意義を唱えることだ!
 私たちには、権利に対して異議を唱える権利がある!
 私たち黒人は、KKKや、白人市民協議会と同じではない。
 黒人は、バスの停留所で十字架を燃やしたり、家から白人を引きずり出して、遠くへ連れて行き、リンチにかけることなどしない!

 ・・・我々は間違っていない!
 もし我々が間違っているなら、この国の最高裁が間違っている!
 我々が間違っているなら、アメリカ合衆国憲法が間違っている!
 我々が間違っているなら、全能の神が間違っている!


 ・・・我々は長い間、暗闇の中で、囚われの身やった。
 けれどもついに、自由と正義と平等という夜明けに辿り着こうとしている!
 我々は今ここで、正義が認められるまで団結し、戦うことを決意する!」

 約15分間にわたる、力強く、威厳に満ちたスピーチは、人々の心をがっしり掴んだ。

 続いて、バス会社に要求する3つの事項の説明が行われた。
 ①バスにおける適切な応対。
 ②バスの座席は乗車順(先に来た人が先に席を確保できる)。
 ③黒人街のバスルートへの、黒人ドライヴァー採用。
 これらの要求のために、ボイコットを継続するか否かを聴衆に尋ねた。
 少しずつ、少しずつ、立ち上がる人が増え、最後には、全員が立ち上がった!
 教会の外でスピーチを聞いていた人々から歓びの声が上がった。

 3つの要求にバス会社が応じるまで、ボイコットは継続だ!!!

最後まで読んでくださってありがとうございます!頂いたサポートは、社会に還元する形で使わせていただきたいと思いまーす!