3年を生き延びる

2019年 12月27日
私は直腸癌の手術を受けた。

当時36歳。
夫と2歳の子との3人暮らし。
突然癌の告知を受け、早急に腫瘍を摘出した方がいいとの事であったが、他に思い浮かぶ選択肢も特に無く、とにかく手術を受けてみるしかないというかんじだった。

ステージ2か3か…
まぁ、これも腫瘍の病理検査をしてみないとどれくらい深く浸潤してるかわからないので、なんとも言えないんですがね、
あと、胸の方にも炎症が見られます。乳がんの疑いもあるので検査してみましょう

医師の言葉を聞きながら、自分はもう長くは生きられないのかもしれないという事を思った。

抗がん剤治療とかになるんだろうな

などとおぼろげに想像しながら、一方で思いのほか冷静に自分の死について考えていた。

今の私は伴侶もいて子もいてこれ以上望むものもないし、たとえ今死んでも大丈夫だな

直感的にこう思えた。
今思い返しても不思議なのだが、素直にそう思えた。

昔から怪我をしたり血が出るシーンが極端に苦手で手術なんてもっての外!という自分が、
手術しかないんだったら手術する
と即答し、例え今死んでも大丈夫!と言える覚悟でその日を迎えるとは思ってもみなかった。

これも経験してみないとわからないもんですね。

手術は予定時間より早目に無事終わった。
麻酔から目覚めたら自分の身体じゃないみたいに全然動けなくて、痛みもあるし、両足はマッサージ機で絶えず血流を促されているような状態。
なんだかよくわからないけど家族の顔を見てほっとした。

ひとまず手術は乗り切った。生きてる。

でもこれからどうなるかはまだわからない状態。

年末年始を病院で過ごす。

考えてみたら子が生まれてから完全に自分一人で過ごせた時間は無かった。

これから死ぬまでにやりたい事やっとかなくちゃな!

……私のやりたい事ってなんだっけ?

思いつくままにいろいろ書き出してみた。

大好きなMichael Jacksonの研究をしたい
宮沢賢治や山尾三省の思想に基づく暮らしをしたい
絵を描きたい
好きな曲を弾き語りできるようになりたい
踊りたい

やりたいことたくさんあった!

まずは3年を生き延びることを目標にしよう

私は「3年日記」を買った。

こんな風に自分の人生に向き合ったのは、実は初めてだった。

退院後、しばらくして病理検査の結果が出た。

リンパ節の転移を調べたところ、転移は見られませんでした。ステージ2のAですね。これがBまでいってたら放射線治療とか抗がん剤治療とかをおすすめするところですが、Aならば必要ないと思います。今回の手術で腫瘍は全て取り切ったと思うので、これで様子を見ましょう。
今日は祝杯を上げてください!

なんという奇跡的結果!!
ほとんど手放す覚悟でいた自分の命が還ってきた気がした。

その後胸の炎症も乳がんではないとわかり、血液検査やCTの定期的な検査はしつつも3回目の春を迎え、子は5歳になった。

退院後の世界はコロナ禍に突入していた。

絶望的に見える世界でも、本当に楽しく自分にとって意味のあることをやっていきたい、今そう思えるのはあの時病院で書いた自分が書いたやりたいことリストのおかげかもしれない。

このリストを元に起こった新しい出会いについて、今後書いていきたいと思う。

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