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これからのインフラメンテナンスには、費用対効果が期待できるインフラはどれかの見極めが欠かせず、また、予算を投入できないインフラへの対処をどうしていくべきかの検討も欠かせません。

インフラメンテナンス国民会議への提言

【提言のタイトル】
これからのインフラメンテナンスには、費用対効果が期待できるインフラはどれかの見極めが欠かせず、また、予算を投入できないインフラへの対処をどうしていくべきかの検討も欠かせません。

【提言の全文】

 2012年の中央自動車道笹子トンネル天井板落下事故を端緒として2013年を社会資本メンテナンス元年とする「インフラメンテナンス第1フェーズ」では、2014年の関係省庁連絡会議決定による「インフラ長寿命化基本計画」や、2016年の「インフラメンテナンス国民会議」の設立などにより、令和2年度末までに各インフラ管理者において個別施設ごとの長寿命化計画(個別施設計画)を策定するなどの結果を出しています。そして、2022年からの「インフラメンテナンス第2フェーズ」では、前記の個別施設計画を踏まえて、事後保全から予防保全への移行を主眼とし、「地域インフラ群再生戦略マネジメント」などの推進が図られているところです。

 ここで問題となるのは、昨今の「資材価格の高騰や、働き方改革関連法に基づく労働時間の制約」といった、受注建設業者の死活問題に繋がりかねないリスク要因が主因となり、自治体の公共事業などでは予算額を大幅増額しなければ受注業者を選定できない事態が全国で相次いでいることです。この煽りを受けて2022年以降のインフラメンテナンスでは、全国的に数割ものコスト増となっています。つまり、インフラメンテナンス第1フェーズと同規模の予算を確保したとしても、インフラメンテナンス第2フェーズでは数割減のメンテナンスしかできないということです。このことは、新技術の導入などの発注上の施策により対処し切れるものではありません。

 それゆえ、これからは限られた予算を費用対効果が期待できるインフラから重点的に投入していくことが肝要となります。これには、費用対効果が期待できるインフラはどれかの見極めが欠かせず、また、予算を投入できないインフラへの対処をどうしていくべきかの検討も欠かせません。このような見極めや検討こそ、地域インフラ群再生戦略マネジメントのキーポイントと言えるのではないでしょうか。

 ところが、このようなキーポイントについて、国土交通省の『総力戦で取り組むべき次世代の「地域インフラ群再生戦略マネジメント」、インフラメンテナンス第2フェーズへ』提言書について、では全く触れられておらず、インフラメンテナンス国民会議の地域フォーラムを含めたどのフォーラムにおいても、全く触れられていません。このままでは、費用対効果が期待できるインフラはどれかの見極め方について、どこの自治体も判然としないままに、また、予算を投入できないインフラへの対処をどうしていくべきかについて、どこの自治体も全く検討しないままに、全国の自治体はインフラメンテナンス第2フェーズを漫然と推進していかざるを得なくなります。

 このことについての問題意識は、村役場でも持っています。今年の1月25日に関西圏の某村役場の秘書企画課から頂いたメールには、「本村では、少子高齢化や人口減少が進む中、今後さらに財政運営は厳しくなることが予測されます。その中で公共施設の老朽化対策も大きな課題の一つであり、施設そのもののあり方についても検討する必要があります。」と記載されていました。

 それゆえ、これからは限られた予算を費用対効果が期待できるインフラから重点的に投入していくことが肝要となりますので、費用対効果が期待できるインフラはどれかの見極め方について、また、予算を投入できないインフラへの対処をどうしていくべきかの検討の仕方について、自治体任せにするのではなく、国を挙げて考えていかなければならないところです。具体的には、インフラメンテナンス国民会議の自治体支援フォーラムあるいは市民参画フォーラムにおいて、費用対効果が期待できるインフラはどれかの見極め方について、また、予算を投入できないインフラへの対処をどうしていくべきかの検討の仕方について、広くディスカッションなどを行う場を設けることから始めてみる価値は大いにあるように思います。

【提言の補足】

 これからのインフラメンテナンスには、費用対効果が期待できるインフラはどれかの見極めが欠かせず、また、予算を投入できないインフラへの対処をどうしていくべきかの検討も欠かせません。

 ところが我が国では、国も自治体も、このような視点が欠落しているように感じます。このままでは、大規模な災害によりインフラが広範にダメージを受けた場合に、復興策としてインフラを元通りにしようとする他には成す術が無くなってしまいます。しかし、多くの費用と時間をかけてインフラを元通りにできたとしても、人口減少や高齢化が進んでいる今日では、かつてのインフラ整備時に期待されたような便益は望み得ないところです。

 このことから、これからのインフラメンテナンスに向けて、費用対効果が期待できるインフラはどれかを見極め、また、予算を投入できないインフラへの対処はどうしたらよいのかについて検討を積み重ねておけば、大規模な災害が発生してインフラが広範にダメージを受けた際に、限りある復興予算を最大限に有効活用できるようになります。

 南海トラフ巨大地震の発生が懸念されていますので、巨大地震発生後のダメージコントロールの視点からも、費用対効果が期待できるインフラはどれかを見極め、また、予算を投入できないインフラへの対処はどうしたらよいのかについて検討を積み重ねておくことが望まれます。


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