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1度だけ職場に見惚れるほどの美男子がいたことがある。
すごくミステリアスに見えたが、実際はかなり気が小さくてややこしい人だったと後からわかった。
その職場に恋愛に積極的な女子がいて美男子に何度もアプローチされたが答えは 「NO」だったらしい話を聞いていたので、「ゲイ?」とか思っていたが、多分ただ好みじゃなかったのだろう。いや、若い頃は腐女子気味だったのですぐBL展開を期待していたのである。
その美男子が退職した理由が
「仕事の納期が怖い」
という理由だったことに職場の他の男達はなんだかがっかりしていた。
「気が小さいんだな」
みたいな感じで。
私は男達の仕事はよくわからなかったのでがっかりしなかったけど、納期ごときを怖がるのは社会人として甘いらしかった。
 私の記憶のなかでは美男子は無邪気ないたずらっ子みたいだった。私のコートのフード部分にみかんや無料配布されたティッシュをこっそり詰めたり、飲み会の移動中小学生みたいに繋いだ手を尋常じゃない速度で振り回して手をしびれさせたり、愉快なお兄さんだった。
 若いのに色恋はあまりなかった私の22歳までのOL生活の楽しかった思いでの中に美男子はいる。
彼と恋愛何かしなくてよかった、楽しいままだから。なんて、その職場をやめたときに思ったものだ。
実際その頃一応好きになった人はいたが、そっちは手酷く振られてしまっただけにそう思った。

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