AV新法決議後に出てきた付帯決議について

こちらは、AV新法の審議~決議後、立憲民主党の塩村あやか議員が読み上げた付帯決議案(可決)の文字起しになります。開業などは読みやすいように編集しています。
各フェーズ時点での相関図を加えました。

付帯決議案の趣旨

性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために、性行為
映像制作物への出演にかかる被害の防止を図り、及び出演者の救済に
資するための出演契約に関する特則に関する法案に対する付帯決議案

政府は、本法の施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講じるべきである。
性行為映像(以下AVという)への出演により甚大な被害が発生していることを踏まえ、性暴力被害者、いわゆる虐待サバイバー、発達特性のある人も含め、全てのAV出演被害者の尊厳と人格を尊重し、被害の予防や救済の実現に万全を期すること

また、本法は公序良俗に反する契約や、違法な行為を容認ものではないことを周知徹底すること。

本法の適切な運用を図るため、本法の趣旨、及び内容について関係技官等に周知徹底するとともに、成立に至る経緯について周知すること。また、若年層に対するAV出演被害に関する啓発を行うなど、本法の被害防止、救済に関する広報、普及啓発をより具体的に、かつ積極的に行うこと。

AV出演被害者に対する適切な支援を行うため、被害の実態調査を実施すること。
また、内閣府におけるAV出演被害対策のための態勢を整えること。
関係機関、団体と連携し、実効性のある相談体制を構築するとともに、被害者の支援に必要な財政上の措置を講ずること。また、性犯罪、性暴力被害者のためのワンストップ支援センター、法テラス、インターネットを通じた被害防止・救済に取り組む関係機関、地方公共団体の男女共同参画窓口等の関係機構、関係構築を促進し、支援環境の整備に努めること。
警察における、相談支援体制を強化し、女性警察官の配置の強化など、AV出演被害者が相談しやすい環境の確保、傷ついた心理に寄り添う対応の強化を図ること。

AV出演被害にいたる背景となる問題を把握・分析し、包括的な解決に向けて必要な取り組みを推進すること。

被害者が製作公表者の氏名、住所を知らないまま海外のWebサイトやサーバを経由した被害が拡散していることに鑑み、被害者が本法に定める解除・取消、差し止め請求を実施できるよう、必要な支援を行うこと。

また、AV出演被害者が拡散防止措置を迅速に、困難なく申請できるよう、時宜にかなった必要な支援を行うこと。
AV出演被害者救済のためのサイト運営事業者の役割など明らかにし、対策を強化すること。

また、サイト運営事業者自身による契約約款や利用環境に基づく、主体的な削除等の取組を支援するとともに、迅速・的確な拡散防止の対応ができるよう環境整備を行うこと。
加えて、拡散につながりうる違法なアップロードについて、より厳正に対応すること。

本法施行後において、差し止め請求、拡散防止及び被害の相談件数等について実態を把握する
とともに、その結果に基づいて検討を行い必要な措置を講ずること。

AV出演被害については、本法の罰則規定ともに刑法の強要罪、強制性交等罪、職業安定法、労働者派遣法、売春防止法、著作権法、支持性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律、リベンジポルノ対策法、児童買春児童ポルノにかかる行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律、児童ポルノ禁止法による厳正な取り締まりを強化すること。

本法の趣旨、及び罰則規定の意義、本法制定の背景であるAV出演被害の特徴と重大性について必要な研修を職員に行い、法曹関係者に周知すること。

総じての感想

真っ先に浮かんだ感想は、ここまで付帯決議案に書き込むなら、なぜもっときちんと審議しないのか、という疑問が大きいですね。
AV人権倫理機構の取組や、契約前段階の適切なエスカレーションに踏み込んでいないため、予防の有効性に疑問を感じる点や、関係機関、団体についても現在の取組との関係性も不明なまま予算措置を講じることを求めており、それは適切な税利用といえるのかはなはだ疑問です。
また、違法アップロードや拡散防止などについては、ほとんど具体案もなく対応策については政府の運営に丸投げであり、ほとんど検討されていないと想像します。「被害者が拡散の差し止め請求をできるように支援」「サイト運営事業者の自発的な削除を支援」とありますが、具体性はありません。また、そもそも「拡散されている事実をどう検知するのか」という、もっとも深い部分については触れられてもいません。
ここまで付帯議案に入れるのであれば、なぜもっと有識者を交えた審議をしないのか、本当に疑問ですね。付け焼刃の有効性の疑われる立法、と言わざるを得ません。

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