姓名判断には占い師の数だけ流派がある<続>
●一字姓、一字名に1を足す流派と、足さない流派
姓名判断といえば、真っ先に思い浮かぶのが、姓名の字画数を合計して吉凶判断する方法(数霊法)でしょう。
ところで、この技法を使う占い師には「姓と名はどちらも二文字以上で構成されるべきだ」という流派があります。彼らは、一文字の姓や名の場合、そこに1が隠れていると見なすのです。
例えば、姓と名の両方が一字の「武 豊」さんなら、下のようなイメージで考えるわけです。
姓 名
(1) 武 豊 (1)
この場合、姓の画数合計は武=8ではなく、武(8)+1=9となります。名の画数合計も同様で、豊=13ではなく、新字体の画数を用いる流派なら豊(13)+1=14、旧字体の画数を用いる流派なら豊(18)+1=19 となるわけです。[注1]
さらに、1を足す際、年齢によって1を0と置き換える流派があります。その中には、「30歳以降は1とするが、それ以前は0とする」とか、「21歳の前後で1か0を使い分ける」とか、「30歳以前は0でいいが、30歳以降では0を1とすることもある」とか、「1と0を併用するのが正しい」などという諸説があります。
もちろん、こうしたことは一切不要という流派もあります。こちらは姓の画数合計が武=8、名の画数合計も豊=13(または18) でよいとします。
そのため、武 豊さんの名(豊)の画数合計は、流派によって13になったり、14になったり、18になったり、19になったり、年齢によって変化したり ・・・、と大変忙しいことになります。
ばかばかしいものになると、もともとの画数が吉数なら1を足さず、凶数のときだけ1を足すという迎合的な流派さえあります。そんなインチキをしてまで吉数にしたければ、はじめから「すべての画数は吉数だ」 と宣言したらよさそうなものですが。
●画数合計は何種類がよいか?
姓名の画数を足し合わせるパターンについて見てみましょう。「渡辺直美」さんを例にすると、占い師の多くは次の5種類を用いますが、この一部しか使用しない流派や、6種類以上を使用する流派も希ではありません。[注2]
① 渡(の画数)+辺(の画数)
② 辺(の画数)+直(の画数)
③ 直(の画数)+美(の画数)
④ 渡(の画数)+美(の画数)
⑤ 渡(の画数)+辺(の画数)+直(の画数)+美(の画数)
調べたところ、③または⑤の1種類だけを用いる占い師がいる一方で、多いものになると10種類以上を用いる占い師もいました。
こういうと、「少しの種類で占うのは一般向けの入門書で、多いのは専門家向けなんだろう」と思われるかもしれません。しかし、そうでないことは実際に占い本を手にとって見ればわかります。
運勢をみるのに判断材料が少ないのは不安ですが、あまり多すぎてもかえって混乱するのではないでしょうか。吉数と凶数が4個ずつとか5個ずつ入り乱れたのでは、自分の運勢を喜ぶべきか、憂うべきかも迷ってしまいます。
そもそも5種類でさえ、そのすべてが吉数になる名前は珍しいのです。まして、それ以上を用いたら、すべてが吉数になる可能性はぐっと低くなります。命名の際にそうした名前を選ぶのも困難でしょう。なぜなら、姓はあらかじめ決まっているし、名に使用できる文字も法律で限られるからです。
このように一字姓や一字名に1を足したり、足さなかったり、判断に用いる画数合計の種類が多かったり、少なかったりすれば、占い結果がすっかり変わることもあり得ます。
これらに新字体、旧字体の問題が絡んできたら、どれほど複雑なことになるか想像できるでしょう。
●神秘論か、ナンセンスか?
姓名判断の代表的な技法「数霊法」では、姓名の画数を足し合わせるパターンが何種類もあり、主要なものだけでも上記の5種類(①~⑤)があるということでした。
ところで、この①~⑤は運勢の何を表すのでしょうか。ご多分に洩れず、ここでも占い師が違うと、見解も分かれるのです。
ある占い師は「運勢を左右する最も重要なものは③だ」といい、別の占い師は「⑤がまさにそれだ」と主張します。また、あちらの占い本には「恋愛・結婚運の判断には④を用いる」と書いてあるのに、こちらの本では「③を用いる」とあります。
こんな有様なので、どの占い本、どの占い師を信じたら良いかわからなくなります。「そういうことなら、いっそ各々の占い師の解釈を折衷してはどうか?」これは一見よさそうなアイデアですが、実際に試してみると、まったく使いものになりません。次のような馬鹿げた結論が引き出されるのです。
「すべての画数合計(①~⑤)はあらゆることを判断するのに有効で、どの画数合計も他の画数合計に比べて最も重要である。」
これとまったく同じことが数の解釈にも当てはまります。
「すべての数はあらゆることを暗示し、すべての数は吉数であると同時に凶数でもある。」
まるで神秘家が宇宙の真理を語っているかのように深遠な響きがありますが、常識的にはナンセンスでしかありません。
そういうわけですから、「流派の数はいくつある?」などと強いて計算しようとすれば、次のような無意味な結果にならざるを得ません。
① 字画数の取り方 ・・・ 少なくとも5通り
② 一字姓や一字名に1を足すかどうか ・・・ 少なくとも2通り
③ 画数合計をいくつ用いるか ・・・ 少なくとも10通り
④ 数の吉凶と意味 ・・・ 「たくさん」通り
∴ 姓名判断の流派の数 = ①×②×③×④ = ものすごく「たくさん」
●姓名判断の結果も占い師の数だけある
ところで、これは「数霊」というたったひとつの技法に限った話です。他にもいくつかの技法があり、それぞれに何通りものルールや解釈があります。
占い師の多くは複数の技法を併用するので、その組み合わせ方や優先度、つまり、どの技法をどの程度重視するかといった違いだけで、流派の数は爆発的に増えることになります。[注3]
さらに、出生年月日や血液型など、姓名判断とは性質が違う他の占い技法と組み合わせたものや、まったくのオリジナル技法もあります。これらの一応は体系化された技法のほかにも、女性名の「子」は画数に加えない、といった個別のルールも無数に存在します。
当然ながら、こうした技法の違い、ルールや解釈の違いがある以上、占いの結果は大なり小なり変わってきます。
このように見てくれば、「姓名判断の流派はいくつあるか」という問の答えも明白でしょう。「姓名判断の流派=占い師の数だけ」という結論に、あなたも同意されるに違いありません。
いや、正確にいえば、流派の数は占い師の数より多いのです。「そんなバカな!」と思われるでしょうが、これは本当です。
一人の占い師が異なった技法や異なったルール・解釈の姓名判断書を数冊も著すことがあり、こういうことが現実に起こっているのです。もちろん、同じ名前を占っても結果は全部違います。私が調べた中には、このような占い師が何人もいました。いかがです? 驚きましたか?
●姓名判断で悩む人へのアドバイス
そこで、姓名判断の結果に不安を感じている人のために、次のことをアドバイスしたいと思います。
『たとえ、どれかの占い本や占いサイトに良くないことが書いてあっても、がっかりする必要はまったくありません。あなたが調べたのは、せいぜい数冊か数件でしょう。でも、あなたがまだ調べていない中には、良いことをたくさん書いたものが必ずあるはずです。諦めないで、もっと探しなさい。』
もちろん、ばかばかしくなって探すこともしないというなら、それはそれで結構。その人は不安が解消したと同時に、これ以上このブログを読む必要もなくなったでしょうから、時間もついでに節約できたわけです。一挙両得でしたね。
※前半はこちら⇒『姓名判断には占い師の数だけ流派がある』
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