見出し画像

ExcelとTableauの違い

最近、ことあるごとに聞かれるので、ExcelとTableauの違いを簡単にまとめたいと思います。

「Tableauって何?」という方も少々お付き合いください。ちなみに「タブロー」と読みます。

近年では、GoogleやAmazon、アリババといったテック企業が次々と新サービスを打ち出していますが、ほとんどが無料で使えたりします。一体、どうやって収益を上げるつもりなのでしょうか。答えは簡単です。収益を度外視しているのです。

では何が目的なのか。実は、そうしたテック企業のほとんどのサービスは収益よりもデータを握る目的があります。特に人間の行動データを握るということは、いつでも巨大な広告市場、新サービス創出ができるということで、このポテンシャルをマーケットは高く評価し、巨額の投資が動きます。つまりサービスの対価という消費経済からではなく、企業価値に対する投資という形で金融経済から資金を引っ張ってきているのです。データは「21世紀の石油」と言われるほど、貴重であり、莫大な投資を動かします。

ところでその石油ですが、貴重とは言われていても、そのままでは価値がありません。利用しやすい状態に精製されたり、エネルギー転換(化学エネルギ→熱エネルギー→電気エネルギー)されるからこそ、価値があるのです。データにも同じことがいえます。そのままでは、ただの数字の羅列。分かりやすく、使いやすく、便利な形に変換されて、はじめて価値が創出されます。

前置きが長くなりました。データ分析と言えば、これまで汎用的に用いられていたのは表計算ソフト・Excelです。日本では1995年のWindows95のローンチとともに普及し、ビジネスや家計でも、数字を扱う作業が革命的に効率化されました。2000年代初頭ぐらいまでは、「Excelが使える」こと自体が価値のあるスキルと見なされていたようです。

そんな革命をもたらしたExcelに対して、Tableauとは何者なのか。端的に言えば複雑なデータをより簡単に扱うことができ、美しく可視化できるツールです。日本では、無印良品やリクルートのマーケティングや生産性向上に活用されていることが知られています。先般、セールスフォースから157億ドル(1.7兆円)という天文学的な値段で買収されたことでも話題になりました。今後、データを扱う分野において、デファクトスタンダードになると予想されます。

僕も仕事でデータ分析・ビジュアライズに携わることがあり、Excelにはたいへんお世話になっております。ただ、自分のやりたいことが増えてくるにつれ、3点ほど我慢できない不満を抱いていました。

第一に、Excelは2次元を超えるデータ分析を不得意としています。たとえば、顧客アンケートを分析し、「はやい」「やすい」「うまい」の3拍子そろった店を探すタスクを与えられたとします。Excelでは「はやい」と「やすい」の関係、「やすい」と「うまい」の関係、「はやい」と「うまい」の関係は分かっても、3拍子揃った店が瞬時に把握できないのです。これが「2次元を超えるデータ分析が不得意」ということです。特に、営業はじめマーケティングや業務改善、研究開発に至るまで、多数の事象との間に隠されていた関係を見抜く眼力が必要になります。その際、Tableauであれば複雑なデータ分析を瞬時にビジュアライズできます。たとえば、「はやい」「やすい」の関係に、「うまい」がどう絡んでいるのかを、とても分かりやすく表すことができます。

第二に、EXCELはデータ整理をする際、煩雑な関数操作が必要です。ここ最近、急に暑くなってきたので「去年までこんなに暑かったかな」などと、ついつい思ってしまいますよね。一念発起して、この感覚が正しいかデータで検証するとしましょう。まず気象庁から過去数年の気温データをダウンロードし、Excelで特定の月日に一致する過去の気温を引っ張ってくる作業が必要になります。LOOKUP、MATCH、INDEX関数を組み合わせて数値抽出することになるので、操作に慣れていたとしても煩雑な作業になります。これに対し、Tableauはこのようなデータ抽出を、関数なしで瞬時のフィルタリング操作で行うことができるのです。

第三に、これが最も不満だったのですが、Excelは双方向性が弱く、コミュニケーションツールとしては使えません。どういうことかというと、先ほどの過去の気温データを引っ張ってくる関数を組めたとしても、他の人に公開して操作してもらったり、意見を交換したりするにはハードルが沢山あるのです。これには、誰でも感覚的に使えるようビジュアルを整えること、多数の人に同時かつ短時間で使えるようWEBにパブリッシュできることが必須条件です。Excelがこうした条件に適応していないことは、データを価値あるものにする上で決定的な弱点です。そもそもが表計算ソフトであり、データビジュアライズ、データコミュニケーションは機能の範囲外なので仕方ないことですが。こうした制限により、これまでデータドリブンの議論に至らず、残念な思いをすることが多々ありました。

Tableauは第三の課題の解決に特化したツールといえます。下記の画像は、試しに僕がTableauで作った、過去4年間の最高・最低気温を抽出できるツールです。(実際にWEB上で操作できるので、使ってみたい方はこちらからどうぞ)

このようにデータをビジュアル化し、WEBにパブリッシュして誰でも使えるようにできることがTableauの最大の長所です。シームレスなデータの見える化が実現できますし、顧客とのデータ相互共有フォーマットとしても使えるなど、データの価値を大きく引き上げることが可能となります。一人のデータ分析結果を一方向に提示するのではなく、皆がデータを触り合いながらアイデアを創出できる環境が手に入るのです。

これまでは、データというものは背後に隠され、誰かの限定的な分析結果でしか触れられませんでした。しかし、今後は誰でもアクセスができ、美しく可視化され、かつクリエイティビティを創発するような形で公開される時代になるでしょう。限られたエスタブリッシュに囲われたデータ分析の時代から、誰もがデータにアクセスできる民主化の時代ともいえます。それに伴い、高度なデータサイエンティストよりも、データビジュアリスト、データコミュニケーターの職能が重要視されるのではないでしょうか。

ここまで書いておいてなんですが、僕はTableauが使えるかどうかは大して重要じゃないと思っています。新しいツールが生まれた時、それを使えるかどうかよりも、「どんなことが実現できるのか」を想像する力が求められると思うのです。それを育むには操作してみるのが一番、というだけの話です。逆に、「何が良いのか分からない」という新しいものへの拒絶は、ただの食わず嫌いで、実際に触ってもいない段階で諦めているケースがほとんどです。聞けば良いのです。触ってみれば良いのです。これはTableauに限った話ではありません。

というわけで、いつものとおりオススメの本を置いておきます。ちょっとでも興味がある方、やってみましょう!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?