「日本語を介さない英語学習」について

 皆さんこんにちは、塾長の飼い猫、ジェリーです。今回は、英語学習法に関して補足的な内容ですが、塾長としてはものすご~~く大事な話だと思っています。できるだけ分かりわすく説明するように務めるので、どうか最後まで聞いてくださいね。特に保護者の皆様、それから学校の先生がたに聞いていただきたい内容です。

 本題に入りますが、いわゆる「日本語を介(かい)さない」英語指導方針について、塾長の見解を述べたいと思います。この教育法はいろいろな言葉で表現されることがあります。「いちいち和訳をしない」「和訳に頼らない」「英語を英語のまま理解する」「英語の語順で理解する」「英語脳をつくる」「英語の回路をつくる」などなど...全て同じ事です。自由英作文やスピーキングの際に、日本語で考えてから英語に直すのではなく、「英語で考えて英語で書く/話す」というのも、ほぼ同じことだと考えてくれていいです。ここからは、以上のことをすべて「日本語を介さない」英語学習方針、と統一して表現させてもらいます。

※「(いちいち)和訳をしない」「和訳に頼らない」「英語を英語のまま理解する」
「英語の語順で理解する」「英語脳をつくる」「英語の回路をつくる」
「英語で考えて英語で書く/話す」etc.
⇒「日本語を介さない」英語学習(教育・指導)方針

 一部の先生がたがこの「日本語を介さない」英語教育を薦める背景として、「日本の英語教育は和訳偏重(わやくへんちょう)で、英語を使うことを想定した教育ではない。だからいつまでたっても日本人は英語が話せない」ということがよく言われます。塾長も、これについて否定はしません。

 詳しく調べたわけではないのですが、塾長が知る限り、世界でも「英語教育を母国語でする」という文化が発達しているのは日本と、日本の教育方針を参考にしている韓国・台湾くらいのようです。世界的に言えば「英語の教育は初めから英語のみで行う」方が主流で、アジアでいえば中国の英語教育もそうみたいです。


日本(および韓国、台湾)…英語教育を母国語で行う
世界標準(中国も含む)…英語教育は英語のみで行う

 さて、結論からいうと塾長はこの「日本語を介さない」英語学習は、少なくとも中高生、大学受験生にとっては非常に危険な物であると思っています。伝統的な日本式の、和訳をきちんとする英語学習をベースにして、徐々に日本語を介さずに英語を理解したり、書く、話すということができる状態を目指すことを、強く推奨します。これは思想とかイデオロギーというよりも、塾長が生徒を見ていて肌で感じていることです。

 「日本語を介さない」英語指導はどちらかというと進学校で行われるケースが多く、実際なかなか英語力が高い生徒も多いです。特に英文を読むスピードに優れている場合が多いですね。いちいち和訳をしないで読むので、早いのは当然です。

 「じゃあ、いいじゃん」と思うかもしれないですが、ちょっと待っていただきたいのです。塾長が見る限り、この「日本語を介さない」英語学習をしている生徒は、不思議とあるレベルから英語力が止まる傾向が非常に強いです。とくに「ものごとを深く考える」力がつかないように思います。

 この傾向は生徒を見ていても感じるし、塾長本人の英語学習の経験からも言えることです。ほぼ間違いないと思います。

 それでは、どうして日本語を介さない英語学習では伸びが止まるのか、その理由として、二つの側面が考えられます。

一つ目は、「文構造と文法事項を理解して和訳をする」ことは非常に高度な思考訓練であり、「日本語を介さない」英語学習はこの貴重な思考力アップの機会をドブに捨てるに等しい、ということ。


「文構造と文法事項を理解して和訳をする」ことは非常に高度な思考訓練であり、「日本語を介さない」英語学習はこの貴重な思考力アップの機会をドブに捨てるに等しい

 二つ目は、同じく「文構造と文法事項を理解して和訳をする」ことは、あらゆる習い事やスポーツでいう「基本」の訓練に相当するものであり、これを疎かにすると決してあるレベル以上に突き抜けることはできない、ということ。


「文構造と文法事項を理解して和訳をする」ことは、あらゆる習い事やスポーツでいう「基本」の訓練に相当するものであり、これを疎かにすると決してあるレベル以上に突き抜けることはできない

 この2つは英語を学ぶ上で常に心にとめておいてほしいポイントです。全く同じ理由で、早すぎる留学にも塾長は基本的に反対です。留学は日本式の英語学習の下地がきちんとできてから行くべきだと思っています。

 日本式の英語学習、つまり、漢文の訓読(くんどく)の流れをくむ「外国語を母国語風に学習する」ことがいかに大切か、ということについては、渡部昇一(わたなべ・しょういち)先生の「英文法を撫(な)でる」をぜひ読んでほしいです。これは本当に名著中の名著ですから、英語学習に関わる人なら必読の本です。

 勘違いしないでいただきたいのですが、決して「日本語を介さないで」英語が理解できることが悪いと言っているのではありません。無論、これはいいことです。大学入試本番で全文を和訳しながら読む時間なんてないし、実践の場で英語を使うときに、いちいち日本語に直して考えている暇なんてありません。渡部昇一先生だって、ご自身が英語やドイツ語で論文を書いたり読んだりするときは、当然日本語は介せずにやっておられたはずです。

 何度も強調したいのは、「英語力が初級から中級のうちは、日本語による理解をきちんとする英語学習を徹底し、徐々に日本語を介さずとも英語をそのまま理解して操れるレベルに飛翔してほしい」ということです。以前の動画で紹介した学習法でいえば、筆者3回、音読5回くらいで日本語による理解が完成すると思います。そのあとは、和訳を考えなくても英語を英語のまま理解して音読をしてくれればバッチリです。将来どこに行っても通用する英語力が身につくと思います。

 英文が「いちいち和訳をしなくても理解できる」ことを誇りに思っている中高生が、もしかしたらいるかもしれません。塾長だってほとんどの洋書は文法とか和訳を考えずにそのまま読みます。しかし、です。
「最初から和訳しなくても理解できる」文を読んでいる、ということは、今の自分の英語力で理解できるものを読んでいるのであって、そのあいだ英語力や思考力はほとんど伸びていないと断言していいと思います。

 難しくて今の自分では読めない英文も、文法的な解説がしっかりなされたうえで和訳を考えれば、理解できていくものです。文構造をああかな、こうかなと自分で考えていくプロセスで、英語力というより学力、思考力そのものが伸びていくのです。これは日本語の古文や、漢文でも全く同じことです。ものすごく極端な話をすると、”和訳しないと理解できないような英文”を読まないと、英語力は伸びないのです。
「英語は英語のまま理解しよう!それがグローバルスタンダードな英語教育だ!」というのは、若い日本人の思考力を奪う、亡国の教育法だと思います。浅薄(せんぱく)な「実践向きの英語力」なんてものを得るために、学力の根本を犠牲にしてはいけないですね。

 一言(ひとこと)で片づけてしまうと、「日本語を介さない英語学習法」は、フィーリングに頼った思考停止の勉強法です。以前の学習法に関する動画でも、筆写・音読の際には必ず頭を使っておこなうように、脳が止まったただの作業にならないように、と何回も繰り返したと思います。あまり言いたくありませんが、英語の勉強は、学習法に気を付けないと、ややもすると頭が劣化する傾向が強いような気がしますから、どうか皆さんは日本式の英語教育にこだわってほしいです。

 ここまで聞いて下さって、このチャンネルで、できるだけきっちり丁寧に文法や文構造の解説をしている理由がわかってくれましたでしょうか?よく「動画で扱っている英文が全く読めない、わからない」っていうコメントをもらうのですが、そういう人こそ、希望をもって「日本語を介した」精読のトレーニングに励んでほしいですね。文法と長文読解は別物ではなくて、「文法が分かっていないと、難しい英文は読んだり書いたりできない」ということを、忘れないでください。

 というわけで、できるだけシンプルにしようと、これでも言いたいことの三分の二は端折(はしょ)ったのですが、伝わったでしょうか?なかなか一言(ひとこと)でまとめられないので、よく分からなかったという人は、この動画を3回くりかえし見て、國弘正雄(くにひろ・まさお)先生の「國弘流 英語の話し方」と渡部昇一先生の「英文法を撫(な)でる」を2回ずつ読んだ後で、コメント欄に質問をくださいね。

 もちろん半分冗談ですので、そんなことしなくてもコメントはどうぞ自由に書き込んでください!チャンネル登録と高評価も、ぜひよろしくお願いします。それでは、最後までご覧いただき、ありがとうございました!



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