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インバウンド観光事業、コロナ禍をどう乗り越えた!? #テンカイズ

インバウンド、日本を訪れる外国人旅行者。新型コロナウイルスの影響で今は制限を余儀なくされていますが、近年、中国やヨーロッパを中心に右肩上がりで上昇し続けてきました。インバウンドの人々に日本を味わってもらうことは、町おこしはもちろん、ビジネスの世界でも大きな市場となり続けています。「日本中を楽しみ尽くす、Amazingな人生に。」そんなビジョンを掲げる企業に注目します。


1. インバウンド100%特化の観光事業、WAmazing

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宇賀:今夜のゲストはWAmazing株式会社 代表取締役CEOの加藤史子さんです。よろしくお願いします。

加藤:よろしくお願いします。

宇賀:「WAmaging」って、日本の「和」と「Amazing」を合わせた?

加藤:日本に来られる方が近年増えているので、その方々にAmazingな体験をしていただけるサービスを提供しようということで、社名とサービス名を「WAmaging」にしました。

宇賀:どんな事業をされているんですか?

加藤:コロナ以前は、日本全国の国際便が定期就航している空港で、無料のSIMカードを配布していました。それで外国人の方は、自分のスマホで日本のインターネットに繋げられるようになります。それをインセンティブに、その人たちにホテルやアクティビティを紹介したり、電車の切符を売ったりする事業を展開していました。

宇賀:いつ頃スタートされたんですか?

加藤:サービススタートは2017年2月です。
コロナの被害が深刻化するタイミングまで丸3年間、そうしたサービスを提供してました。

浜田:それまでは観光客数が伸びていたので、事業も順調だったんですよね。

宇賀:1年前からは?

加藤:急激に落ちました。
特にベンチャーは、人もお金も豊富ではないので「集中するのが正しい」と言われます。我々の場合、日本人の旅行は一切扱わず、日本に来る外国人に100%特化していたんです。なのでコロナ禍になると入国がそもそもできなくなり、2月くらいからかなり危機感を募らせていましたが、3月はもうほとんどお客様がいらっしゃらず、4月にはほぼゼロという状態でした。

浜田:つまり売り上げがゼロ?

加藤:コロナが来る直前の1月の売り上げを100%とすると、4月には98%ダウンしていました。


2. 観光事業が厳しかったコロナ禍を、どう乗り越えた?

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浜田:その中で「社員の雇用を守る」と宣言されていましたが、どのように?

加藤:もちろん会社存続のための整理解雇も検討はしました。ただインバウンド需要は必ず戻るだろうと。戻った時に、私と周囲の経営陣数人だけでは事業を回していけません。それなら、すでに会社のビジョンに共感して入社してくれた今の仲間たちの雇用を維持して、いずれは来るであろう需要回復時に備えたいというのが、雇用を維持したい一番の理由でした。

やり方についてはまず、4月に政府が雇用調整助成金の特例措置というのを公表したので、利用しました。
またDXやECなど、コロナ禍でむしろ調子の良いベンチャー企業もたくさんあったので、そうした企業に出向してもらったり。別のところにいわば「出稼ぎ」に行ってもらうということを、5月1日からはスタートしましたね。

浜田:新しく翻訳事業も始めたんですよね?

加藤:うちは100人以上社員がいる中で、半分くらいが外国籍の方なんです。WAmazingの中では大活躍なのですが、日本の一般的な企業になると、外国人であることの強みを出せない。いくら日本語も外国語も堪能だったとしても、100%日本人向けにサービスを提供している日本企業側からすれば、あえて外国人じゃなくてもいいという意向もあったんです。出向先と弊社社員の希望をマッチングしていく際に気づきました。

そんな背景から、外国人スタッフは出向が決まりにくかった。
彼らの語学力を生かしてお給料を稼げるよう、観光分野に限らず、翻訳事業を新たにスタートしました。

宇賀今いる人材を守るための策だったんですね。

加藤:はい。そのためには給料分の資金確保をしなければならないので、他の新規事業も立ち上げました。
またコストを極力カットするために、結構広いオフィスを新橋に借りていたんですが、そこも全面的に退却しましたね。4月末でした。

宇賀:状況が刻々と変わっていく中でも、早い決断が迫られますね。

加藤:売り上げがゼロになると、サービスを回す、あるいは人を雇っているだけでもお金が出ていく。いわゆる赤字垂れ流し状態になります。
1日あたりいくら出て行っているんだろうと計算してみたら、150万円だったんです。つまり私の決断が1日遅くなれば、150万円損する。WAmagingという会社の企業寿命が、刻々と短くなっていくんです。
「とりあえず早く決めよう」。それは強く意識していました。


3. 厳しい状況下で持っていたマインドは「好況よし、不況さらによし」

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宇賀:2020年って、本来なら一番いい年だったわけですよね!オリンピックもあって。
2020年に照準を合わせていたのに、コロナでダメージを追った方も多いですが、加藤さんはどんなマインドで乗り越えたんですか?

加藤:2〜3月に松下幸之助さんの『不況に克つ12の知恵』という本を勧められて、春先は聖書のように枕元にその本を置いて、毎晩読んでいました。


その本にも書いてあるのが、「好況よし、不況さらによし」
不況の時こそ自分の事業を見直す良いチャンスであったり、組織の足腰を強くすることができます。「不況だからしょうがない」じゃなく、「やれることは何でもあるはずだ!」という前向きな気持ちで常にいろという言葉があって、本当にその通りだなと。

浜田:見直した結果、先ほどの新規事業もそうですが、新しいアイデアは生まれました?

加藤:コロナ禍で投資を掘るタイプのプラットフォーム事業、観光エージェント事業を一度ストップして、短期間で収益が上がる行政との共同事業に力を入れた結果、実は今季WAmagingは創業以来の最大売上・利益になりました。
今までは「集中しなくては」とインバウンド旅行者向けの事業に投資をしてきましたが、コロナを機に事業計画を多角化できた。コロナが収まっても続けられる、伸ばしていく事業の柱がもう1〜2本できて、事業ポートフォリオとしてより安定できました


4. コロナを超えて生き残る観光は、五感に訴える体験

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宇賀:このコロナの影響によって、今後の旅の仕方、旅に対する考え方は変わっていくんでしょうか。

加藤:変わると思います。
コロナ禍でオンラインになって、「むしろオンラインがいいじゃん!」というものと、「これはリアルじゃないとつまらない」というものが明確に分かれましたよね。

オンラインだとどうしても聴覚と視覚優先になりますが、旅は触覚、味覚、嗅覚を含め五感に訴えるものです。バーチャルに置き換えても同じような体験ができる観光を提供する地域は、もしかしたら廃れてしまうかもしれません。リアルならではの五感に訴えられる価値を提供できる地域の旅行は、伸びるんじゃないかな。

宇賀:最後に、加藤さんの今後の展開を教えてください!

加藤:やりたいことはたくさんあるのですが、一番は地方観光をやりたいです。
もともと東京、大阪、京都は大人気だったんですが、人気すぎて密になってしまい、「オーバーツーリズム」「観光公害」などと指摘されるようになりました。その地域の住民にとっては迷惑だったり、ゴミや騒音の問題など、むしろマイナス面が出てきてしまったんです。

コロナを機に、観光の分散化を実現したいです。
東京、大阪、京都ばかりではなく今まで誰も行っていないような場所に、みなさんの興味が湧くチャンスだと思うので。そんな地域こそ観光客によって雇用が生まれたり、消費が回ったりするので、迷惑どころかウェルカムなんですよね。今まで人が訪れていなかったような地域とのマッチングをやりたいです。

浜田:それは地方にとっても大事なことですよね。

加藤:新たな旅のスタイルとして期待しています!

宇賀:楽しみですね。ありがとうございました!


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