越境するテクノロジー

株式会社テンカメレ 代表取締役

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最近の記事

実効再生産数とは何か? 〜数式が苦手な人のための超概要〜

 最近コロナ関連のニュースでよく耳にする実効再生産数という言葉。ネット上で専門家による講演会が開催される[1]など色々な情報があるのですが、残念ながら数式が苦手な人には敷居が高いものが多いです。そこでこの記事では数式を極力使わないで実効再生産数の概要を説明してみたいと思います。 1.実効再生産数とは何か? 1人の感染者が新たに発生させる感染者(ひらたく言うとうつす人数)の平均は再生産数と呼ばれ、ウィルスの感染力を示す指標として使われています。  再生産数は当然ながらウィル

    • コロナ対策で話題にのぼる数理モデルとは何か?

       コロナ関連のニュースをみていると「実効再生産数」、「基本再生産数」など、感染症の数理モデルで使われる耳慣れない専門用語が登場します。  今後もしばらくは耳にするであろうこれらの専門用語を理解するために、感染症の数理モデルについて調べてみました。  「コロナ関連のニュースに出てくる専門用語の意味がよくわからん。。」と思っている方のお役に立てれば幸いです。 1 感染症の特徴  感染症は放置しておくと拡大していくという厄介な性質を持っています。  下記グラフは免疫を持たな

      • 100日目のnoteと父のノート

         父が生前に買ったノートです。  遺品整理をしていたら真っさらな状態で出てきたのでもらい受けました。  数年間真っさらのまま保存していたのですが「ノートなんだから使った方がいいか」と思い今回noteを書き始めるにあたってアイデア帳として使うことにしました。  上の方に「越境するテクノロジー」というタイトルを書いたのは私です、下の方に「26.11.20サングリーンで二冊」と書いたのは父、ノート買った時のメモ書きです。  そう、これは親子二世代の共同作業ノートです、親子と

        • 3年前に面白いと思った本

           「これまで読んだ本で面白かったもの」という3年前のメモを発見したので読み返したら「あー、これ確かに面白かった!」と自分的には納得のラインナップでした。  同じ人間ですから当たり前と言えば当たり前ですが「3年前の自分、ありがとう」という気持ちになったのでみなさんと共有させていただきます。 殺人ザルはいかにして経済に目覚めたか?―― ヒトの進化からみた経済学 何で世の中いまの仕組みになってるのか、普段当たり前と思ってる経済、司法の仕組みの成り立ちを独自の視点で語る、小難しい

        実効再生産数とは何か? 〜数式が苦手な人のための超概要〜

          意思決定の謎の部分

           意思決定っていうと目的を達成するための「最適な行動選択」という部分が多く語られてますが「そもそもその目的はどうやって決まるの」という部分はあまり語られることがありません。  目的というのは、平たくいうとその人がやりたい事です。ちょっとかっこよく選好と言ったりします。 選好は人それぞれだから論ずるものではない。選好を所与として、その達成のための最適な行動を情報に基づいて選択するのが合理的選択である。  という考えもありますが、これだと選好がなんであろうが(例えば反社会的

          意思決定の謎の部分

          AIの説明になってない説明

           最近説明可能なAIというのが話題に上ります。  AIの説明って、説明になってないものがそれらしく語られることがあるので「あー、こういう風に説明できるのか」と誤解してしまうと説明可能なAIを簡単なものだと誤解する可能性があるので注意が必要です。 説明になってない説明の例 その例として、一時期よく見かけたディープラーニングの説明があります。 質問 : ディープラーニングはどうやって画像が人間の顔だと判断するのですか? 答え : ディープラーニングは画像からまず"耳"、"

          AIの説明になってない説明

          アレのパラドックス

           アレのパラドックスをご存知でしょうか?  モーリス・アレというフランスの学者が見つけたのでアレのパラドックスと呼ばれているものです。ちょっとややこしくて、私はすぐに忘れてしまうので、腹落ちするために文書にしてみました。 アレのパラドックス アレは1953年にニューヨークで行われた会議で参加者にこんな質問をしました。 質問その1 どっちのくじを引きますか? くじA : 2.5億円 10% / 5千万円 89% / 外れ 1% くじB : 5千万円 100% この質問

          アレのパラドックス

          年末に読む2冊の21世紀論

           21世紀もすでに青年期に入る年月が経過しました。  しかし、私は未だに21世紀という言葉が纏っている未来感を取り去ることができずにいます。  もうそろそろ21世紀に慣れないといかんなと思っていたら、最近、21世紀に生きる人類に対するメッセージが入った本が2冊出版されました。  ひとつは『サピエンス全史』ですっかりおなじみになった ユヴァル・ノア・ハラリによる「21 Lessons: 21世紀の人類のための21の思考」  もうひとつは『言語を生みだす本能』、『心の仕組

          年末に読む2冊の21世紀論

          【読書日記】40人の神経科学者に脳のいちばん面白いところを聞いてみた

           著者は「脳はいいかげんにできている」「快感回路」など一般向けのわかりやすい脳神経科学の著書で定評のあるデイヴィッド・J・リンデン。  その著者が神経科学者達に「脳の働きについて、世の中に何か話すとしたら、いちばんかたりたいことは?」と聞いた時に返ってた話をもとに40人に自分が一番伝えたい事を書いたのがこの本です。  学者さんが書いたものだと堅苦しいんじゃない?との心配はご無用、著者はこの質問を一杯やってほろ酔い加減のとこで学者さんに聞いてますから、小難しさは無く、しかも

          【読書日記】40人の神経科学者に脳のいちばん面白いところを聞いてみた

          メリーの謎

          メリークリスマス!  メリー? メリーって何ですか?  「メリークリスマス」でしか出会ったことないです。  メリーの使い勝手の悪さは、ハッピーと対決させると明らかになります。 クリスマス勝負 まず最初の勝負はクリスマス。 「ハッピークリスマス!」 「メリークリスマス!」  これは互角ですね、どっちも「クリスマスだなぁ」感を醸し出します。 新年勝負 第二回戦はクリスマスからほんの1週間でやってくる新年。 「ハッピーニューイヤー!」 「メリーニューイヤー!」

          【読書日記】科学の発見

           現在の成功を基準に過去を裁くことは「ウィッグ史観」と呼ばれ、歴史学では禁じ手だそうです。  この本は現代科学の視点でアリストテレス、プラトンなどにはじまる過去の有名人の業績を分析しています。著者は現代科学の視点で見るとプラトンは詩人であり科学ではないと論じます。   著者のスティーヴン・ワインバーグはノーべル物理学賞を受賞した物理学者です。  この本を読むと、今私たちが科学と呼んでいるものがどのように構築されていったのか、そこに至るまでに私たち人間はどんな考え方を身に

          【読書日記】科学の発見

          モンティ・ホール問題を簡単に説明してみる

           モンティ・ホール問題をご存知でしょうか?  正解を聞いても直感的に理解しがたいので、ジレンマとかパラドックスとか言われている問題です。  今日はモンティ・ホール問題と、それを直感的に理解できる問題に変形してみたものを紹介します。 モンティ・ホール問題  こちらがオリジナルのモンティ・ホール問題です。 プレーヤーの前に閉じた3つのドアがあって、1つのドアの後ろには景品の新車が、2つのドアの後ろには、はずれを意味するヤギがいる。プレーヤーは新車のドアを当てると新車がもら

          モンティ・ホール問題を簡単に説明してみる

          出題の仕方で正解率が変わるクイズ

           質問の根っこは同じなのに、背景変えると正解率が変わるというお話をしてみます。 難しい出題の仕方 今あなたの目の前に下記4つのカードがあります。  カードの片側には数字が、反対側にはアルファベットが書かれていて、全てのカードは下記ルールに従う必要があります。 19以下の数字が書かれたカードの裏側には必ずWが書いてある  ここで問題です「上の4枚のカード全てがルールに従っているかを確認するためには、どのカードを裏返す必要があるでしょう?」 簡単な出題の仕方 今あなた

          出題の仕方で正解率が変わるクイズ

          座席問題 数式苦手でも解ける確率の難問

           難問なんだけど数式使わなくても正解にたどり着ける、ちょっと面白い確率の問題を見つけたので紹介してみます。 座席問題 あなたが予約していたフライトが満席になりました。全100席指定なので予約した人はみんな座席表の書かれたチケットを持っています。  出発の30分前、最初に搭乗した乗客は指定席だということを知らず、自分の座りたい席に座ってしまいました。  あなた含めた残りの99人は遠慮がち、かつ適当な人々で「自分のチケットに書いてある席に座ろうとするが、もしそこに誰か座って

          座席問題 数式苦手でも解ける確率の難問

          左利きの憂鬱

           私は左利きです。ストレスが多いから寿命が短いなんて噂もありますが、左利きであることでストレスを感じたことはありません。  でも、これまでの人生思い返すと右利きの人では体験出来ない葛藤を乗り越えてきてるのは確かですね。  今日はその葛藤をお話してみたいと思います。 幼少期 昔は箸を左で持つのは行儀が悪いとか言って右に矯正させられることも多かったようですが、私はそこは気にしない家庭に育ったので生まれてからこれまで、ずっと箸は左手です。  でも字を書くのは右です。小さい頃

          陪審員が騙された確率の誤謬

           確率の誤用の例としてよく引き合いに出されるコリンズ裁判というのがあります。この裁判では、陪審員が確率の誤用に騙されて有罪の判断をしてしまっています。 コリンズ裁判 アメリカで発生した強盗事件、目撃者から下記の証言が得られました。 犯人は黄色い車に乗った二人組、一人は顎髭と口髭をたくわえた黒人男性、もう一人はブロンドでポニーテールの白人女性。  警察はこの特徴を元に都市全域に大捜査網を張り、数日後証言にある特徴を持つ二人組を捕まえました。二人は容疑を否認しましたが、検察

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