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【読書日記】MONEY もう一度学ぶお金のしくみ

  仮想通貨、MMT、Facebookのリブラ、などお金をめぐる時事ネタが飛び交う昨今「お金とは何か?」その根っこのとこを把握するのに最適な本です。

 著者のチャールズ・ウィーランは難しい題材のわかりやすい説明で定評があり、経済学、統計学の著作で好評を博しています。 

 この本も、実例を交えたわかりやすい説明で、前提知識の無い読者でも楽しく読み進めるうちに、お金の仕組みを理解できる構成になっています。

 中には「え!普通のことだと思ってたけど、そんな大変な事だったの?」というのもあります。その一例として「価値の保存」について紹介してみたいと思います。

お金の機能「価値保存」

 「価値尺度」「交換手段」「価値保存」がお金の三大機能と呼ばれています。この中で「価値保存」って当たり前の事と思ってしまいますが、これは非常に重要であり、その維持に非常にたくさんの労力が費やされています。

 お金の「価値保存」というのは「今とほぼ同じ価値がこの先もずっと続く」という事です、極端な値上がりも、極端な値下がりもだめです。

 お金の「価値保存」が実現されるという確信をみんなが持つことは、経済活動を成り立たせる非常に重要なポイントです。

われわれの経済システムが最もうまく働くのは、平均物価水準が将来的にも既知のやり方で ーできれば非常に安定してー 動くことを、製造者、消費者、雇用者、被保険者が確信できる場合だ。
ミルトン・フリードマン (ノーベル経済学賞の20世紀を代表する経済学者)

 急激な値下がりも困りますが、急激な値上がりも同じくらい困ります。

お金の価値が急激に下がると、老後に備えて貯蓄してた人は困ってしまいます。逆にお金の価値が急激に上がると、住宅ローンとかの借金してた人は返済できなくなってしまいます。

 お金の価値を一定に維持するのは思ってるよりはるかに難しい作業です。

 その判断のための指標として使われる消費者物価指数(CPI)の計測には多くの商品の現在の価格を計測する必要があります。またその価格上昇がインフレによるものなのか?製品の性能向上によるものなのか?の判断も必要です。また特定の商品の物価が上がった場合、その商品が買われなくなる可能性も考慮する必要があります。

 お金の価値を一定に維持する役割を担っているのが中央銀行です。中央銀行の役割が「物価安定と経済成長」というのは異論を挟む人はいないのですが、そのやり方についてはいろんな意見があります。中央銀行が行った一つのオペレーションに対して「中央銀行のやってるのは余計なことだ、何もしない方がいい」という人もいれば「中央銀行の介入は手ぬるい」という意見もありで、王道の手法が無い中、批判されながらやってます。

といったかんじのお話が、ここで私がやった出来の悪い要約とは比べ物にならないほどわかりやすく、示唆に富んだ文で展開されています。

お金について知ると色々な役に立つ

 最近は負債論、MMT、Facebookのリブラなど、お金をめぐる新しい理論・サービスがどんどん出現しています。これらについて議論するためにはお金とは何か?を把握することは非常に重要です、本書はその入り口として最適であると思います。この本でお金の概要しておくと、様々な理論・サービスについて考える際の基盤になると思います。


Photo by Dmitry Demidko on Unsplash

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