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絶望の国で絶望する若者たち。

もはや日本は「格差社会」ではなく階級社会として移行している。アンダークラスと呼ばれる平均年収186万の人人が930万人で就業者の15%に達する。しかしこの中には、無業者は失業者は含まれていない。

2018年暮れに本書は刊行されたが、大変衝撃的なレポートだ。
そして今日に至るまで、この状況はより深刻化する中で、何ら解決策も提示されないまま、3年が経過している。

アンダークラスと呼ばれる人たちの多くは、暗い子ども時代を送った人が多い。いじめ経験3割、不登校経験1割、中退経験者も多く、4人に1人が健康状態が悪い。絶望的な気持を経験し、自分を無価値とし、過半数が将来に不安を抱いている。不幸と絶望で打つ傾向にある。これは社会調査から得られた傾向だが、決して遠い世界の話ではない。最近よく話を聞く若者の多くも健康状態が悪く、絶望的なキモチを経験している。

本書から感じるのは、これまで日本社会に蔓延してきた「自己責任論」では格差は広がる一方であるから、格差が階級となっていることを直視しなければ問題解決にはつながらない。

アンダークラスがこのまま放置されるなら、日本社会は間違いなく危機的な状況を迎えるだろう。少子高齢化はいっそう進行化する。一部のアンダークラスは子どもを産み育てるがその子どもに教育機会を保障することは難しい。彼ら・彼女らはやがて老後を迎えるが、その生活を個人の自助努力に任せるなら、悲惨な結果を生むのは明きらかだし、社会保障によって生活を支えるには莫大な財源が必要となる。
そもそも失業者・無業者を加えれば就業可能人口の2割近くにも達する人々不安と苦痛に満ちた人々が不安と苦痛に満ちた人生を送るような社会は明らかに病んだ社会であり、それ自体で社会は危機的状態にあると言わねばならない。

筆者は、その打開策として「政治」をあげている。アンダークラスに属する人達が、政治に不満を持っていると分析し、政治的に連帯できる可能性について言及。「人々の不満と不幸を組織化することに既存政党は成功していない。人々の不満と不幸には行き場が無く人々を支持政党無しへ、あるいは無関心へと導く」のだという。そしてアンダークラスが激増する「格差の縮小と貧困の解消さえを明確に宣言する新しい政治勢力」の必要性を訴える。

しかし政治を待っていて状況はよくなるとは決して思えない。最低賃金の引き上げやワークシェアリングなど「賃金格差」を是正することももちろん大切だろう。しかし個人的に大きく注目するのは「生育環境に起因する機会の不平等についてどうのように是正すべきなのか」だ。

これについては、宮本太郎が「ベーシックアセット」という考え方を提案している。今年4月には宮本太郎は「貧困・介護・育児の政治」という本を書いている。これについては近いうちに読んでみたい。

最近出会う10代後半の若者の多くが、何故ここまでに、と思うほどに無気力であり絶望感を吐露する。中には希死念慮をほのめかす若者も多い。ひとりの親として、どうすれば若者にとって「この社会は生きるに値する」と思える環境を用意できるのか。切実な思いが今、仕事をするモチベーションとなっている。


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