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涙隠してハム太郎隠さず

秋のリボンちゃん「ちゅーちゅーのめいげちゅでちゅわ!」

秋になると毎年言っているが、毎回大した反応もないので、本当に面白くないのだろう。
今年で見納めか。寂しいね、リボンちゃん…

とっとこハム太郎の話

僕(当時小3)はすべての生命を慈しんでいた。
人が殺し合うことの無意味さ、家畜を食べることへの感謝、自然界がもたらす食物連鎖の壮大な美しさ等、生命の尊さを過剰に感じていた!!

慈しみエピソード1
鳥の図鑑を親に買ってもらってすごく愛読していたが、コラム欄に石油まみれの鳥が載っていて、「鳥さん…!くそっ…!くそっ…!」と泣いた。(海岸掃除もしに行った)

世間は空前のハムスターブーム!!
あの子もこの子もハムスターを飼っていて、町で一番太っていた友だち(あだ名:おいもパーティー)も飼っていたよ。でもおいもパーティー、その大きなお尻で……誤って…ソファ…ハムちゃん…まるで…虎の絨毯……悲しい事故だったね。

みんなが飼いまくるハムスター、当然僕も少しは興味があったが、それよりも生命への畏敬の念が勝った。ハムスターの生殺与奪の権を握らせていただくことへのおこがましさのようなものを感じていたため、僕が生き物を飼うことはなかった。
しかし、やはり気になるハムスター。そんな気持ちを抱く僕が、とっとこハム太郎を見始めるのは時間の問題であった。

『とっとこハム太郎のアニメを見るのはダサい。』

友だちは皆、口にはしないものの、どこかそのような気持ちを持っていた。(ように感じていた)
そのため僕は親にも隠れて、家にあった小さいポータブルテレビと一緒に毛布に潜って見ていた。テレビを毛布で包むとアンテナが途端に弱くなり、ハム太郎なのか安藤優子アナなのか分からなくなって困る。覚えてないけど、ちゃんとハム太郎を見れていたということはアンテナだけ外に出していたのだろう。

頭隠してアンテナ隠さず。だ。

慈しみエピソード2
苦手な食べ物を残して捨てる時に、心が痛みすぎて号泣し、そのまま熱が出て学校を休んだ


僕は本を読むのが得意ではないため、読書の時間にいつも図鑑等を眺めていた。その時開いた動物図鑑にはハムスターも載っていた。
「なるほど、これがホンダちゃんが飼ってるゴールデンハムスターで、これがおいもパーティーのジャンガリアンか!」

そして、図鑑曰くハムスターの寿命は2年〜3年らしい。

僕は焦った。
10年程度生きた僕ですら生きる目的なんて分かっていないのに、ハムスターにはこんなに時間がないのか。
ハム太郎はそのことを知っているのだろうかと不安になった。ハム太郎にとって生きる意味とは?ロコちゃんに飼われ続けて、はむちゃんずの皆んなと駄弁り続けることが彼の本当の幸せなのだろうかと。
ハム太郎の幸せを考えてみたが、見当もつかない。

図鑑には彼が助かる方法が載っていないだろうか。
藁にもすがる気持ちで図鑑を調べると、ハムスターは「コウビ」をすると赤ちゃんハムスターが産まれるようだ。

これだ。

ポータブルテレビを用意する。
毛布に潜る。
アンテナを伸ばし、外に出す。
そして叫ぶ

「ハム太郎ーー!!コウビしてーー!!早くー!!」

僕は毛布の中で人知れず泣いた。
涙隠してハム太郎隠さず。だ。


この記事は児童期における偏った知識による奮闘を描いたものであり、ひとつの生き方を強要する意図ではありません。多種多様な価値観や生き方を尊重し合うべきであるよね、ハム太郎。


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