2019年ウィンブルドン決勝 ジョコビッチの戦略

今年のウィンブルドン決勝では、ノバク・ジョコビッチがロジャー・フェデラーを7-6(5), 1-6, 7-6(4), 4-6, 13-12(3) の激戦を制し今大会5度目の優勝を果たした。この試合のファイナルセットでジョコビッチは、ゲームカウント7-8とリードを許し、フェデラーのサービスゲーム15-40で2本のマッチポイントをしのぎ、その後のゲームカウント11-11では、自身のサービスゲームで2本のブレークポイントを握られたが、それらを挽回しての逆転勝利だった。

試合全体の統計結果では、フェデラーの方が優っていたが、重要な局面においては、ジョコビッチが試合を支配していた。ジョコビッチは、得意とするストローク戦でフェデラーにネットプレーをさせない戦略で第1・3・5セットの3セットすべてのタイブレークを奪った。

フェデラーの試合全体のネットプレ一の統計結果は素晴らしかったが、要所要所をみればジョコビッチが勝利したことは明らかなことだとわかる。

この試合フェデラーは、サーブ&ボレーで15回中13度ポイントを奪い、ベースラインからのネットプレーにおいては、65本中51回ポイントを獲得している。しかし、3回のタイブレークにおいては、合計で33ポイントあったが、フェデラーは2回しかネットに出ていない。

この3回のタイブレークでは、33ポイント中20ポイント(60%)はジョコビッチが得意とするラリー戦となった。この20ポイントの内訳としては、ジョコビッチが16ポイント獲得したのに対し、フェデラーは、たったの4ポイント獲得にとどまり、ラリー数が10回以上のポイントは、8回あったがジョコビッチが6回ポイントを獲得した。ネットプレーだけを見ても、この3回のタイブレークの中では、ジョコビッチが3回ポイントを獲得しているのに対しフェデラーは1回しか奪っていない。

第1・3・5セットにおけるタイブレークまでのラリー数平均とタイブレークでのラリー数平均を比較してみると、ジョコビッチがいかにしてフェデラーを自分が得意とするラリー戦へと持ち込んだかがわかる。

第1セット 平均ラリー数
タイブレークまで 4.2本
タイブレーク   6.4本

第3セット 平均ラリー数
タイブレークまで 4.0本
タイブレーク   5.6本

第5セット 平均ラリー数
タイブレークまで 4.4本
タイブレーク   5.6本

第5セットでフェデラーが8-7でリードし、40-15で2本のマッチポイントがあった場面では、フェデラーは、4本連続でポイントを失い、ジョコビッチにサービスブレークを許した。その4本中の3本は、両者ベースラインからのラリー戦のものである。

この試合全体で合計422ポイントあったが、サービス、及びリターン後にラリー戦になった割合は、全体の約半数(46%)にのぼる。試合全体を通して、ジョコビッチがフェデラーのネットプレーを封じることに成功していた時には、ジョコビッチがポイントの主導権を握っていた場面が多くみられた。

ベースラインでのラリー戦のポイント取得率
ジョコビッチ 59%(114/194)
フェデラー  41%(80/194)

この決勝戦では、3回のタイブレークの中の多くの場面においてジョコビッチが、フェデラーにネットプレーを許さず、ラリー戦に持ち込んだことがジョコビッチ勝利の大きな要因だといえる。


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