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どんな作品も自身の肖像。

私の場合、自身が運営する出版業だけで食べて行ければそれが一番ですが、そううまくいった試しはありません。

だから、クライアント仕事、つまり他人様の制作物を受注してお金を稼ぎ、それを印刷代につぎ込んでは本を作るという自転車操業です。

クライアント仕事は、引き受けて楽しい企画のこともありますが、だいたいは正直、苦痛です。

それなのに、根を詰める性分が災いして、上手く手を抜けません。
他人の制作物で精根尽き果てて何やってんだか・・・、と頭を抱えることもしばしばです。

そんなときに思い出すのが、この言葉。
陶芸家の松崎芙美子さんをインタビューしたときに伺いました。

作り手にとって一番重要なのは、自分が自分を裏切っていないか、本当に作りたいものを作っているか、ということなんです。

「食べるためには売れるものを作る」という言い方をする人がいますね。

私だって作ったものが売れなくては困りますから、そのこと自体を否定する気は毛頭ありません。

しかし、そういう言い訳をしつつ作ったものにしろ、結局、それはその人の肖像なんです。

妥協したら妥協したなりの自分が、そこにはいます。

「手の間」2009年 vol.7/「創作し続ける人生 陶芸家 松崎芙美子インタビュー」より


ストンと腑に落ちました。
そして、自分が少し恥ずかしくなったことを覚えています。
仕事の品格は気骨が作るのだと、身に染みた言葉です。

(写真)今もクリエイティブな感性は輝きを放つ。松崎氏の自宅にて(2022年撮影)

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