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マレー半島縦断の旅 2 マレーシア編


シンガポールの中心を出発したバスは、コーズウェイという国境の大きな橋を渡りマレーシア、ジョホールバルのイミグレーションに着いた。

シンガポール側のイミグレーションでは1時間半も大行列に並んだのに、出国の時とは真逆の古い建物で、待ち時間もなかった。

無事マレーシアに入国した。
少し蒸し暑くなってきた。
クアラルンプールを目指す。
再びバスが走り出した頃、スコールが降ってきた。


国境から2時間も走ると、バスは途中のドライブインで止まった。
日本のサービスエリアと同じような雰囲気だ。

屋台で働いている女の子がヒジャブ(イスラム教徒の女性が頭に被る布)を被っていて、マレーシアに入ったこと実感した。
美味しそうなハンバーガーの屋台があったけど、おれはまだマレーシアの通貨を持っていなかった。
クアラルンプールのバスターミナルで両替しようと思っていた。
外で煙草だけ吸っておく。

ドライブイン 周りには他になにもなさそう


再びバスで走る。
シンガポールを出てもう4時間か、アニマルプラネット系のチャンネルで見たような熱帯雨林の間を縫うフリーウェイをバスはひたすらに走ってる。

雨はもう止んでいる。もう外はもう真っ暗。
街灯もなにもないけど、空と木々の境目は確認できる。

リクライニングを倒して車窓を見ながら、ただバスに揺られている。
なんて贅沢な時間なんだろう。



大都市 クアラルンプール

クアラルンプールのTBSバスターミナルに着いた頃には23時を回っていた。
シンガポールを15時に出たから、8時間かかったことになる。

バスターミナルはとても立派だった。
このバスターミナルから各地方と繋ぐバスが出入りしているんだろう。
夜も遅いのにバスを待つ人で溢れていた。

マレーシアの女性はほとんどイスラムで、ヒジャブを被っている。
東京でも、アジアの他の国でもよく見かけることはあるけど、これだけたくさんのイスラムの女性を目にするとすこし圧倒されるし、遠い異国に来たことを感じさせられた。

色とりどりのヒジャブを被ったマレーシアの女性たちは目の前の景色を華やかに彩っていた。


まずは両替。こんな大きなバスターミナルだからそのへんにあるだろうと思ってしばらく歩きまわったがこの時間にやっている両替屋はなかった。

TBSは電車の駅と直結していた。
とりあえず駅まで行ってみると、クレジットカードが使えたのでクアラルンプールの中心駅、KLセントラルまで行く。

10分くらいでKLセントラルに着いた。
ここからホテルがある ブキッビンタン という街を目指すのだけど、ここから乗る路線ではクレジットカードが使えず、駅員に訪ねるも駅の両替所ももう全てクローズしていると言われた。

近くのATMでお金を下ろそうともしてみたけど、何回チャレンジしてもなぜか下ろせず、一文無しで立ち往生。

仕方ないので歩いて目指そうかとも思った(徒歩1時間)ところで、駅前でタクシーの運転手に声をかけられた。

「どこまで?」というので「乗りたいんだけどクレジットカード使える?」というと運転手のおっさんは首を横に振る。

「ブキビンタンまで行きたいんだけど、マレーシアのお金持ってないんだよね。シンガポールドルで乗せてくれない?」と交渉するとおっさんはすこし考えて、「シンガポールドルなら、11ドル(900円くらい)ならいいぞ!」
と話に乗ってきた。言ってみるもんだ。


夜中は道が空いていて、タクシーはガンガンに飛ばす。
東南アジアのタクシーは大体運転が荒い。

15分もするとブキッビンタンの駅前に着いた。
11ドルと1ドルのチップをあげて、ありがとうと言うとおっさんは嬉しそうに去っていった。


そして運良く駅前の交差点に開いている両替屋を見つけた。
余っていたシンガポールドルと日本円を両替する。
マレーシアの通貨はリンギット。発音はリンギ。
1リンギが25円くらい。


ブキッビンタンの交差点は夜中でもすごい人で歩道でバンドがガンガン演奏して、すごい数の人が立ち止まっていた。
シンガポールとは違うアジア感のある雑多な都会だった。
おれの予約した宿はこの交差点からすぐの所だ。

ブキッビンタン駅前の交差点 このマクドナルドの斜め前くらいのホテルに泊まっていた


ホテルに着いた。立地は最高だ。
フロントには身なりのしっかりしたマレー系おっさんがいた。
チェックインをして、お金を払う。
2泊で170リンギ(4000円ちょっと)だったと思う。

シングルベッドで窓付きの部屋か、ダブルベッドで窓無しの部屋か選べと言われた。
少し考えているとおっさんは間髪入れずに「見せよう」と言って、鍵を2つ取り手招きをした。

エレベーターの中で「何処からきた?」と言われたので「ジャパン」と答えると、原爆は大変だったな、日本は物価高いよなと、旅先でで一番言われがちな話題2トップを話しながら部屋へ。

両方見た感じで、ダブルベッドで窓無しの部屋にした。
やっと荷物を下ろす。時刻は12時を回っていた。
とりあえずお腹が減ったし、さっきチラッとみたブキッビンタンの街が楽しげだったので、すぐに部屋を出た。

さっきの交差点に戻ると、さっきとは違うバンドが上手にレニー・クラヴィッツを演っていた。

交差点の一番良い場所ではいつでもバンドが演奏していた


駅前のハラルレストランではイケイケな若者たちがシーシャを吸っていた。
マレー系の若者たちは中東系に近い顔つきで、少し凄みがあり、ちょっと身が引き締まった。

とにかく人通りが多いが、道には腕のない老人や、水頭症の赤ちゃんとお母さんが、路上に座って物乞いをしていた。
さっきのバンドの音が少し遠くに聞こえるくらいまで歩くとまた違うバンドが演奏している。
今度はアコースティックのバンドで車椅子に座った女の子が現地の曲を歌っていた。

これはタイやインドなんかでもそうだけど、病気で働けない人や、手足がない人、障害児や病気をもつ子供や、ストリートチルドレンはみんな歌ったり、楽器を演奏したり、なにもできなくてもとにかく毎日同じ場所に座って物乞いをしている。

クアラルンプールの街は人も多いし賑やか。
シンガポールよりもマレー系が多く、中華系やインド系の人、中東からの旅行者も多く、雰囲気はカオス。

シンガポールよりも明らかに東南アジアのカオスがあるんだけど、東南アジアの中ではかなり街が清潔なのは、イスラムの宗教柄もあるのかもしれない。

路地に入っていくとアロー通りというホーカー通りにたどり着いた。
日本のお祭りみたいに、道の両側にずらーっと屋台が並んでいる。

アロー通りのホーカーズ


賑わっているホーカーズに入った。
まずはビールを頼んで、ゴクゴク飲む。
グラスが小さいので一口飲むごとにタイガービアのセクシーなユニフォームを着た女の子が注ぎに来てくれる。
東南アジアの屋台には、店員の他にその国のビール会社のキャンペーンガール的な女の子がいることが多い。

空芯菜の炒め物と、マレーシア名物のサテを注文した。
サテはマレーシアやインドネシアの焼き鳥。ピーナッツソースをつけて食べる。


ひとしきり飲んでると、もういい時間。
店を出て少し遠回りに散歩しながら、コンビニに寄ってホテルに帰った。
とにかくエアコンの効きが良く快適だ。
長いバス移動の疲れもあってぐっすり眠った。


目が覚めたら昼だった。
ブキッビンタン駅からチャイナタウンにあるセントラルマーケットまで電車に乗って行った。

ブキビンタン駅の正式名称は エアアジア・ブキッビンタン。

エアアジア・ブキッビンタン駅



エアアジアが命名権を買ったらしい。
おれがアジア旅で一番お世話になっている航空会社、エアアジアはクアラルンプールが本拠地だ。

駅の窓口で、Touch'n GoというICカードを買った。

マーケットでシンガポールで出会ったカヤジャムを買ったりしつつ、屋台でマンゴージュースを飲んだ。

セントラルマーケット 清潔でエキゾチックなマーケット。


この日はとにかく日差しが強く暑かった。
この時期のシンガポール、マレーシアは毎日昼間は35℃まで上がる。夜は26〜7℃くらいの熱帯夜だ。

少し歩いて、クアラルンプールにあるモスクの中でも特に歴史のあるというマスジット・ジャメを見に行った。


マスジット・ジャメ 2つの河が交わる場所にある
ここがクアラルンプールの地名の由来になった場所


このあたりは広々としていて、厳かそうな建物が多い。東京の丸の内的な感じか。
どの建物もイスラム調で美しく、外国からの観光客なんかが写真を撮ったりしていた。

スルタン・アブドゥル・サマド・ビル
大英帝国時代の建物らしい



ブキッビンタンに戻って駅前のモールやマーケットを見て歩いた。
ブキッビンタンの駅の周りには大きなショッピングモールがたくさん建っていた。
駅前には伊勢丹があって、わりといつでも日本食が恋しいおれは伊勢丹の上のレストラン街の大戸屋でカツ煮定食を食べた。

買い物には興味がないけど、色々な店に入ったりしてみた。
現地の服屋も多いけど、やっぱりユニクロなんかもなかなか繁盛していた。
マレーシアの服屋もコンビニも、どんな店でも若い女の子はヒジャブをしたまま働いていた。
当たり前なんだけどその光景が新鮮。


明日クアラルンプールを発とうと思っていた。
やっぱり少し駆け足な旅だ。
次の目的地、ペナン島までのバスのチケットと宿を予約した。
また電車のチケットがフルだったのだ。


夜、ホーカーズでミーゴレンを食べた。
モチモチ麺のスパイシーな焼きそばだ。

注文したミーゴレンが運ばれてきたくらいで、通りのホーカーズの店員たちが一斉にテーブルの上にパラソルを広げ始めた。
大して気にも留めず食事をしていると、3分もするとパラパラと雨が降りはじめ、あっという間にドカドカと激しい雨になった。
彼らの経験と勘に脱帽。

東南アジアのスコールは東京では経験したことのない降り方だ。
パラソルに当たる雨のバタバタという音で会話もできないくらい。

通りを歩いていた人はほとんど近くの店のパラソルの下に避難している。
現地の人たちは慣れたもの。

まともな屋根もない焼き場でサテを焼いているお兄さんも、店員のお姉さんもみんなさっきまでと同じように仕事をしてる。

あっという間に地面はすこし浸水し始めた。
するとどこからか大量のビニール傘を持ったおじさんが現れて、テーブルを一つずつ回って声をかけて傘を売り始めた。
たくましいマレーシアの商売人を眺めてるうちに雨を少しずつ弱くなっていった。
そして15分もすると雨も上がって、いつのまにか傘売りのおじさんも何処かにいなくなっていた。

お腹もこなれて、飲みにいく。
アロー通りを少し先に行くとパブストリートがあった。
ここにはナイトクラブやかっこいいパブが並んでる。
珍しく外の席に灰皿の置いてあるパブがあったので入る。
ホーカーズでビールは飲んできたし、モヒートを頼む。
50リンギ(1300円)くらいしたとおもう。
おしゃれはパブやバーは特にだけど、マレーシアはイスラム圏だからか全体的にお酒が少し高い。それでも日本よりは少し安いくらい。

シンディーローパーのシーバップがでかい音で流れていた。
良い飲み屋だったが値段も高いし、なんだかわりと酔ったので一旦部屋に帰ることにした。

部屋に帰ると、ペナンのことや、明日のバス乗り場を調べたりした。
そしてすこし退屈したらまた繁華街をうろうろしたりしてみた。
部屋でだらだらしたり、外に出たり頻繁にしたいタイプなので立地はかなり重要なポイントだ。

泊まっていたホテルアンバサダー。ブキッビンタンの駅から徒歩1分。


ブキッビンタンの夜


次の日。
シャワーを浴びてすぐ、時間ギリギリにホテルをチェックアウトした。
バスの時間は16時。まだ時間がある。

ブキビンタンをうろうろする。ブキビンタン最大のショッピングモール、パビリオンで涼む。
フードコートにはざっくりとエリアに別れて、色々な国のレストランがある。
とても綺麗ででかい。
バンコク、アソークのターミナル21に似ている。
ていうか東南アジアの都会のモールはだいたい似たようなつくりだ。

上の方の階には 東京ストリートというエリアがあって、日本食レストランや、ダイソー、それに道の駅かなにかにありそうな、工芸品ノリの日本のお土産屋みたいな店なんかが並んでいた。
海外の日本にまつわるお店を見ていると日本とはどこか違う要素が入っていて、海外から見る日本のパブリックイメージがよくわかる。

フードコートのココイチでチキンカツカレーを食べる。ここはマレーシアなので豚カツはない。
何日か前から無性に日本のカレーが食べたかったのだ。

ココイチはほとんど日本では行くことはないけど、おれが行く外国にはココイチがあることが多く、ちょくちょくお世話になっている。
ペッパーランチとかもそれで、日本では1回も行ったことがない。

海外で日本のご飯を食べることにもったいない的な意識はなく、わりとご褒美的に楽しんで食べる方だ。


そうこうしていると、いい時間。
ホテルに荷物を取りに行って、クアラルンプール駅にあるバスターミナルを目指す。
クアラルンプール駅はKLセントラルまで行って乗り換えなのだが、電車の本数が少ないからKLセントラルの一駅手前、パサールセニ駅から歩いた方が早いと駅員に教えてもらった。

昨日行ったチャイナタウンの最寄り駅だ。
パサールセニからガンガンの日差しの中歩く。
結局20分近くかかったけど、果たしてこの方が早かったのかどうなのか。

バスターミナルは2つのバス会社だけの小さなターミナルだった。
15分もすると小さなバスが来た。
座席も狭く、背もたれもほぼ倒せない、長距離バスではないようなつくりだ。

バスはほぼ満席だった。
隣にはインド系のおっさんが座り、バスは走り出した。
このバスでマレーシアをさらに北上する。


南の島 ペナン へ

しばらく走るとやっぱりひたすらにベタな熱帯雨林だ。
隣のインド人はとてもインド人らしく、のびのびしていた。
イヤフォンをせず音楽を流したり大きな声で電話をしたりしてる。
彼の脚はおれの席の方までぐんぐんと入ってきて、気がつくとずっと、おれの領土は4分の3くらいになってた。

途中ドライブインには1回だけ止まった。
コンビニとガソリンスタンド、それにバーガーキングが入ったコンパクトなドライブインだった。

再びバスが走り出すと、インドのおっさんはコンビニで買ったスナックをボリボリとおかずにしながらパンを食べ、ミロを飲んでいる。
こんな狭い空間に長時間座っていなければいけないこの状況で、よくこいつはこんな "一人お楽しみ会" みたいなことになれるな。
そんなことを思っていると、いろいろなストレスを超えてこのおっさんが生き物として面白くなってきていた。

領土問題はおれも対抗し始めて、50/50くらいにはなっていた。
おっさんとおれの足はもう何時間もぺったりとくっついている。もう仲良しだ。

すこしウトウトしたりしていると、辺りは真っ暗なんだけど、海岸から海へ緩やかなカーブを描いて伸びる光の橋が見えてきた。
この橋を渡るとペナンだ。
クアラルンプールから7時間は走っただろうか。
時刻は23時くらいだった。

橋は思ったより長かった。
バスの窓からはずっと海しか見えない。
橋を5分も走ると、遠くにたくさんの光が見えてきた。ようやく島が見えてきた。

島に入って洒落たリゾートというペナンのイメージとは違う、東京の郊外か埼玉の県道みたいな道を走る。
もうすこし走ってると、ジャスコや山田うどんが見えてきても違和感はない。

見えてきたのは小さなバスターミナルだった。
ここで簡単に降ろされる。

あたりにはとくになにもなく、マップをみるとだいぶ島の外れだった。
ここからホテルのある、島の中心、ジョージタウンを目指す。15キロくらいはありそうだ。
だけど足にあてもなく、バスターミナルの周りを歩いているとたまたま1台のタクシーが止まったので強引に止める。
交渉してジョージタウンまで20リンギ(500円ちょっと)で乗せてもらった。

道はひたすらに一本道だった。
道はガラガラで快適に飛ばす。

ジョージタウンに着いた。
大通りから一本入ると商店街のようになっていた。
すこし走ると、予約したモーテルの小さな看板が見えてきた。
タクシーを降りたころには12時を回っていた。

モーテルの小さな入り口には鍵がかかっていた。貼り紙がしてあって、モーテルのスタッフは隣のホーカーズに居るとのことなのでホーカーズへ。
ホーカーズは夜中でもたくさんの人がもくもくと食事をしていた。
チェックインしたいと店員に言うと、店員はしばらくいろんな所を行ったり来たりした後、モーテルのスタッフを連れてきた。
そのままホーカーズのキャッシャーでチェックインを済ませて鍵をもらった。
モーテル自体にロビーやエントランスはなくて、ホーカーズの横の入り口から、鍵をタッチして中に入るとすぐに部屋のある廊下だった。

部屋に入るとそこはジメッとしていて、わりと古い感じだった。
まあこのくらいは全然許容範囲内。
コンセントがなかなかうまく挿さらなかったり、小さいアリがちらほら居たりした。


もう夜中だけど、とりあえずお腹を満たしたかった。
さっきタクシーを降りる時、モーテルの道を挟んだ向かいのイスラム系のホーカーズがまだやっていたのを見たので、そこに行ってみようとおもった。
ちょっとスパイシーなものが食べたい気分だった。

ホーカーズには白いイスラム服にイスラム帽を被った人たちが黙々と食事をしていた。
特に案内もされず、まだ片付けられていない空いてる席に勝手に座る。

しばらく待っても店員が来る気配がないので自分でオーダーしにいく。
チキンビリヤニを食べたいと決めていたので、メニューをもらう必要はなかった。
チキンビリヤニとコーラ(ハラルレストランなのでお酒がない)を店員に注文して、席にある前の客の食器を片付けてもらう。

ビリヤニはすぐに運ばれてきた。
ビリヤニの上にでかい骨つきのチキンが乗っていた。
周りの人たちと同じように黙々と食べる。
スパイスを感じるけど、炊き込んであるので辛さはマイルドで美味しかった。
コーラも入れて10リンギちょっと(300円くらい)だったと思う。

モーテルの前にはセブンイレブンがあったのでそこでビールとおつまみを買う。
店内は無音で、店員の口笛だけが鳴り響いていた。
1番安いタイガーは売り切れで、セールで安くなっていたクローネンブルグを2本買った。
500mlの缶が1本10リンギだけど2本買うと18リンギ(450円くらい)になった。

部屋に帰ってシャワーを浴びてビールを飲んだ。ふとベッドから床みると小さいムカデがいた。
蚊帳もなく、寝てる間に噛まれたりしたら嫌だなあと思いつつ眠った。

部屋のシャワー やっぱりろくにお湯は出なかった





朝、目が覚めた。
ペナンに着いてやっぱりまずは海をみたいとおもった。
地図でみているとペナンなんて小さな島だし、ジョージタウンからしばらく歩けばビーチの一つくらいあるんだろうとか悠長なことを考えていたら、
一番近いビーチまでは車で20分くらいはかかるみたい。
調べるとジョージタウンから島を周回するバスに乗って行けるらしい。
ひとまずジョージタウンを散歩しつつバスターミナルへ向かうことにした。

まずモーテルから1分も歩かないくらいのところにある旅行会社で明日のバスチケットを買う。

明日はこのままマレーシアを北上してタイに入り、マレーシアとの国境近くの町、ハジャイまで行くことにした。
この旅行会社は家族経営だった。
頭のよさそうなお兄さんに手配してもらって、明日の昼のチケットを買った。

ジョージタウンの町

ジョージタウンは町全体が世界遺産。
歴史の匂いがしながらも洒落たつくりの建物が並んでいる。

リゾートでありながら、人々の生活があった。
クアラルンプールに次ぐマレーシア第二の都市らしいが、島だからか、やっぱりスローな時間が流れている。

ジョージタウンの中心には コムタ というランドマークタワーがある。
65階建てで249mもあるらしい。おれの地元、池袋のサンシャイン60よりもでかい。
バスはそのコムタの足元のバスターミナルからでるらしい。

バスターミナルに着くとすぐにビーチに行く番号のバスがきたが、満員で乗れず1本見送った。

同じバスを待っている人の中に日本人のお姉さんたちがいた。
マレーシアではほとんど日本人を見かけてない。
次のバスは5分もすると到着した。バスは満員だ。
おれの目指す、バトゥ・フェリンギまでは3.5リンギ(80円とか)くらいだったと思う。

真新しいバスに1時間弱揺られて、バトゥ・フェリンギに着いた。ここで、おれとタイ人の若い女の子を連れた白人のおじさんが降りた。
パタヤにいるような気分になった。
バス停から海岸沿いまでの道を歩いて探す。

寂れた道から唐突に海に出た。
思ったよりも海が碧く、きれいだ。
外国からの観光客もいたが、国内や近くからの観光客も多い、いかにもローカルな雰囲気だ。

マレー系の女の子たちが、ダイバースーツみたいなイスラム用の水着をきて海に入って遊んだりしていた。
海の家もあった。雰囲気は完全に地元の食堂だ。

バトゥ・フェリンギ


洒落ているわけでもなく妙にローカル感のあるビーチはとても落ち着く。
海の家でパイナップルジュースを飲む。
絞りたてなので温かった。

ここでご飯を食べようと思ったが、ご飯はオーダーが立て込んでいてかなり時間がかかるというので諦めた。

海岸沿いをしばらく歩く。
足を海に浸けつつ歩く。
やっぱり東南アジアはサンダルで旅するに限る。

太陽を全身で浴びながらしばらく歩くと、唐突にスターバックスが見えてきた。
海を臨めるロケーションだ。
汗だくで喉も渇いたので入る。

ご飯も食べられなかったのでコーヒーとホットサンドを頼んだ。
スターバックスでなにか食べるのは生まれて初めてかもしれない。

バスでジョージタウンに戻る。夕方だった。
スーパーマーケットでお土産を買う。
夕方のジョージタウンは、潮風が吹いていて気持ちがいい。

ペナンでゆっくりできるのは今日だけ。
まだ明るいが、今日は久しぶりにしっかりお酒が飲み歩きたかった。
やっぱり島では観光で忙しなくするよりダラダラビールなんかを飲んでいたい。(どこでもそうだけど)


南国の島 ペナンでブルース炸裂

おれの泊まっているモーテルの通り、チュリアストリートを中心に向かってしばらく歩くとバーやレストランが並んでいたのは昼間チェック済みだ。

チュリアストリートに着くと、昼間見ていたより飲み屋が多く盛り上がっていた。
ひとまずライブステージのあるパブに入る。
ハッピーアワーの時間でタイガーの生が10リンギ(250円)くらい。
クアラルンプールよりもかなり安い。
バンドがセッティングをしていたが、一向に音を出す様子がないので次へ。

チュリアストリートから1本路地を曲がると、
小さいパブがたくさんひしめき合ったパブストリートがあった。
屋台のように外に席が並んでいる。
ベトナム、ハノイの飲み屋街を思い出した。

客引きのノリノリなお兄さんに捕まり、その店に入る。
3本飲めばビールが1本9リンギ(200円ちょい)。
やっぱりペナンはクアラルンプールよりもだいぶビールが安い。

パブストリート



白人の観光客が多かった。
やっぱり南国の風に吹かれながら飲むビールは特別うまい。

いくつかの店にはバンドやミュージシャンが入っていて、音が渋滞してる。
姿は見えないが隣のパブではブルースの弾き語りが、遠くからはバンドがスティービーワンダーを演ってる音が聞こえてくる。

暑い中飲むビールと音楽。
南国のこんな夜はいつも、他にはなにも要らないと本気で思わせる。

隣のパブから聞こえる歌をずっと聴いてる。
レッドツェッペリンとかのブルースをエレキギター1本でやってるんだけど、なんかサラッとしていて物足りない。
おれはブルースにはうるさい方だ。

物足りないブルースをずっと聞いていて、おれのギターを弾きたい欲が高まる。
気がつくと、ビールを飲み終えてお金を払うとその隣の店に入っていた。

すこし酔っ払っていたし、かなり強気だ。
歌っていたのは若い白人の兄ちゃんだった。
「ツェッペリンのサンキューよかったよ。上手いじゃん。」
とか言うと、彼はサンキューと言ってきたのですかさず、
「おれもギター弾くんだよ。よかったら1曲弾かせてくれない? それで君が歌ってよ。」

今考えるとかなり強引だったと思う。
彼は、「おれはいいけど、店の人にきいて。」というので店のオーナーに言うと「彼がいいなら」というのでやれることになった。

彼からギターを借りる。
オーナーがにやにやしながら「チャイニーズソングかジャパニーズソングをやるのか?」というので、
「ブルースをやる」と答えた。

隣に座ってたマレー人ぽい女の子が「クイーン知ってる?ボヘミアンラプソディやってよ。」と言ってきたが無茶振り過ぎる。
ボヘミアンラプソディをギター1本で弾くのはおれには無理だ。
今考えるとさわりだけでもやってみれば面白かったなあ。

3コードのスローなブルースをやった。
彼はすこし驚いた顔をして小さい声で「いいね」と言ってアドリブで歌いはじめた。

それからは彼がアドリブで歌ったりおれが間奏を弾いたりしながら曲を終えた。
店内はさっきまでとは比べ物にならないくらい盛り上がった。
自分で言うのもなんだけど、さっきまで彼がやっていたブルースよりはいくらかブルースしていたと思う。

ギターを返し、「楽しかったよ。ありがとね。」と彼に言うと、
名前を聞かれ、スペシャルゲストとして紹介してくれた。
なんだか上からに「君なかなか上手いじゃん。」とか言われながら握手をした。

なんとなく我に返り、照れ臭くなり店を出た。
店を出る時たくさんのゴキゲンなおじさんたちが握手を求めてきた。
気分はちょっとしたアジアスターだった。

とてもスリリングな時間だった。
まさかマレーシアの離島で人前でブルースを演るとは夢にも思わなかった。

ライブも気持ちがよかったので、もう1件。
めちゃくちゃイカしたレゲエバーに入った。
入り口はウッディで草木に覆われていて、中から心地いいレゲエのスカのリズムが漏れていた。

中に入るといかにもなレゲエな兄ちゃんが出迎えてくれて、カウンターに座る。
メニューを見るとたくさんのカクテルがあった。値段は高めだったけど、雰囲気が最高だ。

メニューにはなかったけど、カウンターの向こうにカシャーサのボトルが見えたのでカイピリーニャを注文した。
レゲエな兄ちゃんはカタコトの日本語で話しかけてきた。
ここには日本人もよく来るからなんとなく覚えていったらしい。
タバコをくれというので差し出して吸いながらしばらく話をした。

ラスタな格好がキマっているドレッドヘアの彼はジャマイカ人かなにかかと思っていたけど、ここペナンで生まれ育った、生粋のマレーシア人らしい。
それから日本語と英語を交えながら色々な話をした。
ジャパニーズレゲエのかっこよさについてしばらく語られた。
彼はレゲエが大好きだ。

ゆっくりとカイピリーニャを飲み干して、お金を払い、またいつか来るよと約束して店を出た。

近くにハンバーガーの屋台が出てたので、チーズバーガーを食べながら歩いてモーテルに帰った。
まずはシャワーで汗を流し、荷物をパッキングする。

夜中、お腹が減ったので近くのホーカーズへ。
モーテルの近くはインド人街。
インド系のホーカーズに入った。

明日マレーシアを出るけどまだ有名なナシゴレンを1回も食べてないことを思い出して、インド料理メインの店で、ナシゴレンを注文した。

特に特別なことはないスパイシーなチャーハンだった。
まあミーゴレンもそんな感じだったし、まあこんなものなんだろう。
味は普通に美味しかった。

モーテルに帰ってダラダラして眠った。



次の日、起きてすぐに慌ただしくチェックアウト。いつものことだ。
ハジャイ行きのバスは12時30分におれの泊まっているモーテルの前でピックアップしてことになっていた。

時間までモーテルの前でタバコを吸って待つ。
だけどバスは13時を過ぎてもこない。
チケットを買った旅行会社はすぐそこなので歩いて行く。

昨日のお父さんの代わりに今日はお母さんがカウンターにいた。息子は奥でだらっとしている。

チケットを見せるとすぐバス会社に電話をかけてくれて、「すぐ来るからここで待ってなさい。」と言われた。
ソファに座って待つ。目の前のケージではインコが飼われていた。
しばらく待っている間にいろんな人がきた。
それはどうみてもスタッフでもお客でもない、友達とかだ。
ただ座ってジュースを飲みダラダラしていつの間にか居なくなっている。
東南アジアの店らしい光景だ。

しばらくするとお父さんがきた。
そしてそのすぐ後に「バスが来たぞ」と教えてくれ、店を出た。
お父さんはおれのバックパックをバスに積んで、見送ってくれた。

ジョージタウンのメインストリート



タイを目指す

バスはバスというよりミニバンだ。要はワゴン車。4列シートだ。
運転手はヒュロってしたタイ人らしき若者だった。
ガールフレンドみたいな雰囲気の女の子が助手席に座っていた。
車内では運転手の趣味なのか、タイ産のメタルが流れていた。

予定から1時間過ぎて発車した。
おれの他に2組が既に乗っていて、本土への橋の手前の団地でもう1組ピックアップして島を出た。

島を出てしばらく走る。
国境までは意外とあっさり到着した。
ペナンを出てから2時間くらい。
これでシンガポールとマレーシアをきれいに縦断したことになる。
距離にしてだいたい1000kmくらいだ。
結局、列車は予約が取れず。思いがけず全区間バスでの移動になった。
思いがけないようなことは何も決めない旅の醍醐味だ。

マレーシアのイミグレーション。
同じミニバンに乗っていた、インドネシアの家族と中華系の中年夫婦と一緒に列に並ぶ。
マレーシアの出国は入国の時と同じであまりに簡単なものだった。
そしてミニバンに乗り、警備員が車に積んだまま荷物検査をする。とてもアバウトだ。

いよいよ国境を越えてこの旅3ヶ国目、タイのイミグレーションに向かう。


タイ編に続く↓



シンガポール編はこちら↓

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