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坂本拓也インタビュー #02

TENSELESSの木下和重です。
#01を読んでいただき、ありがとうございました!
でも私、うっかりしてました。
坂本拓也氏のウェブサイト、SNSを書いてませんでした。
やっちまったな!

WEB:https://l-e03.webnode.jp
Twitter:https://twitter.com/osaki_l_e
Instagram:https://www.instagram.com/takuya3sakamoto/

さて。
#02では、坂本氏がどんな音楽を聴いてきたかについて主に聞いております。
ほぼほぼビートルズですが(笑)。
では、お楽しみください!

5. 坂本拓也が、ザ・ビートルズと出会った~

坂本 音楽に関しては、僕はもうビートルズですね。

木下 出た!我々の周りでは坂本君といえばビートルズだからね。いつから聴いてたかって覚えてる?

坂本 もう幼稚園の頃には普通にビートルズを聴いてました。もちろん童謡とかポンキッキの歌とかも聴いてましたけど、自ら好んで聴いたのはビートルズでした。

木下 じゃあ、あなたの音楽の原体験は何ですか?って聞かれたらそれはもう…

坂本 ザ・ビートルズ。記憶はないけれど、2歳でおもちゃのギターを弾きながらビートルズの曲を歌ってるんですよね。写真に残ってます。


「ビートルズのアビーロードを聞いているところ。少しカゼ気味です。」昭和55年8月 坂本拓也、2歳


坂本拓也、3歳

木下 自分から聴こうと思わなくても、母親のおかげでビートルズのレコードがかかってる家庭環境だったもんね。

坂本 いやいや、自分でも聴きたいって母親にせがんでましたよ。

木下 おお、鉄筋入ってんなあ。幼少期はどの時代のビートルズを聴いてたの?

坂本 『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』や『アビーロード』かな。

木下 後期ってことかな。幼少期に聴いてるって渋いね。

坂本 初期も好きでしたよ。

木下 じゃあ全部ってことね。

坂本 中学時代にジョン・レノンが生誕50年、死後10年を迎えて、ビートルズ特集をテレビでやってたんです。それを観て、今まで普通に聴いてたビートルズを意識的に聴くようになりました。

木下 中学時代に好きだったアルバムは?

坂本 『リボルバー』と『ホワイトアルバム』です。ビートルズのドキュメンタリーのビデオテープを繰り返し観て、『リボルバー』はLSDの影響がある!『ホワイトアルバム』はオノ・ヨーコが入ってきてアバンギャルドになった!インド思想の影響がある!って知ったんですよね。中一の僕にとっては、これはヤバい大人の世界なんだと思って、夜中に親に隠れてこっそり聴いてました。

木下 『リボルバー』ってどんな曲が入ってたっけかな。

坂本 「タックスマン」や「エリナーリグビー」とか。この『リボルバー』から、レコーディング技術を駆使して、新しい試みが色々なされるんですよ。逆回転再生された音を使ったり。シュトックハウゼンとかの影響も大きかったようです。

木下 この頃にはすでにインドに傾倒してた?

坂本 いや、ジョージ・ハリスンだけですね。前作の『ラバーソウル』収録の「ノルウェーの森」ではじめてシタールというインドの楽器を使ってます。

木下 『ホワイトアルバム』って、あんまり一緒に録音してないんだよね?

坂本 ですね、メンバーが全員揃うことが少なくて、別々のスタジオで各自が録音やアレンジなどの作業をしていたようです。そのせいで『ホワイトアルバム』は曲調がほんとバラバラだし変わった曲も多くて。ポップ、ハードなロック、弾き語り、バロック風、アバンギャルドといった感じで目まぐるしく次から次へと展開していくんですよ。ほんとやばい。

例えば、「グラスオニオン」はロックなバンドサウンドにストリングスが加わったアレンジの曲なんですけど、ラスト30秒くらいで唐突に不穏なストリングスだけになるところがほんと不気味。そして次の曲の「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ」は底抜けに明るいピアノで始まるっていう流れがね、もうたまんない。あと、変わった曲でわかりやすいのは、ジョン・レノンとオノ・ヨーコが中心になって制作された「レボリューション9」ですね。この曲は全編テープコラージュなんですよ。メロディもビートもない。時々「ナンバーナイン」って声が象徴的に入ってる。あと、「ヘルタースケルター」が不幸にもシャロンテート殺害事件に利用されたって悲しいエピソードもあるんですよね。

木下 ありがとう。中一の坂本君にとっては得体が知れないね。

坂本 得体が知れないけど好奇心万歳の時期だから、「やべぇ~!かっこいい!」って興奮してました。あと、90年代に入ると『ホワイトアルバム』はオルタナティブ・ロックの元祖と言われて再評価されるんですよ。

木下 オルタナも聴いてたの?

坂本 普通に聴いてましたよ、ニルヴァーナとかね。でね、中二の時にジョージ・ハリスンが来日するんですよ。エリック・クラプトンと。既におわかりかと思うんですけど、僕はジョージの大ファンなわけですよ。

木下 わかるよ、わかる。ジョージはミドレンジャーなんだね。

坂本 ジョージと共演してるクラプトンって何者なんだ?ってことで彼が在籍してたバンド(クリームとか)や、他のブリティッシュ・ロックに手を出すんです。そうやって、ビートルズ以外の音楽を聴くようになっていきました。

木下 坂本母もビートルズ以外の音楽は聴いてたの?

坂本 もちろんもちろん。母はブリティッシュ・ロックには詳しいですよ。母からはT. Rexをビートルズ以外で始めて聴かされました。「何これ!かっこいい!」って飛びつきましたよ。

木下 思春期にT. Rexはやばいね。

坂本 エフェクトがかかったボーカルやギターとかもうね、「こりゃ宇宙人のロックや〜!」って(笑)。他には、ピンク・フロイドにどハマりしました。グラム・ロックからプログレッシヴ・ロックに行ったんですよ。

木下 それはまだ中学時代?

坂本 そうです。他にはデヴィッド・ボウイとか、ロキシー・ミュージックにもハマりました。あとは……ヴェルヴェット・アンダーグラウンド!ボウイから色々繋がっていきましたね。

木下 それも中学時代?

坂本 いや、もう中三から高校生になってた頃ですね。

木下 坂本君は気に入ったミュージシャンやアルバムに関わってる人たちの音楽もちゃんと芋づる式に聴いてる、正統派リスナーだね。参考文献もしっかり読むタイプ。

坂本 だからオノ・ヨーコの関係でジョン・ケージも知ってましたよ。

木下 え、ケージも聴いてたの?俺はケージをちゃんと聴き始めたのは大学入ってからだよ。

坂本 いやいや、知ってるだけでその頃はまだ聴いてませんでした。

木下 他には?もっと芋をちょうだい。

坂本 ブライアン・イーノのアンビエント作品も聴いてたし、ルー・リードがアルバム『メタル・マシン・ミュージック』でノイズをやってるのを聴いて、「何じゃこりゃ!」って衝撃を受けたりとか。でも、ビートルズ自体にいろんなジャンルが内包されてたんで、耐性みたいなものはありましたね。

木下 すげえなビートルズ。いやはや、色々聴いてたんだね。

坂本 そうですね、でも基本はロックで、バンドものです。

木下 プログレだと他に何を聴いてた?

坂本 ピンク・フロイドからキング・クリムゾン、イエス、EL&P、ジェネシス…

木下 お、ジェネシズ!

坂本 ジェネシ「ス」、スは濁りませんよ(笑)。僕たちがやってるグループはジェネシ「ズ」(SEGMENTS GENESis)です。濁っています。それを言わせたくて興味もないのにプログレの話を聞いたんでしょ?YouTubeのリンクも貼ったりするんじゃないの?

木下 バレたか。そりゃ貼りますよ、宣伝します(笑)。色々芋づる式に聴いてるのはわかったけど、それらはCDを買って聴いてたの?

坂本 はい、ロック名盤カタログを買って、興味のあるものを片っ端から買いました。60、70年代のものばっかりだったけど。それでハマったバンドを集めてました。お小遣いを工面して。たまに母に買ってもらったり。母も好きなので勧めたりして。ビートルズに関しては1986年に初CD化されてて、その時はレコードでいいだろうって買ってなかったんですが、僕が中一だった1990年にCDを買い揃えました。

木下 カタログで勉強して、王道ロックをクロニクルに聴いてたんだ。やっぱり正統派リスナーだ(笑)。

坂本 でもアメリカのものは聴いてませんでしたね。イーグルスとか。ブリティッシュ・ロックがメインです。

木下 その当時流行ってたバンドは聴いてた?さっきオルタナを聴いてたって言ってたけど。

坂本 一応聴いてましたね、オアシスとかブラーとか流行ってたものを。でも、60、70年代の音楽を追う方が一生懸命でした。あとはジャミロクワイとか…

木下 ジャミロクワイ!急にどうした。

坂本 高校の友達が好きだったから。

木下 なんだ、そういうことか。でも当時は、ガンガンに渋谷系が流行ってたころよね?

坂本 ですね。フリッパーズ・ギターとか雑誌経由で存在は知ってましたけど、そもそも僕は日本の音楽は聴いてなかったんですよ。

木下 それは海外好きなおじいちゃんおばあちゃんの系譜かな。

坂本 さあどうでしょう。大学に入ってからですね、日本の音楽を聴き始めたのって。

木下 俺は渋谷系やアシッドジャズ、レアグルーヴ、フリーソウルとか大好き人間だったんで、東京が羨ましかったね。

坂本 僕はR&Bやソウルミュージック、ジャズも大学入ってから聴き出しました。もちろん渋谷系も。

木下 なるほど。ロック名鑑で音楽を掘ってるとそうなるのか。俺のカタログは、ミュージック・マガジン増刊の鈴木啓志著『R&B、ソウルの世界』だね。まだ10代でレコードを色々買うお金が無いから読む専門で。大沢誉志幸さんのラジオ番組でレーベル特集とかやってて、かかってる曲をその本で調べたりしてね。

坂本 クラプトンの影響でブルースはちょっと聴いたりしたんですけど、全然良さはわからなくて。ロックでもハードロックとかメタルは聴いてませんでした。ディープ・パープル、レッド・ツェッペリンは聴いてたけど、アメリカン・ハードロックみたいなのは全く。

木下 アメリカン・ハードロック…なんだろう…ボン・ジョヴィ?

坂本 はい。

木下 まあここは深堀りしなくていいか。坂本君はビートルズを出発点にして、ロック(主にブリティッシュ・ロック)の歴史と共に人生を歩んでたんだね。

坂本 ですね。高校までは70年代の音楽、大学に入ってからようやく80年代になるんです。さっきも言ったんですけど大学に入ると色々聴くようになって、テクノも聴き始めるんですよね。

木下 テクノ!また飛んだね。テクノは何から聴き始めたの?

坂本 エイフェックス・ツインかな。バイト先の友達がテクノが好きで教えてくれました。スクエアプッシャーとか。バンドじゃないけどこれは面白いなって。ジャーマン・ロックをデヴィッド・ボウイの影響で聴いてたから、テクノもすんなり受け入れることができました。

木下 おお、すげえな芋づる式!確かにジャーマン・ロックを経由してたらテクノはすんなり聴けちゃうね。

坂本 その友達と、後に音楽を作るようになるんですよ。

木下 初耳!


6. BOØWYは悪くない(仮)

木下 中学時代から王道ロックを追っかけてて、リアルタイムの音楽をほとんど聴いてなかったわけじゃない?中学時代は音楽の話ができる友達っていたの?

坂本 普通に遊ぶ友達はいましたけど、音楽の話はしませんでしたね。

木下 したいと思ったことはあった?

坂本 それはあったけど、古い曲ばっかり聴いてるって馬鹿にされたりしてたのでできなかったです。例えば、ビートルズって音楽の教科書に載ってますよね。

木下 載ってるね、「イエスタデイ」とか。

坂本 授業でビートルズの曲が出てきた時に、「なんでお前はこんなダサいの聴いてんだよ、BOØWY聴けよ」って言ってくる奴がいたんですよー。

木下 なーにー!俺も似たようなことあったわ。高校時代、俺の親友がスティービー・ワンダーを好きだったんだけど、それをダサいって揶揄するしょうもない同級生がいた。そいつもBOØWYのファンだったな。俺にBOØWYのライブビデオを見ろ見ろって言ってきた。

坂本 見たんですか?

木下 うん。あ、思い出した!大学で知り合った友人が、俺に見せたい漫画があるってすごい力説されて。読んでみたら、これがBOØWYをモデルにした漫画だったのよ。

坂本 読んだんですか?

木下 うんまあ。ところで、音楽雑誌とかは買ってた?

坂本 『rockin’on』と『CROSSBEAT』は中三から読んでました。洋楽の流行はそれで知っていたけど、まだ60、70年代を掘るのでいっぱいで。

木下 高校時代も音楽友達はいなかったの?

坂本 いた!

木下 お!

坂本 高校時代はビートルズとかデビッド・ボウイが好きなやつらがいて、そいつらとつるんでました。そいつらはファッションも好きで、60年代のモッズスタイル。僕は興味なかったけど、青山のブティックに一緒に行ったり。奴らはジャミロクワイとかアシッドジャズ、ポール・ウェラー、オアシス、ブラーが好きでしたね。

木下 あ、ジャミロクワイが好きな友達が出てきた。でも友達が聴いてたらオアシスとか好きになりそうなもんだけど。

坂本 当時は聴いても面白くなかったんだもん。ビートルズ聴いた方がいいじゃんって思っちゃって。元祖の方がかっこいいじゃんって。当時のミュージシャンがインタビューで60、70年代の音楽をベースにしてる的なことを言ってて、じゃあやっぱオリジナルの方がいいじゃんって。ピンク・フロイドとか歌詞も深いしさ、絶対こっちじゃんって。

木下 歌詞も読んでたんだ。音楽雑誌に特集やらで考察記事とか載ってたりするし、深堀りしようと思えばいくらでもできるよね。

坂本 そうそう。音楽以外の芋だと、ウィリアム・バロウズやビートニクとかも好きになって。アンディ・ウォーホルも好きでしたね。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドからの流れで。通学鞄の中に必ず『裸のランチ』と『メタル・マシーン・ミュージック』を入れてましたね、カッコつけて。「俺はお前らとは違うぞ!」って(笑)。

木下 思春期真っ盛り(笑)。では話を変えて、高校時代の一番楽しかった思い出とか聞こうかな。

坂本 音楽ばっかりでしたね、高校時代は。

木下 話が変わらなかった(笑)。

坂本 音楽を聴くのがほんと楽しくて。知らない音楽を掘るのがほんと楽しい。

木下 そんなに聴いてたらさ、高校時代に自分で音楽をやろうってならなかったの?バンドとかさ。

坂本 ギターを買ってタブ譜を見ながらコピーしたことはあります。でもバンドをやる友達もいないし、他にギターをやってるやつは僕の聴かないハードロックをやってたし。というか、自分には楽器の才能はなかったんですよね。

木下 楽器の習得は根気だけどね。

坂本 幼少期はピアノもちょろっとやってたんですよ。家にピアノがあったんで。

木下 それも初耳だぞ。先生について習ってたの?

坂本 はい。赤いバイエルとかしかやったことがなかったですけど。

木下 ピアノはいつまでやってた?

坂本 小学校六年生まで。練習が辛いし通うのも面倒になってやめました。やっぱ友達と遊ぶ方が楽しいので。中一でビートルズにハマってからはもうロックのことしか考えられなくて。でも自分でやりたいっていう欲はあまりなかったですね。中学時代の夢は、ジョージ・マーティンみたいなプロデューサーでした。好きなアーティストのプロデュースをするっていう。自分は裏方の方が向いてるなと思ってました。

木下 フィクサー坂本。

坂本 音楽はやるより聴く方が好きだったんですよね。大学に入ってからですね、自分でも音楽を作ってたのは。

木下 今度こそ音楽を作る話を聞こうか。


7. 坂本拓也が、大学生になった~

坂本 高校時代はロックと現代アートのことで頭がいっぱいだったから、大学でそういうのを専門に勉強したいなと思って。でもアートと言っても自分は裏方志望なので美大ではないし、興味があったのは海外の文化だったので、日大の国際文化学科(当時の名称)に入学したんですよ。

木下 キャンパスはどこにあるの?

坂本 静岡県の三島です。下宿先が酷くて、家賃三万円で畳四畳半、網戸が壊れてて空調も無い。だから夏になると下宿の目の前にある本屋に入り浸ってました。

木下 毎日立ち読みしてたの?

坂本 もちろん買ってもいましたよ!その当時は、諸星大二郎にどハマりして集めてました。

木下 読んだことないな。じゃあ漫画で言うとキン肉マンから始まって……

坂本 あ、でもね、手塚治虫、実家に手塚治虫の漫画がいっぱいありました。『ブッダ』や『ブラック・ジャック』とか。

木下 それは俺も読んでるぞ。じゃあ漫画の原体験は手塚治虫なんだね。

坂本 ですね。漫☆画太郎もハマりました。

木下 読んだことないんだよね。

坂本 あと、孔雀王もハマった!密教系漫画。

木下 三上博史が出てる映画しか知らない。観てないけど。

坂本 帝都物語、帝都大戦も好きだったな。

木下 嶋田久作が出てる映画ってことは知ってる。観てないけど。

坂本 諸星大二郎や『火の鳥』の影響で、東洋思想の授業を取ったんですよ。その先生が面白くて、外国人の先生だったんだけど、必ず遅刻するの。それで、授業をまるまる使って瞑想したり、またある日はインド音楽をずっと聴いたり。ゼミもその先生のところに入ったんです。神話学のゼミでした。

木下 卒業論文のタイトルは?

坂本 うろ覚えなんだけど、『メディア・アートと神話』だったかな。メディア・アートの要素である音楽や身体表現、舞台装置や精神性が神話と親和性がある、みたいな話でした。

木下 お、いいね。ちょっと長くなったので、音楽作りの話は#03に持ち越し!


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