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漢、般若、R-指定が語るBOSS(ILL-BOSSTINO, THA BLUE HARB)

もはや説明不要のヒップホップグループ「THA BLUE HARBブルーハーブ)」(以下、TBH)。

私もTBHのリスナーであり、ファンの一人ですが、私ごときがTBHを語る資格などありません

よって、ここでは、日本のヒップホップシーンの第一線で現在も活躍する3名のラッパー、漢 a.k.a. GAMI般若R-指定の著書から、TBHのフロントマンでありラッパーのILL-BOSSTINO(以下、BOSS)に関する言及を一部抜粋し、まとめて紹介することで、BOSSさん、そしてTBHの凄さの、そのほんの一端を改めてご確認いただければ幸いです。

なお、3名のラッパーの著書(発行年)と、BOSSさんに関連したページ数(該当する章)は以下の通り。

漢 a.k.a. GAMI『ヒップホップ・ドリーム』(2015年6月)
関連ページ数…6ページ
(第8章 アンダーグラウンド・コネクション)

般若『何者でもない』(2018年12月)
関連ページ数…4ページ
(#7 with)

R-指定『Rの異常な愛情』(2019年9月)
関連ページ数…40ページ
(第5章 THA BLUE HARBの旅路)

それでは発行順に、漢さんの『ヒップホップ・ドリーム』からどうぞご確認ください。

漢 a.k.a. GAMI 『ヒップホップ・ドリーム』

第8章 アンダーグラウンド・コネクション
(見出し)BOSS THE MCとの出会い

「2005、6年以降、『UMB』の全国的な拡大や『導~みちしるべ~』の成功によって俺の知名度や評価が高まっているのは実感していた。名前が売れれれば、必然的に全国各地のラッパーたちとのトラブルや対決も込みの出会いが増えていく。そういう出会いの中で、俺にとって特別と言えるラッパーとの邂逅が訪れる。それは、俺のヒップホップ哲学が正しかったと確信させてくれるものでもあった。そのうちのひとりはBOSS THE MC(現・ILL-BOSSTINO。」(p.159)
※ もうひとりはANARCHY。

「俺はそれまでBOSS THE MCのファンでも熱心なリスナーでもなかったから、あいつの曲をちゃんと聴いたことがなかった。(中略)俺はBOSS THE MCが陰険で暗いラッパーに違いないと決めつけていた。ところが、本人に会うとそのイメージは完璧に覆される。TABOO1の家で超ブリブリになってくると、俺ら以上に明るくて、『ワッハッハッハッと豪快に笑う。印象が180度変わって『だいぶギャップ系なんですね』と思った。」(p.163)

「それは場がそろそろお開きかという雰囲気になったときだった。『俺はこのことだけを言いに来た』とBOSSがシュッと真顔になる。そして真剣な面持ちでこう語った。(中略)他人をディスるラップではない次の段階のラップに向けて旅立とうと思っている……そうあいつは俺に語った。
 そしてそこまでが前置きだった。続けてあいつは、その旅に出る前に一曲だけ攻撃的な曲を発表するでもそのディスの対象に漢だけは当てはまらないだから誤解しないでほしい、そう言い置いた。BOSSはたったそれだけのことを伝えるためにひとりで新宿まで俺に会いに来たひとりの男としてかっこいいそう思った。そしてBOSSへのリスペクトが生まれた。これが俺とBOSSとの出会いのエピソードだ。」(pp.163~164)

「その後、BOSSは『MOTIVATION』(『LIFE STORY』収録/2007年)……という曲で俺について歌っている。」(p.168)

「MOTIVATION」で該当すると思われる歌詞がこちら。

次々現れる YOUNG MC 
 すげぇ奴にはすげぇって言う 
 たった一人 新宿まで出かけ 通す筋 
 陰口使わねえのが北の流儀


般若 『何者でもない』

「2010年8月29日。恵比寿LIQUIDROOMの6周年記念イベント『DREAM MATCH』。
(中略)
その日のイベントはなかなか面白いメンツが揃っていた。漢 a.k.a. GAMIが所属しているMSCがいて、ZEEBRAがいて、そしてなんとそこにTHA BLUE HERBがいる。
 THA BLUE HARBのBOSSくんとZEEBRAが会うのはその日が初めて。BOSSくんが『やっと会えたね会いたかったよ』なんて言いながら挨拶しているその場に俺も立ち会っていた。それこそ、札幌で活動していたBOSSくんがZEEBRA達、つまり東京のヒップホップシーンに噛み付いていた頃にラッパー街道を歩き始めた俺にとっては、なかなか面白い光景だった。」(pp.233~234)

「その日のイベントでBOSSくんとちゃんと話せたのも俺としては大きかった。お互いに1MC+1DJのスタイルでやっている者同士。THA BLUE HARBのほうがキャリアは長いけど、BOSSくんは先輩風を吹かすでもなく、フラットに接してくれた。
 THA BLUE HARBは昔から尖っていてカッコよかった。影響力もハンパなかった。俺も、1stアルバム『STILLING, STILL DREAMING』を聴いて衝撃を受けた一人だ。しかもそれ以来ずっとTHA BLUE HARBはTHA BLUE HARBであり続けている。そんなBOSSくんから『すげえ尊敬してるよ』なんて言われた時は、さすがに俺もテンションが上がったけど、俺のほうこそBOSSくんを尊敬している
 ラッパーとしてはもちろんなんだけど、自分でレーベルを運営するようになってBOSSくんのすごさを改めて感じるようになった。自分のレーベルだと自由にやれると思うかもしれないけど、全てを自分達でやるというのは大変なことも多い。
 自分達のペースで作品を作って、自分達の売り方でリスナーに届ける。
 俺はそこにやりがいを感じているけど、常に戦略・戦術を考え続けていかないといけないというハードさはある。(中略)
 BOSSくんは昔からずっとそれをやってきたわけでそういうBOSSくんから学ぶことは本当に多い。」(pp.235~236)

なお、般若は、「フリースタイルダンジョン」のラスボスとして、チャレンジャーのじょうと対戦した際、次のようなラップもしていました。

俺はBOSS THE MCのさらに先を行く
 ここで長渕剛を超えて行く



R-指定 『Rの異常な愛情』

※「本書は2018年12月から翌年8月にかけて高田馬場BSホールで定期的に開催されたトークイベントに基づく。聞き手は音楽ライターの高木‟JET”晋一郎がつとめる。」(p.6)

第5章 THA BLUE HARBの旅路
R BOSSさんと喋ると背筋が伸びるんですよね。そんぐらいラッパーとして真っ当な筋の通ったしっかりした人やから、俺もちゃんとせな、みたいな。その感情があのインタビューでは出すぎてしまって(笑)。(p.151)

R 〈数多く見過ごして来たチェッカーフラッグ 揺らぐことない基礎に何年も費やす スランプ口にするクラブラッパーとは違う〉。これがBOSSさんの根底にあるテーマだと思うんですよ。BOSSさんはラッパーの中でいちばん真面目にいわゆるラッパー然とした活動を大切にしてると思うんですよね。(p.157)

R あと、BOSSさんを批判したい人が、よくBOSSさんはフロウがないとか、リズム感がないって的はずれなことを言うんですが、むちゃくちゃありますから。ないと出来ないですからね、このラップは。
――いわゆるメロディアスなものだったり、抑揚の強いものがフロウと思われがちだけど、そうではないからね。
R 「言葉のメロディ」「言葉のリズム」を使ってるんですよね。‟BOSSIZM”で〈一つとて同じ顔持たぬメロディ〉って言ってるんですけど、BOSSさんは言葉ひとつひとつにメロディとリズムがあるんですよね。だから、喋り言葉の中にメロディとフロウを見出せる人じゃないと、BOSSさんのラップにフロウがあるってなかなか気づきにくい。本当はむちゃくちゃフロウ巧者でありむちゃくちゃリズム感が長けてる人ではあると俺は思います。(pp.160~161)

R (BOSSさんは)まさに(シーンの)椅子取りゲームとか、流行乗っかりゲームを一切断ってるんですよ。自分の作品と自分のライヴ力だけでフロントラインに立って、リリースをしていない期間にたとえ追い抜かされても、次の作品でもう一度最前線に立つっていうのを、ずっと続けている。(pp.166~167)

R でも、いま聴いてもBOSSさんのディスやラッパー批判は俺も耳が痛い。多分、順風満帆に活動してても、燻ってても、売れてても、売れてなくても、全ラッパーが「あぁ俺に言われてんのかな」って思うような、耳の痛いリリックで埋め尽くされてますよ。むしろTBH聴いて耳が痛くないラッパーはちゃんと聴いてないか……アホです(笑)。そんぐらい全部に釘刺していくしそのメッセージは普遍的。でも逆に言うと、そういうラップをすることで、BOSSさんは自分自身にも負荷をかけてるんですよ、こんだけのこと言ったら、行動で示さないとって。そして設定したそのハードルを、ちゃんと毎回越えるための動きをずっとしてるっていう。(pp.171~172)

R ……ライムスターとTBHが邂逅した時に、僕らもBOSSさんと話させて貰ったんですけど、そこで「バトルの8小節16小節の削り合いじゃなくてこういうフェスやライヴで30分1時間でお互いぶつけ合えるような勝負をしようぜ」って言ってくれたんですよ。当時、俺自身バトルから足を洗いたいと思ってた時期だったんで、その言葉はすごく響きましたね。(p.179)

R ……だから、より自分はこのスタイルを進めていこう、そこで自分の方向性を模索していこうと思いましたね。その意味でも、BOSSさんの影響は本当に大きいですね。(p.184)

R-指定は、「フリースタイルダンジョン」の「Monster Tours」という企画の中で、モンスター達が選ぶ「俺の1枚」(CD)として、TBHの1stアルバム「STILLING,STILL DREAMING」を選んでいましたね。

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以上、今年(2020年)で結成23年を迎えるTHA BLUE HARBについて、私ごとき凡人が語る資格もないため、3名のラッパーの著書から引用させていただき、BOSSさん、そしてTBHの凄さについて改めてご紹介させていただきました。

ぜひ次の機会には、私の独断と偏見で選ぶ、TBHのパンチライン集をご紹介できればと思います。どうぞお楽しみに。

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