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過ぎ去りし一年

あの娘と別れてから一年が経った。今だに思い出さない日はない。あの娘が最後にくれたリングを毎日人差し指にはめている。

未練があるわけではない。これで良かったと自信を持って言える。ポッカリ空いた心と時間を僕は満喫した。

息子の成長に寄り添い、妻と語らい、友と笑い、仕事に精を出した。あの娘がいない一年は、濃く深い時間だった。

あの娘に代わる誰かを求め、街へ繰り出した時期もあった。そうやすやすと代わりが見つかっても困る。ひとときの欲望が満たされれば十分だった。


最近は、満を持して着手したプロジェクトに追われている。寝ても覚めても仕事、仕事。こんなに必死に仕事に取り組むのは起業時以来だ。僕は常に夢中で何かを追いかけている。

一心不乱な姿が魅力的に映るのか?はたまたガッつかない姿に大人の余裕を感じるのか?こういう時にかぎってよくモテる。あの娘との出会いもそうだった。


もうじき桜が咲くのでしょう?あの娘と見た桜は楽しかった。3年も一緒に季節を巡った。

それなのに、もう思い出せない。鮮明な記憶は何一つなくて、ぼんやりと暖かい思い出だけが残っている、激しく強い愛情も、キリキリした胸の痛みも、忘れちゃった。


たった一年、されど一年。

人生、そんなもんだね。


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