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ITと未来のすがたを語る⑤ ChatGPTと新Bing、AIの歴史

ロボットとノリツッコミ

竹林 トランスフォーマーって知ってるか。
犬塚 自動車とか動物とかがロボットになるやつでしょう。映画が何本も制作されてますよね。
竹林 そう、あれはもともとテレビシリーズで、それが映画化されたんだ。マニアにはテレビ版のほうが評価が高い……って、ちげーんだよ。

犬塚 あれ? 今日はアメリカのロボットものがテーマじゃないんですか?
竹林 アメリカのロボット映画ならパシフィック・リムがオススメだよ。なんといってもロボットがイカス。怪獣もかっこいい。……って、今日はロボットの話じゃねえんだよ!
犬塚 だいぶ長いノリツッコミですね。腕をあげましたね、社長。

TransformerがAIを変えた

竹林 ChatGPTのGPTって、Generative Pretrained Transformerの略なんだ。ムリに日本語にするなら「生成するトレーニングされたTransformer」かな。
犬塚 Transformerが日本語になってませんよ。
竹林 Transformerってしくみの名前なんだよ。このTransformerの発達が、AI技術を大きく進展させることになった。わかりやすく述べるのは困難だが、従来のニューラルネットワークは、遠くにあるものを解釈するのが苦手だった。たとえば、

The man who watched TV with you is my brother.

という文で大事なのは、The man is my brotherということだよね。ところが、以前のAIは、離れているためにThe manとmy brotherを結びつけるのが得意じゃなかった。これは、「AIダメだ論」の論拠のひとつになっていたんだよ。Transformerはそこを解決した。離れた場所にあるものを、関連ぶかいものとして扱うことができるようになったんだ。
これを発表した論文のタイトルがふるっててね、Attention Is All You Needっていうんだよ。「Attentionこそ大事」まさに、だよね。

それと、この動きにはハードウェアの進歩も大きく関係していると思う。ネットに無数にあるデータを拾ってきて文を構成するなんて芸当は、強いマシンパワーなしには考えられない。

人間だと判断されるAI

竹林 チューリングマシンって理論がある。チューリングって人は大したもんで、コンピュータがまだ発明されてないころに「コンピュータ/人工知能にできること・できないこと」をハッキリ述べてるんだよ。
犬塚 チューリング、知ってますよ! カンバーバッチがやってた! 悲劇の天才ですよね。

竹林 チューリングはあんなにイイ男ではなかったと思うが、すさまじく頭がよくて、それゆえに不幸な半生を送ったのは事実だよ。その人が、「チューリングテスト」と呼ばれるテストを考案している。

ものすごく雑にいうと、多くの人に問いかけさせて、姿が見えない人工知能と人間がそれぞれ答える。で、終わった後で参加者にどっちが人間か聞く、というものだ。これだと、ChatGPTはチューリングテスト合格しちゃうんだよね。
犬塚 機械じゃなくて人間だと判断されちゃうんですね。すごい。
竹林 むろん、チューリングテストはかなり早い段階で否定されていて、「中国語の部屋」という思考実験が提出されている。

ホントかウソか判断材料を与えるBing

犬塚 マイクロソフトはOpenAIに多額の投資をして、ChatGPT(をバージョンアップしたもの)を検索エンジンBingに搭載しました。すでにプレビュー版が公開されています。これにたいしてGoogle(社名はAlphabet)はBardというサービスを提供すると明らかにしましたが、ほぼ同時に「コード・レッド」を宣言しています。緊急事態宣言ですね。

竹林 新Bingは、Edgeじゃないとうまく動かないんだよ。今、ブラウザはChromeが支配的だけど、それも変わってくるのかもしれない。ChatGPTはGoogleがこれまでに築いた牙城を、ひっくりがえすパワーを持っている。
犬塚 マイクロソフト対Googleですか。ちょっとスポーツ観戦みたいでワクワクしますね。
竹林 興味ぶかいのは、新Bingのしくみだよね。以前、「ChatGPTはウソつきだ」って言ったじゃないか。

犬塚 ウソもつくし、押しに弱くてカワイイ♡と言ってました。
竹林 ……そんなことは言ってないが。回答がホントかウソかわからないというのは、大きな問題だ。
犬塚 「おいしいそば屋を教えて」って聞いてウソ教えられたらたまんないもんな。
竹林 Bingがおもしろいのはね、そこに一応の解決を与えていることだ。ChatGPTのように文章で答えると同時に、それを構成するために使ったネタ元も表示してくれる。ウソかどうかをユーザが判断できるようになっているんだ。

犬塚 進歩にはちがいないですが、なんだかめんどくさいですね。
竹林 マイクロソフトも「Bingはこれで完成だ」とは思ってないだろう。今使えるのはあくまでプレビュー版だ。対するGoogleも、AIを活用した新しい検索エンジンを仕上げてくるだろう。シリコンバレーも今はばんばんリストラしてるそうで、一時期みたいに景気いい話ばかりじゃなくなっているけど、これからどう変わるのか、興味はつきないよね。


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