天洋

小説やイラストレーションの作品を日々制作中です。

石器時代。いつ不幸になるかわからないから。

つらい 純愛なんてつらい

 この人だけを愛しているなんて

 だってその人がいなくなってしまったら、

世界の終わりがやってくる

 何もかも意味とか便利性がなくなって、

56億7,000万年後でも変わらなくて

 石器時代に戻ったみたいで、

死んだ彼が生き返ってこないかな

 なんて思ったりして

まだ気が早いかな

でもかまえてなくちゃあ、

いつ不幸があるかわからないものね

こわい 

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膿。または失われた第一指。

ガーゼ

 私には指が一本ない。

 コーヒーを淹れたり、自転車をハンドリングしたり、パスタの量を量ったり、愛する人に触れたりする、そういうことにはふと感じる風のようにごくたまに不便さに気づくだけで、特にどうということはない。

 けれど、じっと親指の痕を見つめていると、私の親指はどういう形だっただろうかと考え込んでしまう。

 不便はないけれど、亡くしてしまったなにか。

 記憶の引き出しは空っ

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アリクイとナマケモノ

アリクイが歩いていると、ずっと上の上の方からなにやら呼びかけるような声が聞こえました。アリクイはありをペロペロとなめとる舌をとめて、しばらくまわりを見渡しました。

「誰もいないなあ」

 アリクイは首をかしげました。そしてまたペロペロと小さな蟻達を舐め始めました。

「ぅおぉお~ぃ」

 なんだかずいぶん間延びいた声が、やはり呼びました。

「だれえ?」

 アリクイは舌を出したまま、あたりを見

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девочка

スズメバチがびっしりと巣を作っていた。黄色と黒のツートンの攻撃的な色合いは遠目に見ても目立った。通路は狭くて(そもそも人が通るためには作られていないのだけれど、残念ながら進むためにはそこを通らなければならなかった)、右側はコンクリートの壁、左側はくもった緑色のフェンスだった。フェンスの向こうは運動場になっていて、中学生くらいの子供たちがのんびりとにドッジボールをプレイしていた。

 スズメバチの巣

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チェムノター

いつものように彼の授業が終わるのを待っていた。15分くらい経ったけれど、まだ彼は現れない。まぶたが重い。耐えられないぐらいの眠気で気が遠くなる。座っていないと足元がおぼつかない。椅子を探して、たまたま入った大教室の壁際にはぽつんと布団が置かれていた。わりと大きくて、しっかりとした重みのある布団だ。なんでこんなところに、と思ったけれど、誰かが仮眠用に置いたんだろうと勝手に納得する。それにしても眠い。

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