共感とは今まで無かった感情を作ることではなく、すでに相手の中にある感情を言葉にすることである
クライアントのSNSを運用していて気がついたことが2つあります。
1つは、共感を作ることは企業にとって重要であるということ。
そして、もう一つは共感を作るには、相手の頭と心の中にあるものを表現することが大切であるということ。
それぞれ説明していきます。
もしかしたら、「これからのマーケティングにおいて共感が大事」という話を聞いたことがある人はいるかもしれません。
私もどこかで何度か聞いたことがある気がします。
これは全くの同感です。
特に私はこれからの「企業」のマーケティングに共感は欠かせない要素になると思っています。
「共感」とは、文字通り「共に感じること」です。
山好きの山男さんが「山登りは最高だ」と叫んだとします。すると横にいた山子さんが「私も山男さんと同じで、山登りは最高だと思う」と感じました。
この時、山子さんは山男さんの感情を共に感じています。
これが「共感」です。
「共感する」という特性はおそらく昔から人間の本能の中にあったんじゃなかろうかと思います。
そのため、「近年になって人は共感をし始めるようになった」ということはないはずです。
では、なぜ近年になって「共感が大事」ということが言われ始めたのか?
やはりそこにはSNSの影響を見過ごすことはできません。
いままであれば、山子さんは山男さんの主張に対する共感を心に留めておくだけでした。上手くいけば山男さん自身に伝えたり、寝る前に丁寧な文字で日記に想いを綴ったかもしれません。
しかしながら、それでは山子さん以上に山男さんの主張が広まることはありません。
今の時代であれば、山男さんに共感した山子さんは、山男さんの価値観をインターネット上に拡散することができます。
もしも山子さんに文才があれば山男さんの主張を惹き立たせる魅力的なキャッチコピーを書いてくれるかもしれません。
「山登りで感じる、自然の営みに触れる。そして、その中で自分自身も営みの一部になる。これほどに最高なことはないと思います。もし、あなたが山登りをしたことがないのであればそれほど羨ましいことはありません。なぜなら、人生最高の初体験を、あなたはこれから迎えることができるのだから」
(山子さんのインスタグラムより)
もっと運が良ければ、山子さんに共感して山下さんや山田さんが山子さんの投稿を拡散してくれるかもしれません。
そのような拡散の中にあって、新しく山登りの魅力を知る人が出てくる可能性は決して低くはないはずです。
なぜこのようなことが起きるのか?
理由は簡単です。
共感によって引き起こされた感情は、常にその人にとってオリジナルな感情になるからです。
「山登りは最高である」という山男さんの叫びは確かに山子さんの感情を刺激し、共感を作りました。
しかし、山子さんの手に渡った瞬間に「山登りは最高である」という感情はすでに山子さんのものになったのです。
つまり、共感によって生まれた感情は100%コピーされた状態で、著作権もなく、誰の注意も受けずに完全にオリジナルなものになるのです。
よくよく考えればこれはすごいことです。
もしもこれが、「スターバックスのフラペチーノは我が人生の至福である」などというブランド名や商品名が盛り込まれた主張になれば、企業としてどういう意味を持つかは容易に想像できるでしょう。
問題はどうやってその状態を作るのか?であり、多くの企業がマーケティングやブランディングという方法で、アプローチをしています。
(私が考えるアプローチ方法もありますが、それはまたどこでお話しします)
ここまでが、「共感を作ることは企業にとっては重要である」ことの説明でした。
次に、「共感作るには、相手の頭と心の中にあるものを表現することが大切である」という点についてです。
せっかくなので、スターバックスを例にとって話していきましょう。
例えば、スターバックスがSNSで以下のような発信をしたとします。
「大変お待たせしました。いよいよ明日、この夏の新作を発表します。いままでにない新しい味で、私たち自身楽しみにしています。ご期待ください」
(スターバックス公式のインスタグラムより)
おそらくこの投稿にはいくつものコメントが付き、シェアされることでしょう。
では、なぜそのようなことが起きるのか?
「スターバックスは圧倒的なブランド認知があるから」という説明をされる方もいらっしゃるかもしれません。
もちろんそれは事実でしょう。
しかし、もう少し踏み込んで考えると新しい発見を見つけられるかもしれません。
私はやはりここでも「共感」を持ち出したいと思います。
冒頭で山男さんの「山登りは最高である」という主張に共感した山子さんの話をしました。
もしも山子さんに「山登りが好きである」という価値観がなければ、山男さんの発信に共感することはなかったはずです。
言い換えると、共感とは今まで無かった感情を作ることではなく、すでに相手の中にある感情を言葉にすることでもあるのです。
話をスターバックスに戻します。
スターバックスの季節ものの新作は、多くのファンにとって常に待ち望んだものであります。
つまり「次の季節の新作が楽しみで、待ちきれない」という感情がすでにファンの中にあるのです。
こうなればブランドとしてやることは単純です。
「私たちも楽しみにしています」
という共感の感情を言葉にして表現をするだけです。
例えば、「いよいよ」や「ついに」という言葉で表現することもできますし、「私たち自身も楽しみにしています」と丁寧に言葉にすることもできます。
このように共感を交換し合うことで、ファンとの距離を近づけ、良好な関係性を作り上げることが可能になります。
問題は少なくない企業が因果関係を逆にして考えているということです。
「私たちの商品は凄い!」ということを発信していけば、勝手に共感者が生まれるという勘違いをしてしまっているのです。
まだ自分たちのブランドや商品そのものの情報において共感を作れない場合は、商品が持つブランド価値から話題にすべき社会記号をテーマに設定して発信することをおすすめします。
ここについてはまた別の記事でお話をしていきます。
今回は以上です。
ありがとうございました。
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