下校時刻の哲学的ゾンビ(漫画日記6月第1週)

「漫画日記」というブログのタイトルをのわりに漫画の話をほぼしていない(テキトーにつけたから)。

久しぶりに何か漫画のことを書こうと思う。

『下校時刻の哲学的ゾンビ』

ダ・ヴィンチ恐山さんの漫画。

この前、この漫画を教えてもらった。

ネットで検索したら解説しているサイトがあった。

この解説は要約すると「哲学的ゾンビになってしまった→だから怖い」ということが書いてある。

くまなく感想を見たわけではないけど他にも「怖い」という感想は多いようだ。

確かに、読後は不気味な印象があるし、「怖い」と感じてしまう感覚は理解できなくもない。

「怖い」と感じる理由は、行動や仕草やふるまいなどの外的な要素からは意識があるとされる人間とまったく同じようであるのに、内面性(意識やそれを伴わせるクオリア)は喪失してしまったと理解されるからだろうけど、その「怖さ」であれば、この解説の引用にもある「行動的ゾンビ」になったとしても同じ質の「怖さ」を感じるのではないかと思う。

仮に、性格や行動など外的なふるまいは今までとまったく変化しないレベルで中身をアンドロイド(機械)に改造されて「意識」がなくなろうが、中身は何も変化がないまま「意識」がなくなろうが、「意識」がなくなるという点では同じだし、そのあとに「意識がなくなってしまって怖い、いやだ」と感じるような観点はもうないことも同じだからだ。

「哲学的ゾンビ」と「行動的ゾンビ」との差は判別される可能性がありうるかどうかということだけになる。

ただ、この「哲学的ゾンビ」と「行動的ゾンビ」の差もよくよく考えれば明確に区別はし難いとは思う。

例えば、行動や仕草など「意識」があるとされる人間と全く同じようにふるまう人物を解剖したら中身は機械であったとする(悲しいときは泣き、可笑しいときには笑い、場合によっては笑ったり笑わなかったりする笑いのツボもあり、誰かと熱く議論をかわすこともある)。その場合、「中身は機械なら意識がなかった」と考えることもできるけど「機械に意識が宿っていた」と考えることもできるし、例えば何年も交流があり意識があるとされる人間とまったく判別できないレベルで行動できるアンドロイドが存在するとすれば、それに対して「機械に意識が宿った」と理解することは、そこまで不自然なことではない。

また、さらに別の角度から考えると、行動や仕草など外的なふるまいからも「意識」があるとされる人間と区別がなく、脳の働きなどの物理的な現象レベルでも同質な相手の「意識」の存在を疑うことができるなら、自分の「意識」ですらあることを疑えるはずだし、相手の「意識」を疑うことと同じ水準で懐疑するのであれば自分の「意識」だって”ある”ということをどうやっても証明できないはずだ。

「自分には意識があるけど、相手には意識がないかもしれない」というときの「自分にはある意識」は証明しようとしても「この”感じ”がある」としてしか示しようがない。もし「哲学的ゾンビ」に「意識」があることの証明を求めてたとしても、同じように「この”感じ”がある」と言うだろうし、仮に脳内を調べてもニューロンの発火等、物理的な現象レベルでの差を検証しても「自分」と「哲学的ゾンビ」との差はまったく見出せない。

「哲学的ゾンビ」は思考実験として生み出されてた仮想的な存在であって、「哲学的ゾンビ」の存在を想定することによって問われようとしているのは「そもそも意識とは何か?」ということだ。

この漫画に出てくる、キャラメルを食べたことで「哲学的ゾンビになってしまった」として(「哲学的ゾンビ」になりえたとしても)、行動や仕草など外的なふるまいの変化も、内的な物理的変化もまったくなく一般的な意味で変化といわれるような変化は何も生じない。「いや、意識がなくなっているんだ」といわれても、「そもそもその”意識(クオリア)”と呼ばれるものは一体なんなのか?」ということへの懐疑がまったくなければ「哲学的ゾンビ」を想定することは、およそ無意味だ。

このサイトの解説はひとつの解釈を書いたものすぎないかもしれないけど「哲学的ゾンビ」を想定することで問おうとしている問題そのものの伝わりにくさが如実に表れているような気もする。

個人的には「哲学的ゾンビという想定があり得たとしてもこうとしか描けない」という表現形式の問題について考察した方が面白いんじゃないかと思った。つまり、「哲学的ゾンビ」になりえたとしても、それに対する変化はまったく描けないということを表していると考えることができるということ。

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てらだこうじ

漫画を描いてます。あと日記も。mail:teradakoji09@gmail.com

漫画日記

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