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撮影こぼれ話。(ダンサーと美術館)

2016年。美術館の広報を担当していた友人から美術館の講堂で短編映画祭をやりませんかと声がかかった。

美術館で映像を流してもらえるなんて、貴重すぎる。

喜んで引き受け、友人3人にも声をかけ、合計5作品の制作が始まった。
自分は映画よりは映像作品の方が得意だし、好きな事をやりたいと思いダンス作品をつくることに。

以前から素敵だなと思っていた女性ダンサー二人に声をかけることにした。上手く伝えられる自信が全くなく、手紙を書いて渡した。すると快諾だった・・・

美術館の多目的ホールを撮影に使用してもいいと言われた。多目的ホールには、ミケランジェロの彫刻のレプリカ3体と、パイプオルガンが設置されている。床は大理石。
日本で最初に美術館に設置されたパイプオルガンで、世界でも数少ないイタリアバロック様式のオルガン。そんなイタリアンで素敵な空間での撮影が可能となった。

そこで撮るだけじゃ自分らしさが出ない。

あろうことか、わたしはミケランジェロやパイプオルガンに映像を投影し、ダンスと映像の融合を思い付いた。
相変わらず迷惑にも程がある。

美術館は作家の気持ちを汲み取るのが寛容だった。最初は難色を示していたが、私の熱意に押されたのか開館前なら、と撮影許可をいただくことが出来た。

1時間程しか撮影時間が取れないため、二人のダンサーを別日に撮影することに。
天窓からは朝陽がこぼれていた。
想像以上に二人のダンサーは思いを爆発させ、素晴らしい映像を撮ることが出来た。

事前にダンスに対する思いを手紙に書いてもらっていた。
二人は、仕事や子育て、ダンス活動をバランスよくこなしている。つらいことがあるからこそ素晴らしい表現になるのだという思いが強く伝わった。

冒頭は別の男性ダンサーに踊ってもらった。雨の設定にしたかったので美術館にホースを借り、庭園で水をかけまくった。
やりたい放題である。
後日、美術館の公式サイトで水をかけている所が掲載された。

ラストは撮影のメイキング映像。
いろんな方に、「最後の部分、必要なの?」
と聞かれた。私が準備、撮影、片付けしている所を納めている。確かにアンバランスである。

ダンサーにとって踊ることは生きること。

それと同様に、映像作家にとって映像を制作することは生きること。

なのです。

改めて、自分の制作に協力していただいた美術館やダンサーに感謝の意を表する。

※top画像は「dancado~踊り続ける」より

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