未踏ジュニアのPMって何をしてくれるの?(PM目線)

2018年度の未踏ジュニアが十月で終わり、未踏ジュニア修了生はのべ20名以上になりました。僕は2015年度のIPA未踏事業のOBで、去年から未踏ジュニアのPMをしています

タイトルにもあるPM(プロジェクトマネージャー)は、元々はIPA未踏事業にある制度です。未踏ジュニアを立ち上げる際に、IPA未踏事業を参考にして仕組みが作られたので、そのまま「PM」という呼び名を使っています

この記事の対象

この記事は、未踏ジュニアの活動に興味をお持ちの大人の方、そして、未踏ジュニアについてもっと知りたい小中高生の方向けです。「未踏ジュニアのPMって何?何をしてくれるの?」と聞かれることが多いので、中の人目線で解説してみようという試みです

未踏ジュニアの目的は人材育成ですが、PM(プロジェクトマネージャー)は、文字通り(採択者の)プロジェクトを管理する役割です。よく「コンテストの審査員みたいなものでしょ?」と言われるのですが、それは違います

そんな「未踏ジュニアのPM」について、この2年間で自分が実際にやってきたことをベースに解説していきます

以降、未踏ジュニアのPMのことを「PM」と表記します。職種としてのPMとは異なります

PMの仕事その1:審査

審査員ではないと言ったばかりですが、PMの最初の仕事は「審査」です。応募する側から見れば、未踏ジュニアは無料でお金と支援が貰える非常にお得な仕組みです。ただし、誰もが支援を受けられる訳ではありません。自分の作りたいもの・実現したいことを書いて応募し、採択された人だけが支援を受けられるのです

未踏ジュニア側から見れば、多くの応募者の中から、何らかの方法で採択者を選ぶ必要があります。今年は100件以上の応募があったので、提案書を読むだけで2〜3日かかりますし、PMによっては、応募者のGitHubにあるソースコードを判断材料にする人もいます

僕の場合、興味が沸いた応募者のSNSアカウントを特定したり、通っているプログラミング教室の関係者に聞き込みをしたり、ネットに公開されている過去作品を探すなどして、判断材料を増やしています

このように未踏ジュニアではPMが独自の基準で採択者を選んでいるので、ペーパーテストなどの点数評価と比べると、とても労力がかかります。応募する人も真剣ですが、選ぶ側も真剣に選んでいるのです。一様な採択基準を設けないことは、多様なクリエータを採択することにも繋がります。過去の採択者には、アプリやウェブ以外にも、機械学習(AI)、ハードウェア(IoT)、メディアアート、ブロックチェーンのプロジェクトもありました

そうした選考期間を経て、基本的には1人のPMが1人の応募者を選んで採択します。話し合いで決めるのではなく、PMが採択したい人を選ぶのが特徴です

PMの仕事その2:週に1度の(オンライン)MTG

PMとクリエータ(採択された人)は、週に1回程度のMTG(会議)をしています。遠方に住んでいる人も多いので、ほとんどのMTGはオンライン上で行われます

作るものは応募時点で一応決まっているのですが、途中で作るものが変わることも少なくありません。1つの方法に固執せず別の解決方法を探るのは、悪いことではないからです。そういった可能性も含めて方向性について相談に乗ることもPMの役割です

クリエータから技術的な相談を受けることもあります。例えば「バグが解決できなくて困っている」「〇〇のような機能を Python で作る方法が知りたい」といった相談です。プロジェクトのことを考えれば、すぐに答えを教えて開発を進めるべきですが、未踏ジュニアの主目的は人材育成です。場合によっては、あえて答えを教えず、問題を解決するための方法を教えることもあります

PMの仕事その3:人を紹介する

その分野に精通した別の人を紹介することもあります。あるPMがアプリ系のプロジェクトを採択したからといって、必ずしもそのPMがアプリ開発に精通しているとは限りません。PMによっては自分の専門分野は敢えて選ばないという人もいます

未踏ジュニアには、会っておくべき人は積極的に橋渡しをしようという文化があります。一方的に教えを請うのではなく、情報交換をすることはお互いにメリットがあることなのです

PMの仕事その4:購入申請の承認

採択された各プロジェクトには、50万円の予算が割り当てられています。このお金は何に使っても良いのですが、クリエータが自由に使える訳ではなく、事前にPMが承認することになっています

例えばクリエータから「30万円の Macbook Pro を買いたいです」という申請がきた場合、PMはその使い道が妥当かどうかを判断するのです。金額にもよりますが、30万円も使うような場合は「本当に Macbook Pro にするべきか」「スペックは妥当か」といったことをクリエータと話し合いながら判断します

逆に言えば、PMを説得することさえできれば、予算の使い道にはかなりの自由度があります。プロジェクトが成功する確率が上がるなら、お金は積極的に使っていくべきです

PMの仕事その5:年2回の合宿

全クリエータと全PM、IPA未踏事業のOBOG、そして未踏ジュニア修了生が集まって合宿をするイベントがあります。各プロジェクト毎に15分くらいのプレゼンをして、その後で質疑応答をします。毎年様々な意見が出て非常に有意義な会になるので、例として今年の合宿で Toubans! プロジェクトがいただいた意見の一部を掲載します

エンジニアにとっては簡単なものであるが故に誰も作らなかったもののように見えるなぁ。(調整さんみたいな感じ。)だからこそ、誰でも使えてインフラ化するのは価値がありそう。
当番表ごとにユニークなWebページを生成して、メンバーはアカウントを作らなくてもそのURLから当番表を確認できるようにしたらよさそう。

初めて会う人たち(それも、技術に精通した大人たち)に自分が取り組んでいるプロジェクトについてプレゼンするのは大変なことですが、クリエータが大きく成長する機会でもあります。合宿の時間を有効活用するためにも、PMは事前にプレゼンを見たり、「〇〇さんがこの分野に詳しいよ」と事前にクリエータにアドバイスしたりします

PMの仕事その6:最終成果報告会

未踏ジュニア期間中のゴールとなるのが、最終成果報告会です。クリエータが胸を張って「私がこれを作りました!」と発表するためのイベントです

このイベントには一般来場者もいて、取材も入るため、分かりやすく成果を発表することが重要になります。クリエータは、プレゼンを作ってPMに見せて、振り返りをして、またプレゼンを作る…というのを何度も繰り返します

プレゼンの内容はクリエータが自分で作りますが、見せ方はPMからも意見します。未踏ジュニアならではの見せ方として僕が意識していることが1つあります。それは、「上手くいかなかったことも伝える」ということです。新しいことに取り組んだときは、結果だけを見せても伝わらないことがほとんどです。「これではダメだったけど、こうしたら上手くいった」といった過程を伝えることによって、その成果に辿り着くことがどれだけスゴいのかが聞いている人に伝わるのです

PMの仕事その7:スーパークリエータを決める

PMの最後の仕事は、特に優れた人を「未踏ジュニアスーパークリエータ」に選ぶことです。人数は決まっていませんが、例年は修了生の半分以下となっています。スーパークリエータに選出されると推薦などの特典もあります

PMの仕事の中ではおそらく唯一(?)、スーパークリエータの選出だけは全員で話し合って決めることになっています。クリエータの方々はそれぞれ異なる方向性で優れている部分があるので、どんな人がスーパークリエータに選ばれるかという明確な基準は存在しません。ではどうしているかと言うと、「〇〇さんのスゴいところってどこだろう?」という話を、PM全員で真剣に議論するのです。議論の末に、スーパークリエータを決定します

個人的まとめ

未踏ジュニアの主役はクリエータです。PMの役割は、クリエータがプロジェクトに打ち込めむための相談役のようなものです。未踏ジュニアの期間が終わったら、クリエータは自分の力でプロジェクトを進めていかなければなりません。とは言え、修了後も気軽に相談できるような関係性を築けたらなぁと思うので、クリエータの良き友人であれるよう今後も努めようと思います


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Daiki Teramoto

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