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世界一わかりやすい!プログラミングのしくみは、2020年から社会科の教科書にすべき一冊だと思う

2020年からのプログラミング必修化に向けて、国内でもこの手の本が沢山出ています。一方で、「その時はとても便利だが一回読んだら不要になる本」や「著者の言いたい事がひたすら書いてある本」も多く、どちらも何かを学べることは確かなのですが、特に決まった目的を持っていない子供に「読んでみ」と言って与えるのは、ちょっと厳しいな……と思うことがあります

「世界一わかりやすい!プログラミングのしくみ」は、サイボウズ株式会社でエンジニアをされている西尾さんと川合さんが書かれた本です。西尾さんは「コーディングを支える技術」を、川合さんは「30日でできる! OS自作入門」を書かれたことで有名な方です

子供の「なんで?」を解決してくれる本

この本では、日常のちょっとした体験の裏にある仕組みを解説するところからスタートし、子供の興味を惹きつけつつ、ソフトやアプリによって世の中がどのように、なぜ変わっていったかを解説しています。最後にはプログラミングをする人に対する心構えや考え方について、筆者らの考えを子供向けと保護者向けの両方のアプローチで伝えています

実は「コーディングを支える技術」もそうなのですが、プログラミングのしくみを紐解くためには、プログラミングが発明される以前の世の中について知るところからスタートする必要があるのです。たとえば第2章には、炊飯器でご飯をおいしく炊けるようになった理由について、このように説明されています

・はじめは人間がかまどでご飯を炊いていたが、人がつきっきりで大変だった
・機械で釜を熱くする電気炊飯器が発明されたが、炊いている間の温度調節(はじめチョロチョロ中ぱっぱ、赤子泣いても蓋取るな)が出来なかった
・マイコン(本では「こびと」と称されている)の登場により、自動的に温度を調節出来るようになり、美味しく炊けるようになった

「ソフトウェアによって世の中が変わった」と、口で言うのは簡単です。このような例は幾らでもありますし、私たちも日々様々なソフトやアプリに触れているため、実感しやすいからです。一方、「なぜ変わった」を説明することは簡単ではありません。たとえば、磁石を用いて、ご飯が炊けたら自動的に電源をオフにする仕組みが、マイコンで温度調節をする以前からあったそうです。また、ご飯を炊くときの温度調節はオーブン調理と違って単純に時間で決まるものではなく、フィードバック制御が必要になります。それを機械だけで実現するのが難しかったため、ソフトウェアが与えた影響は大きかったと言えます

「社会の教科書に」とタイトルに書いた理由

本の後半では、インターネットの仕組みから、誰でも書き換えられるウィキペディアがちゃんとした百科事典になるために必要な「ルール」と「新しいやりとり」の話や、プログラムのバグを見つけるためにプログラマーがやっている「原因・検証・絞り込み」と称されるテクニックの話など、まさにこれからの時代の教養だと思えるような内容に入っていきます

個人的にとくに良いと思ったのは、「ソフトウェアは Undo ができる」という話です。これは現代のほぼ全ての産業に関わる大発明です。←というアイコンのボタンを押したら元に戻せるというのは、おそらく、3歳児でも知っている世界の常識でしょう

しかし、私が良いと思った理由は、「Undo について書かれていたから」ではありません。「Undo が出来ることにより、間違いを恐れなくても良くなる。一方で、元に戻せないこともある」と書かれていることが素晴らしいのです

間違いを恐れなくても良い!

元に戻せないものもあるんだよ

ソフトウェアは優れた性質をいくつか持っていて、それは人間の社会を大きく変えるものです。事実として、既に多くの人の仕事や、コミュニケーションのあり方を変えてきました。ゆえに、プログラミングと社会のあり方は、セットで考えた方が良いのです。人々がプログラミングをすることによって、社会がこれからどのように変わっていくのか、それを考えるのはまさに社会科の授業の範疇だと言えそうです

もちろん、この本は公教育のためだけに書かれたものではないので、学校で使われようが使われまいが関係なく、ぜひお子さんと一緒に読んでいただきたいですね。Scratch でプログラミングしていて、最近もっと違うものに取り組みたいと思っている小学生には、特にピッタリな本だと思います

また、第10章以降はプログラミング言語について深く掘り下げる内容になっていて、こちらも非常に面白いので、時間があればまた書評を書いてみようと思います。なんだかんだで4時間くらいかかっちゃうな……(汗)

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