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まずいコーヒーの話

仕事明けの朝、自分へのご褒美にインスタントコーヒーを入れていたときのことだ。

私は、いつもインスタントコーヒーを分量通りに入れている。だが、実はもうちょっと濃い味の方が好きなのだ。分量を守っているのは、何となく飲みすぎはいけないのではないかと思っているからである。

しかし、インスタントコーヒーは品質管理をされた加工品だし、粉をちょいと多めに入れたからといって、直ちに健康被害があるというものでもなさそうだ。今日はちょっと濃くしてもいいんじゃないか?

私は心の矩を乗り越え(ダジャレではない)、コーヒー粒を足してみた。するとどうだろう、ほんのひと匙の半分ほどの茶色の粒がコーヒーの味を劇的に変えた。

…要するに、濃すぎたのである。

いや、まだ諦めてはならない。ハンドドリップのコーヒーと違い、インスタントコーヒーはお湯で解くだけの飲み物。濃すぎるのであれば、お湯を足しさえすれば良いのである。

しかし、おお神よ。私は不器用である。

ほんの養命酒のカップほどのお湯を入れるつもりが、コーヒーカップすれすれになるほど入ってしまった。お湯が夜間の口からカップの張表面に到達した「ドボっ」という音から考えて、少なくとも50mlは余計に入っただろう。

ここまできたら引き下がれない。私はカップから薄いコーヒー液を手鍋に移した。絶対に、今日は、私の好きな濃さのインスタントコーヒーを飲んでやるのだ。

それから、インスタントコーヒー粒とお湯を交互に鍋に入れること十数回。ついに満足のいく濃さのコーヒーを作り上げたときには、コーヒー液の量は鍋にいっぱいになっていた。なんでじゃ。

捨てるわけにもいかず、私は鍋いっぱいのコーヒー液を(家族に隠しながら)2日かけて飲み切った。

沸かし直しながら飲むコーヒーは、とてもとてもまずかった。

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