ライトノベル業界の三年縛り? なにそれ必要? 不必要?

 こんにちは、みかみてれんです。
 蝉さんのnoteに投げ銭したときに「あ、そういえばわたしもnoteのアカウントあったんだ……」って思い出したので、なにか書きたくなって今の旬の話題に首を突っ込んでみることにしました。


 まず三年縛りとはなんぞや? という話について。携帯キャリアの契約の話じゃないです。ラノベ業界です。

 三年縛りとは、

『新人賞を受賞した作家は、売り出すために多額の宣伝広告費を支払ってくれた出版社のため、暫定的に三年間はそのレーベルで書いてね、という慣習』

 だと、わたしは認識しています。

 三年縛りというものがラノベ界隈では「あー、ああいうのあるらしいねー」「そうなんだよねー」という実にふわっふわとした会話とともに、広まっております。

 ちなみにウェブからの拾い上げ作家にはないらしいです。

 というわけで、
 わたしは作家なので、今回は作家側からの話をしたいと思っております。

 結論から申し上げますと、三年縛りの慣習は、
『いいことも悪いこともあるけど、悪いことのほうが若干多いのでは?』
 だと思っております。

 その論拠をたらたらと話していこうと思います。


 ***


 新人賞を受賞した作家は、乱暴に分けて四つのパターンがあります。わたしが今定義しました。

A:受賞作が売れてシリーズ化し、担当編集者との関係が良い
B:受賞作が売れてシリーズ化し、担当編集者との関係が良くない
C:受賞作が打ち切りを食らい、担当編集者との関係が良い
D:受賞作が打ち切りを食らい、担当編集者との関係が良くない

 では、それぞれ言及していこうと思います。

 ***

A:受賞作が売れてシリーズ化し、担当編集者との関係が良い

 もっとも三年縛りの恩恵を受けると思われる作家さんは、こちらです。

 シリーズ化しているのだから、続刊の予定も決まっており、新人作家さんのマンパワーはもちろん全力でそこに注がれるべきです。
 編集者は次世代のエースとして作家を育て、作家もそれに応えるべき奮闘する。
 この関係に他出版社が首を突っ込むことで、企画が乱立、現在売れている作品に注がれるマンパワーが必然的に下がり、全員平等に不幸になってゆく……。

 そもそも、三年縛りというのはこういう作家を守るために生まれたものだと、わたしは思っております。
 素敵ですね……。最高ですね……。新刊が出るたびに、焼肉屋で打ち上げするんでしょうね……。


B:受賞作が売れてシリーズ化し、担当編集者との関係が良くない

 なんで売れてる作家と編集者の関係が不穏なの? 普通に考えたらどちらも幸せになるんじゃないの? という声が聞こえてきそうですが。
 すみません、わかりません。
 でも人間と人間のすることなので、きっとそういうことがあるんだと思います。この場合、悪いのは作家か編集者かなんですが、どちらも悪いか、片方が悪いか、あるいはどちらも悪くない、という地獄みたいなパターンもあります。こわい。人間はこわい。

 わたしは作家なので、作家側の話をしちゃうんですが、
 作家的には、他社編集者との関係を築けず、比較対象もなく「ああ、編集者っていうのはどこもこういう人なのかなあ……」と思いつつ、不穏な編集者の機嫌を取り、あるいは戦いながら書き続けなければなりません。
 こういった人たちは必ずしも、三年縛りで幸せにはなれません。


C:受賞作が打ち切りを食らい、担当編集者との関係が良い

 この辺りから、少し詳しく書いていきます。

 新人賞で五作受賞したとして、そのうち三巻まで進める作品はいくつでしょう?
 少し前のライトノベル界隈では、どんな作品も「三巻打ち切り」と言われ、とりあえず三巻までは出させていただける時代があったと聞いております。
 北海道の千歳鉱山で金がとれていた頃の話だと思います。最高か。

 今はほとんどの作品が一巻打ち切り。よくても二巻打ち切りです。

 となると、打ち切りになったあとの作家はなにをするのか。企画の提出です。企画を投げて、編集会議を通って、ゴーサインとともに書き始めます。
 この場合、企画が戻ってくるまでのタイムラグが問題です。新人作家の投げた企画に即座に返信してくれる編集者はほとんどいません。入社したばかりでまだあんまり担当作がない人ぐらいです。
 その待ち時間、作家はなにをしていればいいのか。企画を作ったり、インプットしたり、ボーッとしたり、FGOしたりします。
 担当さんのことは信頼している。打ち切り作家の自分にもよくしてくれてありがたい。だが、担当さんが忙しいのも承知している。ああ、早く連絡くれないかなあ……。片思いのような日々です。

 三年縛りがあることで、新人作家は圧倒的に「待ち」の時間が増えることになります。もし縛りがなければ、各社にとりあえず企画だけを投げて、なんとなく待ちの時間をズラすことができます。
 同時に複数の出版社さんで企画が通る場合がありますが、その多くはまた打ち切りです。複数作品を同時に走らせてゆくのは、作家の生存率をあげる意味で悪い話ではないと思います。

 今の多くの新人作家にとって、三年縛りはプラスに働くでしょうか?


D:受賞作が打ち切りを食らい、担当編集者との関係が良くない

 はい。
 つらい。

 出した多くの企画は、後回しにされ、何週間も放置され、ようやく返ってきた返信は「変な話、これじゃ売れないっすよw」で、また企画を出し……。
 つらい……。
 なんのための三年縛り……。

 新人賞に受賞した未来の看板作家さんに、なんでそんなことするの……? と疑問に思われる方も多いと思います。それに関しては「さあ……?」としか……。

 地獄みたいな話なんですが、よく聞く話です……。
 そのことで苦しんでる多くの作家さんを見たことがあります。今はゲームシナリオのお仕事などがあるので、三年縛りという鉄の掟の抜け道をくぐる生存手段も、増えてきてはいます。

 三年縛りに異を唱える多くの作家さんは、こういうことを少なからず経験している方たちなのではないでしょうか?


 ***


 というわけで。
 三年縛りは、次の三点から、今の時代に合ってないんじゃないかなあ? という気持ちです。

1.一巻打ち切りがどんどん増えている
2.だから企画提出中の作家が増えており、全体的に「待ち」の時間が増えている
3.今の時代、取引先を分散してリスクを減らすべきじゃない?という論調に逆走している

 そんな感じです。

 でも実は編集者さんに「三年縛りって本当にあるんですか?」と聞いてみると「さあ……」「え、ないんじゃない?」みたいな反応が返ってくることも多くあるので、
 そもそも三年縛り自体が、もはや廃れてきているものなのかもしれません。

 しかし、だとしたらなぜ三年縛りのお話がここまで残っているのか。

 それは三年縛りという縛りを破ったときの罰が「ラノベ業界から干されてしまう……」というあまりに鋭い刃となって、新人作家の心を脅かしているからなのではないでしょうか?
 ラノベ業界はなにもかもが特異な世界です。その特異さゆえに、三年縛りというおかしな慣習が合ってもおかしくないのでは……?と思わされてしまいます。

 今、三年縛りに悩んでいる作家さんが偶然この記事を目に止めた時の話をします。めちゃくちゃ限定的な話です。
 作家さんにどうすればいいのかと、具体的なアドバイスをすることは難しいです。
 ですが、もし悩んでいるのなら、担当編集さんに聞いて、それでもダメなら同じレーベル内の編集長に聞いてみるべきだと思います。
 当たり障りな話になってしまいますが、ひとりで悩まずに、信頼できる誰かに相談してみてはいかがでしょうか?

 というわけでわたしは、三年縛りの前に、今お仕事させてもらっている出版社さんとの縁が途切れないように、今から締切をやっつけてこようと思います。


 ちなみに、わたしが自費出版で作っている百合小説レーベル『みかみてれん文庫』はみかみてれんに限り二兆年縛りなので一生出られませんが、がんばっていきたいです。

 おしまい。 

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コメント1件

自分、以前出版関係の自営業、
共感出来る、現実は残酷だ。
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